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第一章 第十一節 MO作戦

「沖島さん、柱島から無電です」

「内容は?」

 沖島と呼ばれた少女が紙を持って話しかけてきた少女に聞く。

「本日、昭和17年4月30日を持って敷設艦沖島以下第十九戦隊にMO、FS作戦の発動に備え出撃を下令するとのことです」

 それを聞いた少女は軽く手を挙げて「ありがとう」と言うと艦橋へ歩いて行った。

「総艦抜錨、出港準備!」




「先ほどラバウルから第十九戦隊が出港しました。第十九戦隊はツラギ島を占領、水上機基地を設営し珊瑚海の警戒を行います。その後、MO機動部隊が敵艦隊を陽動しそのうちにMO攻略部隊が海路で上陸、占領します」

 大和が地図を差しながら説明している。だが今日その前に座っているのは艦魂たちではなく、照輝だけである。

「その後、主隊および機動部隊によってポートモレスビーを占領、オーストラリアとアメリカのシーレーンを遮断し孤立させる作戦です」

「ふ、ふーん」

「これによりオーストラリアは大きな影響を受け、大東亜戦争から脱落すると思われます。」

 大和は手元の資料をめくってさらに続ける。

「ポートモレスビーは今後の重要拠点ともなるので今回の作戦は非常に重要なものになります」

「そうなんだ……」

 照輝は大和から目をそらして答える。

「少尉、本当にわかってます?」

「…………」

「少尉?」

「…………」

 大和が照輝の目を真っ直ぐ見ると照輝は重々しく口を開いた。

「大和、あのさ」

「なんですか?」

「……ポートモレスビーって、どこ?」

「……はぁ」

 数秒の沈黙のあと大和はため息をついた。なぜそれがわからないのかと言いたそうだ。

「少尉、今日は居残りですよ?」

「ひっ」

 大和の満面の笑みに照輝は言葉を失った。




 さきほどと変わってあたりはもう夕闇に包まれている。夕日に輝く大和に誰もが見とれていた。が、その中で一人だけ感動していないものがいた。

「はあ、やっと終わった。」

「たいへんだったねえ、篠原くん」

 長門が照輝の背中を叩きながら言う。完全に他人事である。

「まあ、少尉がこないだ説明あったのに作戦を理解してなかったのが悪いんだし?」

「でも大和は作戦に参加しないから別に問題ないかと思って……」

 日向の言葉に照輝が答える。日向はどこから持ってきたのかカレーを食べている。ちなみに今日は土曜日である。

「ところで篠原くん、ここから真面目な話なんだけど……」

 総前置きしてひと呼吸おいてから長門は話し始めた。

「もうすぐミッドウェー作戦だけど心構えは出来てる?」

「心構えといいますと?」

 照輝の問いに長門はまっすぐ目を見て静かに言った。

「……次は大和も出撃になるわよ」

「え?」

 照輝は一瞬その意味が理解できなかった。

「次の作戦は大和も出撃するほどの大作戦よ」

「だからなんですか?」

「あなたが前線に出るということはあなたのそばで戦闘が行われるということ、その時に……」

 長門はそこで一度言葉を切って大きく息を吸ってから続けた。


「あなたの目の前で親しい人が死ぬかも知れないということよ」


 しばらく誰も喋らなかった。連合艦隊旗艦を務めた長門も、大和航海科に務める照輝も、ムードメーカーの日向も、誰ひとりとしてその時は口を開かなかった。

 だが頃合を見計らって長門が再び口を開く。

「だからその時に……無理な話かも知れないけど、あまり悲しまないように心構えしておいて」

 長門に再びまっすぐみつめられ照輝は小さく頷いた。そのときはそれがどういうことか全く考えていなかった。




「抜錨、出航準備!」

「出航準備、ヨウソロー」

「両舷前進最微速!」

「両舷前進最微速!」

「対潜、対空警戒を厳となせ」

 1942年5月1日、まだ辺りが暗い朝の4時頃、トラックよりMO機動部隊が出撃した。

「瑞鶴、頑張ろうね」

「うん、姉さん……死んだりしちゃ、いやだからね」

 瑞鶴が言うと翔鶴が「わかってる、瑞鶴もね」と言って瑞鶴の後ろに立っている少年に目を向けた。

「じゃ、よろしくね梅村くん」

「はい!おまかせください」

 梅村と呼ばれた少年が元気よく答えるのを見届けると翔鶴は瞬間移動で自分の艦へ戻っていった。彼は瑞鶴乗組の梅村悠也(うめむらゆうや)海軍少尉である。

「少尉、もし私が死んだときは姉さんのこと、お願いします」

「やめろよ縁起でもない」

「でも、どうなるかわからないじゃないですか」

 言いながら瑞鶴は近くを航行している翔鶴を眺める。見えるはずはないが翔鶴の旭日旗の下に姉が立っているのを瑞鶴は見たような気がした。

「じゃ、僕らも行こうか」

「そうですね。少尉」

 悠也の言葉に応えると瑞鶴は一度頭上ではためく旭日旗を見上げてから艦橋の中へと入っていった。


5ヶ月ぶりくらいでしょうか。はじまめして、もしくはお久しぶりです。本当に久しぶりの更新となります。受験勉強の合間を縫ってやっと投稿することができました。次の話では珊瑚海海戦に突入します。その次か次々でミッドウェー海戦に向けて話を進めたいと思います。また先にセイロン沖海戦の話を挿入するかもしれません。もしかしたら次の投稿は受験が終わってからになってしまうかもしれません。これからも末永く宜しくお願いします。


2013.11.06 大和の台詞「そして周辺の制空権を獲得、その後ニューギニア島にMO機動部隊が接近、海路で上陸、占領します」を「その後、MO機動部隊が敵艦隊を陽動しそのうちにMO攻略部隊が海路で上陸、占領します」に変更

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