第一章 第十三節 見つけられない敵
1942年5月6日5時00分
「艦隊正面、灯火を確認。東邦丸です!」
「よし、全艦補給準備!」
まだ東の水平線を除いて暗闇が広がる中、ソロモン海に展開しているMO機動部隊は先日に分かれた東邦丸と再び会合し補給を開始しようとしていた。いまだに敵機動部隊を発見できず何もできていない機動部隊の面々は人間、艦魂問わず気合が入っていた。
「瑞鶴、今度こそ敵機動部隊を見つけるわよ」
翔鶴が艦橋の小さな窓から東の空を見つめながら言う。が、その後ろにいた瑞鶴は
「ふにゃ?姉さん、おはよう」
まだ目が覚めきっていなかった。
「瑞鶴」
「うん?」
「今は作戦中よ」
「うん」
「いつ敵が出てくるかわからないんだから……」
「妙高さん、今日のごはんなあに?」
瑞鶴がまだ眠そうな目をこすりながら隣の妙高に聞く。
「そうですね、焼鮭にしましょうか」
「しゃけ!?やったー!」
「お!今日の朝飯はしゃけか。飯が進むな」
そういうと瑞鶴と羽黒ははしゃぎながらどこかへ行ってしまった。
「……はあ」
翔鶴は軽くあきれた後で二人のあとを追って食堂へと向かった。
同日午前8時40分
作戦中、艦魂たちの食事はその艦が所属している艦隊の旗艦においておこなわれる。その艦のどこで行われるかはその艦魂次第であるが今回は翔鶴の食堂で行われている。
「おかわりー!」
「そんなにあわてなくてもまだありますよ」
満面の笑みで茶碗を差し出す瑞鶴とその茶碗に山盛りのご飯を盛る妙高。そしてそれを見つめてあきれる翔鶴。
「はあ」
「どうしました?」
再度ため息をついた翔鶴に妙高が問う。しかし答えは返ってこなかった。その時
「やっと見つけた、お久しぶりです」
2人が声の方を向くとそこには東邦丸が立っていた。
「やあ、あずちゃん、久しぶり」
「なんですか、その呼び方。こないだは普通でしたよね?」
翔鶴からの呼び名に対して東邦丸が不服を申し立てる。
「本当は真珠湾の時に思いついたんだよね。東邦丸って男の子っぽいじゃん。だからさ、あずちゃんでいいっしょ」
「理由になってません」
「あずちゃん」
「妙高さんも呼ばないでください!」
「じゃあ、あずにゃん!」
「それはいろんな意味でダメです!!」
あずちゃん……もとい東邦丸がほっぺたを膨らまして怒る。そんなこんなで艦魂達が甲板で遊んでいた時だった。
「司令!横浜空から入電です!」
「読み上げろ!」
「はっ!読みます。『ツラギノ192度、420浬ニ敵ラシキ大部隊見ユ』以上です」
その瞬間、艦魂達は目を見開いた。補給中に接敵する可能性が出てきたのだ。しかし、ベテラン一航艦の動きは速かった。
「全機、発艦準備!接敵に備え!」
「姉さん!補給はどうする!?」
瑞鶴が答えるより先に艦内放送がかかった。
『直ちに補給中止!五航戦は補給が終わっている有明、夕暮を率いて針路180で南下、先行せよ!』
「「了解!」」
周りに対してそういうと瑞鶴達は自分の艦へ戻って行き、後に残った翔鶴は邪魔にならないよう後ろへとさがった。
「第五戦速!」
「第五戦速!」
「序列整えろ!」
航海科の兵員たちがどんどんと作業を進めていき航空母艦瑞鶴は南方へと足を進めていった。
同日16時30分
ドカッ……そんな音が翔鶴の甲板に響いた。
「なんで、なんでよ!」
音の正体は翔鶴のこぶしだった。
「なんで……みつからないのよ」
この日、ついに艦隊の前に敵艦隊が現れないまま日暮れを迎えてしまった。昨日に続く未接敵で翔鶴の我慢も限界が近づいていた。
「日が、沈むね」
「……そうね」
瑞鶴が朝とは反対の西の空を見つめながら言った。それに対して翔鶴は少しいらだった様子で答える。太陽は徐々に傾いていきすでに東の空は黒く染まっていた。艦隊は駆逐艦の補給が十分ではなかったため第五駆逐隊を分離、補給へ向かわせたため護衛は駆逐艦2隻しかいなかった。その数少ない艦影がより一層、孤独感を引き立てていた。
「お姉ちゃん……まだ、明日があるよ、明日敵を見つければいいんだから!」
「……そうね、まだ明日があるんだよね」
妹に励まされた翔鶴はしばらく太陽を見つめていたがふと笑顔になり瑞鶴の方をふり向いた。
「ごめんね瑞鶴、心配かけて。ご飯にしよ」
「うん!」
瑞鶴は大きくうなずくと翔鶴のあとを追って食堂へ向かった。
お久しぶりです。といっても前から継続して見られている方がいらっしゃるのかわかりませんが。さっき確認したところ五カ月ぶりぐらいの更新になるんですね。はい、無事受験は成功しました。のでこれから更新再開したいと思います。読んでくださっている方がどれくらいいるのかわかりませんが。まあ、これからもよろしくお願いします。
2014年4月13日 一部改変




