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第一章 第七節 艦魂たちの夜

 十二月二四日、柱島には一隻の艦が増えていた。その名は戦艦『霧島』。高速戦艦金剛型の四番艦で真珠湾攻撃に同行した戦艦の一隻である。前日に機動艦隊が入港したこともあり柱島は賑わっていた。もちろん艦魂たちも。

 この日も大和たち艦魂と照輝は『大和』の会議室にいた。開戦時に柱島にいた艦魂に加えて機動部隊の艦魂も増えたため部屋はかなり狭かった。ちなみに『大和』に集まる理由は照輝が加わりやすいからである。

「赤城さん、昨日は自艦(うち)の少尉がお世話になりました」

 そういったのは大和である。

「いや、世話したのは私じゃなくて飛行隊だから」

「でも、赤城さんに乗せていただいたわけですし・・・ふぁ!?」

 なぜ大和が変な声をあげたかというと日向が大和にねこだましをしたからである。

「やめてくださいって言っているじゃないですか!」

「だって面白いんだもん」

 そう言うと日向は走ってどこかへ行ってしまった。と、次は扶桑が話しかけてきた。

「日向が迷惑をかけて申し訳ない」

「いえ、そんな謝られるほどのことじゃな」

 大和が言い終わる前に扶桑が話し始めた。

「だが彼女は遠い昔に次元転移門(トランスファーゲート)が開かれた際になにものかにとりつかれてしまい彼女はおかしくなってしまった。そこで私が参録瞬殺斬さんろくしゅんさつぎりを発動したのだが全く効かなかった・・・」

「・・・何を言ってるの?」

「だが今は大和がいる。大和の良録真炎(よんろくしんえん)がある以上私たちの勝ちは確実である。大和の手助けがあれば必ず彼女も元に戻るはずである」

 意味不明である。おそらくこの世に彼女の話が理解できる人物はいないのではないかと思われる。

「真面目に話してください」

「私がいつふざけた!」

 照輝と大和が困っているとそこへ長門がやってきた。

「篠原くん、扶桑は中二病発症中だから普通に話していちゃあダメよ」

「中二病ってこの時代にあるんですか?」

「そこは小説だから。で、あれはしばらくしたら治るからほっといていいよ」

「治るからって・・・」

「まあそういうものだから。じゃあね」

 そう言うと長門はどこかへいってしまった。照輝はどうしようかと悩んでいたが次に彼女が話かけてきたときは既にいつもの扶桑に戻っていた。


 しばらくするとまた長門がやってきた。その横には二人の少女が立っていた。

「篠原くん、紹介してなかったから紹介するわね」

「またですか・・・」

「仕方ないでしょ、艦の数だけいるんだから。で、こっちが霧島でそっちが比叡ね」

 霧島と紹介された方は大人しそうでいかにも勉強が出来そうなかんじである。比叡の方は少々乱暴そうであった。

「はじめまして、霧島です」

「比叡だ。よろしく」

「よろしくお願いします」

「霧島はテストの点数いつも最上位だから頼りになるかもよ」

「艦魂にもテストがあるんですか?」

「ええ、艦魂にも三ヶ月に一回テストがあるんです」

 そう答えたのは長門ではなく霧島である。

「じゃあ紹介も終わったし、行こうか」

「さようなら」

「じゃあな」

 本当に紹介のためだけに来たらしく紹介を終わらせると長門はどこかへ行ってしまった。


 照輝が大和の隣に座りお茶を飲んでいるとしばらくして横の席へ再び長門がやってきた。

「篠原くん、君酒飲める?」

「お酒・・・ですか?」

 長門を見るとその手には一升瓶が握られていた。

「うん、いっつもお茶ばっかりじゃあひまでしょ?」

「あの・・・僕一応未成年なんですが・・・」

「いいじゃないそのくらい」

「いやよくないですよ」

「まあとりあえず一杯・・・」

「あっ」

 そう言うと長門は照輝が持っていたお茶が入っている湯呑に酒を入れてしまった。

「お酒のお茶割ね」

「長門さん、今日どれくらい飲みました?」

「う~ん?まあ軽く7本くらいかな」

「一人でですか」

「一人でですよ」

「・・・・・・」

 艦魂と人間のアルコールの分解の方法には違いがあるのだろうか、などとしょうもないことを考えていた。

 と、そこで照輝が周りに目をやると長机の隅で山城が一人で本を読んでいるのに気がついた。その周りには席2つ分の空間が開けられている。

「少尉、どこに行くんですか?」

 照輝は立って山城の方へ歩いて行った。

「ねえ」

「・・・・・・」

「なんでそんな隅っこにいるの?」

「・・・・・・」

 山城は未だに本を読んでいる。

「ちょっと・・・」

「・・・・・・・」

「少尉、山城に声をかけても意味ないですよ」

 そういったのは元に戻った扶桑である。

「山城は本当に誰ともしゃべりませんから」

「私とはよく話すけどね」

「少尉でもダメだと思いますよ」

 長門が口をはさんだが扶桑はそのまま話を続けた。扶桑の言葉に周りのみんなも頷いていた。

「でも・・・やっぱりみんなで楽しく話したいじゃない」

「しゃべりたくても喋れなくちゃどうしようもないじゃないですか」

「うーん、でもなぁ」

 その時、照輝は山城の右頬に小さな擦り傷があるのに気がついた。

「その傷、どうしたの?」

「・・・・・・」

「大丈夫?」

「・・・・・・」

 相変わらず会話が続かなかった。

「少尉、そろそろ行きましょうよ」

「ほら少尉、お茶が覚めちゃいますよ」

「えっあうん、じゃまたね山城」

 照輝がそう言うと大和が腕を掴んで引っ張っていった。

 数歩歩いたところで照輝は「あっ」というとまた山城の方へ戻っていった。

「山城、これ使っていいよ」

「え・・・」

 そう言って差し出したものは絆創膏であった。山城が絆創膏を受け取ると照輝は小さく頷いて大和の方へ走っていった。

 その後ろ姿を山城が少し顔を上げて見ていた。



 その日の夜、照輝は自分の部屋のベットで本を読んでいた。しばらくすると本を開いたまま考え事をしていた。

「ねえ」

「えっ!?」

 気がつくと横に山城が立っていた。

「いつ入ってきたの!?」

「さっき」

 全く気配がなかった。せめて部屋に入るときはノックして欲しいものである。

「なんか用?」

「・・・やっぱりいい」

 そう言うと山城はどこかへ行ってしまった。

「なんだあれ・・・」

 


 すみません、またあいだが空いてしまいました。最近模型を作っていて時間が作れませんでした。さて今までは41年の12月でしたがこれからは42年の1月にいってその後一気に4月くらいまで飛ばそうかと思っています。不定期ですがこれからもよろしくお願いします。

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