第一章 第四節 航空機の魂と名前
「明日には真珠湾に奇襲をした第一航空艦隊が帰ってくる。そこで兵学校気分が抜けていない怠けた顔をするんじゃないぞ。お前らは戦艦大和の乗組員なんだから自覚を持って行動しろ。以上」
「敬礼!」
十二月二十二日、大和の艦橋で航海科の会議が行われていた。今は航海長が明日の機動艦隊の入港について説明を行っていた。
「各員自分の持ち物を確認したら解散」
照輝と大和は艦橋の後ろの方に立っていた。
「少尉、空母の艦魂の方はどのような人なんでしょうね」
「僕もあったことないからなぁ」
『大和』は戦後に就役したため空母の艦魂たちとはあったことがないのだ。と、そこで照輝は急に風に当たりたくなった。
「大和、僕ちょっと上に行ってくる」
「防空指揮所ですか、わかりました。私は下に降りてます」
そう言うと大和は階段を降りていった。それを見ると照輝は逆に階段を上っていった。
今日は風が強くて気持ちよかった。照輝はふと東の方角を見た。
「この向こうで空母たちが奇襲をしたのか・・・」
奇襲をした時空母の艦魂たちはどんな気分だったのだろうか。そんなことを考えていた時だった。照輝は後部甲板に見覚えのない少女を見つけた。先日紹介された艦魂の中にはいなかった。長門から駆逐艦などの艦魂は戦艦にはあまり来ないと聞いていたのでその少女の存在が不思議だった。照輝は急いでラッタルを降り後部甲板に向かった。
後部甲板につくとそこに少女はいた。先日搭載されたばかりの零式水観を熱心に雑巾で拭いていた。
「ちょっと君」
照輝は声をかけた。しかし少女は聞こえていないようで振り向かずに手を動かしている。
「おーい」
もう一度声をかけた。しかし反応はない。
「ねえ、聞こえてる?」
今度は少女の方を叩いた。
「ふあ!?」
すると少女は驚いたように振り向きその拍子に頭を零式水観にぶつけてしまった。
「いったーい」
「大丈夫?」
「・・・!」
少女は何かに気づくと興奮したような声で言った。
「わ、私が見えるんですか?」
「見えなかったら声かけないって・・・」
「え、え、本当に?私が見える人に初めて会った!」
「・・・で、君はどの艦の艦魂なの?」
照輝は一番知りたかったことを少女に聞いた。
「え?どの艦って・・・あ、私は艦魂じゃありませんよ?」
「え、艦魂じゃない?じゃあなんなのさ」
そこで照輝は少女が飛行服を来ているのに気づいた。しかし海軍は女性は入れないはずである。ましてや軍艦に女性を乗せるわけがない。では艦魂ではない少女がなぜこんなとこにいるのか。照輝が考えていると少女が口を開いていった。
「私は航空機に宿った魂、空魂です」
「・・・空魂?」
「はい。艦に艦魂、船に船魂が宿っているのと同じように航空機にも魂が宿っています。それが私達、空魂です」
「航空機に宿った魂・・・か」
そのあと数秒の沈黙があり次に口を開いたのは照輝だった。
「僕は篠原照輝って言うんだけど・・・君、名前はなんていうの?」
「・・・私は帝国海軍戦艦大和所属 零式水上観測機空魂「零式 夏希」です」
少女は照輝に自分の名前を伝えた。
「零式夏希さん・・・じゃあよろしく零式さん」
「・・・零式って名前、あまり好きじゃないので下の名前で呼んでくれませんか?」
「えっ・・・あ、うんじゃあ改めて、よろしく夏希」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。篠原さん」
照輝が笑顔で自己紹介すると夏希も笑顔で返した。
と、その時後部甲板のラッタルを大和が登ってきた。
「やっと見つけましたよ、少尉・・・ってその人誰ですか?」
大和は夏希に気づいたらしい。大和が質問すると夏希が敬礼して答えた。
「戦艦大和所属 零式水上観測機空魂の零式夏希です」
「えっ艦魂じゃないの?っていうか空魂って何?」
大和は生まれたばかりのため空魂をまだ知らなかったらしい。照輝は今夏希から聞いた話を今度は大和に話し始めた。
「へぇ、空魂なんていたんだ・・・」
「噂だと戦車にも魂が宿っているという話を聞いたことがあります」
「すごい、なんでも魂が宿ってるんだ」
笑顔で夏希と話している大和に照輝が聞いた。
「ところで大和、なんか僕に用があったの?」
「え・・・あ、そうなんです。航海科の会議を行うので航海科員は全員第一艦橋に集合しろとのことです」
「会議か・・・うん分かった。じゃあ、またね夏希」
「はい、少尉」
そういうと照輝と夏希は笑顔を交わして別れた。照輝は大和と一緒に第一艦橋へ向かい夏希はまた雑巾を持って零式水観を熱心に拭き始めた。
艦橋に入るとさっそく大和が話しかけてきた。
「少尉・・・なんであの娘のこと下の名前で呼んでるんですか・・・」
「え?だってあの子が零式っていう名前は嫌だからって・・・」
「私のことは大和って読んでるのに」
「だって大和の名前は上もしたもないだろう?」
「わ、私にだって下の名前がちゃんとありますよ!」
「え?」
大和がそう言うと照輝は目を丸くした。最初に会ったときは「大和」と名乗っていた。ほかの戦艦たちもしたの名前があるなんて言っていなかった。
「だって、誰もそんなこと・・・」
「艦魂は普段は使わないし特別なものなのでほかの人には教えないことが多いんです!私だって長門さんたちの名前は知りません」
「じゃあぼくが下の名前で呼ぶわけには行かないね」
「え?ちょっまってください!」
「ん、何?」
「私は呼ばれても構わないんですが・・・」
それを聞いて照輝は少しからかいたくなった。
「でも僕は呼びたいわけじゃないから」
照輝が少し笑っていうと大和が怒って言った。
「私は呼んで欲しいんです!」
「じゃあ教えてよ」
大和は大きく息を吸うと口を開いた。
「私の名前は・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「言うつもりある?」
大和が何も言わないので照輝が大和に聞いた。
「いえ、初めて教えるんだと思うと少し躊躇が・・・」
「じゃあいいや、またね」
「えっ?ちょっ」
照輝は艦橋へ歩き始めた。その背中を見て大和はついに口を開いた。
「私の名前は・・・」
その声に照輝が振り返る。
「私の名前は」
「・・・・・・琴音です」
「琴音・・・か」
そう言うと照輝は再び艦橋へ歩き出しながら言った。
「行くよ、琴音」
その言葉に大和・・・琴音は笑顔を浮かべて言った。
「はい!少尉」
すみません。すぐに上げると言っておきながらかなり遅くなってしまいました。
第四節、どうだったでしょうか?今回は航空機に魂をつけてみました。最初は航空機の魂も女性でいいのだろうか?と思いましたがまあいいか、ということでこうなりました。
次回では奇襲を行なった空母が帰ってきます。そこでも航空機たちを出せたらいいなと思っています。




