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第一章 第九節 連合艦隊旗艦

 1942年2月12日、この日柱島には2隻の戦艦が並んで錨泊していた。『長門』と『大和』である。その甲板には大勢の水兵が敬礼している。

 この日、長門からある旗が下ろされた。日章から八本の線が引かれた八条旭日旗、大将が乗艦していることをあらわす大将旗である。



「では、これより第十七代大日本帝国海軍連合艦隊旗艦解任式及び第十七代大日本帝国海軍艦魂委員会解散式を挙行いたします。一同、礼!」

 司会の少女が叫ぶと全員が礼をした。今、長門の全甲板に柱島に錨泊している全艦の艦魂が集まり旗艦の解任式を行っている。もちろん照輝もその中にいる。ちなみに司会は駆逐艦『雪風』の艦魂である。

「初めに第17代旗艦長門さんよりお言葉をいただきます」

 その言葉とともに長門が皆の前へ歩いて行った。

「気をつけ、礼!」

 一礼すると長門は話始めた。

「皆さん、今まで私は4年間第十七代旗艦を勤め、合計で11年間旗艦を勤めました。そろそろ私も年をとってきました。そろそろこの場所、柱島泊地の中心旗艦ブイを新鋭艦大和に譲りたいと思います」

 長門が話す間、皆ずっと静かに話を聞いていた。中には涙を流している者もいた。長門は連合艦隊の歴史の中で最も長く旗艦を勤めていた。そのため柱島の中心の長門の姿が多くの艦魂の目標であった。その目標が今、普通の戦艦に戻ることを宣言する。

「それでは・・・本日、昭和17年2月12日を持ちまして第17代大日本帝国海軍連合艦隊を解任し、第17代大日本帝国海軍艦魂委員会を解散いたします!」

「おおぉぉぉ!!」

 長門の言葉のあとほぼ全員が声を上げた。そのあとは何人もが長門のもとに駆け寄り泣いていた。

「長門さん、そろそろ」

 雪風が言うと長門が頷いた。艦尾では山本五十六連合艦隊長官が長門から内火艇(うちびてい)に乗ったところだった。

「そうね、そろそろ行きましょう」

 そう言うと長門は皆の方へ向き直った。

「みんな、第二会場へ移動しましょう」

 そういった数秒後長門は瞬間移動で消えた。

「少尉、行きましょう」

「うん」

 大和は照輝の手を握ると瞬間移動をした。


 照輝が目を開けるとそこは『大和』の全甲板であった。

「それでは引き続きまして第十八代大日本帝国海軍旗艦着任式並びに第十八代大日本帝国海軍艦魂委員会召集式を挙行いたします。礼!」

 先ほどと同じ雪風が司会を行った。

「では大和さん、着任を前に一言お願いします」

 そう言われると大和は皆の方へ向き直った。

「皆さん・・・私はまだ生まれたばかりです。しかし、連合艦隊旗艦という大事な役職につけることを嬉しく思います。これからよろしくお願いします!」

 そう言って大和は深く頭を下げた。あちこちから拍手が湧いた。照輝と目が合うと彼は小さく頷いた。

「大将旗掲揚、全員後檣に正対してください」

 全員が後檣の方を向いた。その後数秒の沈黙が流れた。その沈黙のあと、大和の後檣には大将旗が翻っていた。

「では大和さん、お願いします」

 大和は小さく頷くと前へあゆみ出て大きく息を吸ったあと顔を上げていった。

「本日、昭和17年2月12日より私が第十八代大日本帝国海軍旗艦となること、そして第十八代大日本帝国海軍艦魂委員会の発足を宣言いたします!」

 大和が大きい声で言うとあちこちから歓声とともに拍手が湧いた。これが連合艦隊旗艦大和の誕生であった。

「大和、あとはたんだわよ」

 長門は大和の目を見ていった。それに応えるように大和は大きな声で言った。

「はい!長門さん!」

 周りの皆は笑顔でそれを見ていた。



「では大和の旗艦就任を祝して、かんぱ~い!」

 例によって大和の会議室。いつものように皆が酒を飲んでいた。照輝も大和の横で大和お手製の唐揚げを食べていた。今日は前と違って照輝に特別に揚げてきたものらしい。そんな会議室だが、いつもと何かが違う。それは・・・

 空魂も数人いた。軍服の中の飛行服は目立つものである。その中には先日顔を合わせた赤城飛行隊体調、零式美奈海の姿もあった。

「あ、篠原少尉、お久しぶりです」

 こちらに気づいた美奈海が声をかけてきた。

「お久しぶりです・・・って僕の方が身分したなんだから美奈海さんは敬語じゃなくていいんじゃないですか?」

「そうですけど・・・じゃあいっそのこと双方タメ口にしましょう」

 美奈海からの思いがけない提案に照輝は目を丸くした。

「でも、いいんですか?」

「いいんらない?べふに。だいひょうぶだほ、そほふらい」

 そばでエビフライをくわえていた長門が言った。

「長門さん、衣が落ちてますよ」

 くわえたまま喋ったのだから当たり前に長門の膝にはフライの衣がたくさん落ちていた。

「んー?そんなことは気にしない。で、まあ今ならタメ口でも問題ないよ。尊敬語を使ったところで仕事がしっかりできるわけじゃないしね」

 そんなものなのか、と思ったがすぐにおかしいことに気がついた。

「【今は】っていうのは?」

「ああ、それね。まあそのうちわかるわよ」

「?」

 未だ疑問は解けなかったが今は長門が言ったようにタメ口にすることにした。

「じゃあよろしくおねが・・・じゃなくてよろしく、美奈海さん」

「美奈海さん、じゃなくて美奈海」

「え?」

 照輝の視界はいきなり狭くなった。いや、狭くなったように見えたといったほうがいいだろう。いまの視界の80%は美奈海の顔が占めていた。

「ちょっ美奈海さん・・・ひっ」

 照輝の言葉に美奈海の顔はさらに怒ったものとなった。

「さんはつけない!」

「わ、分かりました。美奈海s・・・じゃなくて美奈海」

「それでよろしい」

 そう言うと美奈海は満足したのか向こうへ行ってしまった。後ろに向いていた顔を元に戻すとそこにあったのは不機嫌な大和の顔だった。

「ど、どうしたの?大和」

「なんでもないです」

 照輝がきいても大和はむすっとしたまま向こうをむいてしまった。

「なんでもないってことはないだろ」

「なんでもないんです」

「何を怒って・・・」

 その続きを照輝は言わなかった。いや、言えなかった。今、照輝の目の前には大和の姿はなく艦魂が瞬間移動するときに起こる青い光が揺れているだけだった。

「・・・なんだってんだよ」

 照輝がつぶやいたが大和が戻ってくることはなかった。




 お久しぶりです。そして遅れてすみません。いつもあとがきはこの単語ばっかりです。ということで、開き直ってこの単語はもう書かないことにします。ところで本題ですが九節でまだ1942年の2月です。本当だともう少し進んでるつもりだったのですがいろいろあいだに付け足してこれだけ長くなってしまいました。次回は3月、ドーリットル空襲です。それともうすぐ今まで出てきていなかったあの戦艦が出てきます。お楽しみに。ではこれからもよろしくお願いします。

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