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図書館には、思ったよりたくさんの委員が集まっていた。
古書店の用意は終わっていたけれど、みんな、文化祭を前にやっぱり落ち着かない様子だ。
カウンターをのぞくと、数人の委員がはさみで細長い折り紙を大量に製作していた。
「何してるの? これ」
「あ、とこちゃん来た」
気がついた亜矢ちゃんが顔をあげる。
「これさ、入り口とかあちこちに飾ったらいいと思わない?」
そう言って、手に持っていた作りかけのそれを広げる。細く切った色紙を丸くのり付けして、いくつもつなげた鎖だった。
よく、誕生会なんかに作る、あれ。
「学芸会……。これ、一体誰が言い出したの?」
得意げな亜矢ちゃんがおかしくて、思わず笑ってしまった。
「言い出したっていうか、さっきみんなで、ちょっと殺風景だねって話してて決めたの」
「それで、今日顔出せって言ってたの?」
「んーにゃ、これは関係ない。最終的に明日のチェック、一緒にして欲しかったの。ね、これ、たくさん飾り付けたら、お祭り、って感じで楽しくない?」
それでせっせと、まずは細い紙を作っているわけだ。
私もあいている席に座って紙を糊付けしながら、さりげなく館内に目を走らせた。
「さっきまでいたけどね、今しがたミスコンの説明会行っちゃったよ」
こっそりと亜矢ちゃんが耳打ちしてくれる。
「え……何……」
「真崎君でしょ?」
見抜かれて、ちょっと動揺する。
ミスコンは、ミス鷹ノ森コンテストとミスター鷹ノ森コンテストの両方をひっくるめて、ミスコンと略している。そういえば真崎君、去年もミスコン出て、優勝してたっけ。
「彼氏に会えなくてさみしいのはわかるけど、あんまり館内でいちゃつくなよー」
「……彼氏じゃないよ」
小さく答えた声に、亜矢ちゃんが目をむく。
「ええ?! まだつきあってなかったの?! なんで?!」
「亜矢ちゃん、声、大きい!」
あわててその口をふさぐ。
「とこちゃーん、ちょっといい?」
返答に困っていると、桜井先生が司書室の方から呼ぶ声がした。
「あ、はい」
助かった。そんな気持ちで席を立つ。
ちっ。
背後から聞こえた舌打ちに、冷や汗がでる。ああなると亜矢ちゃん、しつこいからなー。
背中に亜矢ちゃんの視線を感じながら、司書室の扉をあける。
「悪いんだけど、これ中原先生のとこに持っていってくれるかしら? 今なら、体育準備室にいると思うわ。とこちゃん、パソコン使えたわよね?」
「なんですか? これ」
おっとりと言われながら、一抱えもあるような資料と一本のメモリを渡される。
「文化祭中の体育館の使用資料」
「なんでそんなの、桜井先生がやってんの?」
「ええ、あの」
あいまいにごまかす先生に。
「ははあ。また負けましたね」
「んー……まあ。打ち込み、みんな任されちゃって……」
照れ笑いする桜井先生は将棋部の顧問で、中原先生にとっては将棋仲間だ。
「見てもらって、もしどこかおかしなとこがあったら直してきてよ」
「え? 私が? できるかなあ。あ、でもデータあるならなんとかなるかな……。はい、わかりました。じゃ、ちょっと行ってきます」
「ちゃんと戻ってきてよ!」
カウンターの方から亜矢ちゃんが叫ぶ。
「はいはい」
まだ最終チェックもしてないから、どのみち逃げるわけにもいかないし……。
ああ、めんどいなあ。




