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第一章 第五節 英雄の魂たち

 十二月二三日。この日呉に停泊している艦艇の艦魂たちは皆『長門』の前甲板に集まっていた。少女たちはみんな自由に話していた。その中には照輝もいた。

 しばらくするとひとりの少女が声を上げた。

「見えたっ!」

 その一言に前甲板にいた者全員が同じ方向を見た。すると柱島の遥か沖、水平線の上にいくつかの艦影が見えた。真珠湾攻撃を見事な奇襲で成功させた空母機動艦隊  第一航空艦隊である。

 そして目の前が明るく輝いたかと思うと目の前に数十人の艦魂が現れた。その中の一人が一歩前へ出て敬礼して言った。

「航空母艦赤城以下第一航空艦隊帰還いたしました」 

 それに対して一番前に立っていた長門が答礼して答えた。

「ご苦労様でした、今日はしっかり休んでください。では、解散!」

 集団の後ろの方にいた照輝は大和を探して歩き始めた。と、そこで別の少女が声をかけてきた。

「篠原少尉!」

 最初照輝は誰に声をかけられたのかわからなかった。しかし周りを見ているうちに自分を見ている少女がいるのに気がついた。

「えっと、君は・・・」

「覚えてませんか?じゃあヒントです。主砲は六基あります」

「六基・・・扶桑型か伊勢型か」

「次は・・・うーん、四隻の中で一番若いです」

「誰が若くないって?日向」

「えっあ、姉さん、いやそういうわけじゃなくて」

「ごっごめんなさーい」

 そう言うと日向は向こうへ走っていってしまった。

「・・・まったく」

「あのー」

 そこで照輝は久しぶりに口を開いた。

「ん?ああごめん、私は扶桑」

「あ、篠原です」

 二人は握手をした。

「ね、日向に何かされなかった?」

「何か・・・て言うと?」

「彼女いたずら好きだからよく人に色々と・・・あっほらあそこ」

 扶桑が指差している方を見ると日向が大和を後ろから近づいて脅かしていた。

「ま、何もされなかったならいいんだけどね・・・」

 と、そこで大和が近づいてきて言った。

「少尉、日向とは絶対に仲良くしちゃダメですよ?」

 どうやら大和は日向にいたずらされ気が立っているらしい。

「わかった、わかった。それより琴音、空母の人たち紹介してよ」

「あ、それなら後で奇襲成功祝賀会をやるのでその時に長門さんに紹介してくれるように頼んでおきますよ」

「うん、ありがとう。・・・寒いしそろそろ中入ろっか?」

「はい、少尉」

「じゃあまた今度扶桑さん」

そう言うと照輝は大和と艦橋へあるいって言った。するとそれを止めるように扶桑が声をかけた。

「篠原くん、琴音って・・・」

「ああ、それは」

「少尉~、早くしてくださいよ~」

「あ、うん今行く。じゃあ先急ぎますので、失礼します」

「え?あ、うん」

 そういうと照輝は大和と一緒に艦橋へ向かった。扶桑はその二人の背中が見えなくなるまで見ていた。


 その日の夜、大和たちは『大和』の会議室にいた。その中には照輝もいた。

「奇襲成功を祝して、乾杯!」

「かんぱ~い!」

 艦魂たちは手に持っていた飲み物を一気に飲み干した。

「ふぅ、やっぱり作戦後の酒が一番ね」

「それで、戦艦大和の艦魂は誰?」

 そう言われ大和は手を挙げた。

「わ、私です」

 大和が答えると少し離れたところにいた一人の少女が近づいてきた。

「あなたが大和?」

「は、はい!」

「そっか、第一航空艦隊旗艦『赤城』艦魂の赤城です。よろしく」

「あっ、こちらこそよろしくお願いします」

「まあ、とりあえず酒飲もっか?」

「え、じゃあお願いします」

 先程からお茶ばかり飲んでいた大和は赤城から酒をもらった。そこで照輝が話しかけた。

「ちょっと、お前は未成年だろ?」

「む、子供扱いしないでください。これでも戦艦の艦魂ですよ」

 見知らぬ少年の登場に赤城は大和に話しかけた。

「彼は?」

「あっ彼は私の航海科で働いている篠原照輝少尉です」

「もしかして見える子?」

「あっはい」

「そっか、よろしく篠原くん」

「よろしくお願いします!」

「私は瑞鶴、よろしくねー」

「私は第二航空戦隊旗艦の蒼龍、よろしく」

 赤城の両脇に座っていた少女が話しかけてきた。

「それにしても敵の空母が叩けなかったのはいたいわね」

 赤城が言うと大和が質問した。

「く、空母ってそんなに強いんですか?」

「うん、これからは航空機の時代とも言われているんだよー」

「今までは戦艦による長射程でのアウトレンジが主流だったがこれからは航空機の航続距離を生かした作戦が主流になるらしい」

 蒼龍たちがそう言うと大和は少し不安になった。

「じゃ、じゃあ私はもういらないんですか?」

 その言葉に赤城は少し笑って言った。

「そんなことはないわよ。私たちは兵装が貧弱だからやっぱり誰かに守ってもらわないと」

「よかった。じゃあ無用ではないんですね」

 赤城のその言葉に大和はほっと肩を撫で下ろした。


 と、そこで向こうにいた長門が話しかけてきた。

「篠原くん、大和との関係は順調かねぇ?」

「関係、といいますと?」

「そりゃあもちろん男女の関係よ」

 その言葉に照輝は一気に顔を赤くした。

「そういう関係じゃないですよ!?」

「いやいや、はずかしがらなくていいよ?」

「本当に違うんです!琴音とはそういう関係じゃ・・・」

 そこから先を照輝は言わなかった。いや言えなかったといったほうがいいだろうか。なぜなら周りの艦魂たちが一気に静かになったからである。そしてどうやらその理由は照輝にあるらしかった。まわりからはヒソヒソ声が聞こえている。

「え?なんですか・・・」

「篠原くん・・・琴音っていうのは・・・つまり大和のこと?」

「はい、大和の名前ですけど・・・」

「篠原くん、なぜ君が大和の名前を知っているの?それは私たちでも知らないのよ?」

「え・・・それは大和が・・・」

 と、その時、扉がバタンと開け放たれて一人の少女が入ってきた。

「篠原さん!第一航空艦隊飛行隊の歓迎会するんで赤城に行きましょう・・・ってどうしたんですか?」

「な、夏希・・・」

 入ってきたのは夏希だった。歓迎会に照輝を呼びに来たらしい。照輝は周りを見回した。

「後でちゃんと話してね」

 長門にそう言われると一人立って夏希の方へ行った。

「ちょうどよかった」

「え?」

 照輝はそうつぶやくと夏希と一緒に長い廊下の向こうへ消えた。



第五節、機動艦隊が帰ってきました。今回空母は初登場ですが、どうだったでしょうか。まあ、あまりわからないとは思いますが。次回は空魂たちの祝賀会です。次も早めに投稿できたらいいと思っていますのでよろしくお願いします。


2013.10.12 

【「よかった。じゃあ無用ではないんですね」

「いや赤城たちには悪いけど空母は武装が弱いからやっぱり戦艦や駆逐艦の護衛が必要だと思う」

 照輝のその言葉に大和はほっと肩を撫で下ろした。】

となっていて文章がおかしかったのを訂正しました。


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