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第一章 第十節 さらなる戦いへ

 1942年4月18日 水戸上空

「東条さん、もうすぐ水戸につきますよ」

「ああ」

 この日、首相の東条英機は三菱MC20型大臣専用機で宇都宮から水戸へ向かっていた。

「今日はいい天気だな」

「そうですね」

 東条は窓の外、水平線を見つめていた。と、その時パイロットの一人が言った。

「前方に航空機群がいます」

「ん?」

 その声に東条の秘書がその方向を見た。

「海軍の陸攻の訓練じゃないか?」

「おそらく」

 パイロットは友軍機と判断しそのまま飛行を続けた。

「ん?」

 東条は遠くに見えている飛行機に目を凝らした。

「・・・!」

 その胴体には星が描かれていた。

「おい、あれは敵機だぞ!」

 東条が秘書に叫んだ。

「え?・・・あっ、おい!逃げきれるか!?」

「無理です!近すぎます!」

「くそっ」

 この時東条機と米軍機はすでに双方の顔が見えるほどまで接近していた。東条も覚悟を決めたその時、パイロットが叫んだ。

「米軍機、進路を変えずにそのまま飛行しています」

「こっちへは来ないのか」

 東条は肩の力を抜いて背もたれによっかかった。この時、東条が見た米軍機こそがドーリットル中佐率いるホーネットから発艦した米軍爆撃機B-25なのであった。




「東京が、空襲!?」

 柱島では艦魂たちが集まっていた。例によって照輝がいる大和の会議室である。

「ええ、昨日米軍の爆撃機B-25によって東京、川崎、横須賀、名古屋、四日市、神戸の六箇所へ爆撃が行われました」

「本土に空襲が・・・」

 全員が沈黙した。それだけ空襲が行われたことは重かった。

 しばらく経って日向が口を開いた。

「ちょっと待って。B-25って陸軍機だよね?」

 日向は少し間を空けて言った。

「どうやって日本まで?」

 日向の質問に長門が答える。

「そう今回は米空母、ホーネットから発艦したと思われます。」

「つまり連携作戦ってこと?」

「日本じゃありえないわね」

 当時どこの国も陸軍と海軍はあまり仲が良くなかったがその中で日本は飛び抜けて仲が仲が悪く太平洋戦争の開戦についても責任を押し付け合うほどであった。と、その時日向がいきなり叫んだ。

「あ!」

「どうした?何かいい案でも……」

 照輝が聞く。それに対して日向が重大そうな顔で口を開く。

「人と会う約束あるんだった」

「そんなことかよ」

 照輝があきれ顔で言う。すると大和も思い出したように言った。

「私も書類を片付けないと」

 そう言うと大和は艦橋へ向かって歩いて行った。

「大和、あなた何か忘れてない?」

「え?」

 長門が真面目な顔で言う。しばらくして大和はハッとした顔をするとみんなの方へ向き直った。

「皆さん! 今日作戦会議を行うので1800に会議室に集まってください!」

 大和の声に艦魂たちはわかったーなどと言いながら自艦へ戻っていった。

「しっかりしてね」

「すみません」

 一人残っていた長門も大和にひと声かけると瞬間移動で帰っていった。



「皆さん集まりましたか?」

「うん、いるよー」

 日向の声に応えるように大和は周りを一回見回してからまた口を開いた。

「それではこれよりミッドウェー作戦、及び米豪分断作戦の説明を行います」

 その声に部屋の中の全員が小さく頷いた。

「ミッドウェー作戦は名前のとおりミッドウェー島攻略を目指します。まずは作戦遂行を知られないためにアリューシャン列島を占領、その後ミッドウェー島へ攻撃を仕掛け占領します」

 大和が壁にかけられている地図を棒で指しながら説明した。

「次に米豪分断作戦はフィジー、ニューカレドリアなどを占領することによりオーストラリアを孤立させイギリス連邦から脱落させることが目的です」

 一度大和は黒板から目を離したがすぐにまた黒板に目を戻して話し始めた。

「米豪遮断に関してはすでに1月にラバウルを攻略しています。そのため次の目標はソロモン諸島です」

 今度はソロモン諸島の部分を差しながら言った。

「作戦に参加する部隊には後日資料を渡して詳しい説明を行います。何か質問はありますか」

 大和は室内を見回した。が、誰も手を上げなかった。

「ではこれで作戦会議を終わります。各自解散してください」

 そう言うと大和は黒板から離れて普段自分が座っている椅子の方へ歩いて行った。そして座った。途端、急に騒がしくなった。普段のように全員が思い思いに話している。会議が終わったら思う存分騒ぐ、これが普段のパターンである。いつものようにうるさくなったのを見届けると大和は横に座っている照輝に声をかけた。

「少尉、冷めちゃいましたけどカレーどうぞ?」

 そう言いながら大和は皿にご飯とカレーをよそった。

「ん、ありがとう」

 照輝はスプーンを手に取ると一口口に運んだ。そして

「おいしい……」

 とただ一言だけ言うと更に何回も口へ運んだ。

「よかったです、美味しいって言ってくれて。どんどん食べてくださいね」

 そう言うと空になりかけている皿にもういっぱいカレーをよそった。と、そこへ扶桑がやってきた。

「篠原くん、これ食べて」

 その手の中には皿に乗った竜田揚げがあった。

「頑張って作ったから」

「ああ、ありがと」

 そう言うと今度は箸で竜田揚げに手を伸ばした。

「うん、おいしい」

「本当?よかった。じゃあね」

 そう言うと扶桑はどこかへ行ってしまった。扶桑が歩いて行った方を見るとそこでは陸奥と霧島が話していた。霧島はやけに顔が赤くなっていた。

「そういえばさ正月の時陸奥と何してたの?」

 照輝が聞いたのは正月のときの忘年会(迎年会)の時のことである。

「えっと、その……思い出したくないです」

 少し顔を赤らめながらそう言うと大和はどこかへいってしまった。

「なんなんだろ……」

 そういった照輝に長門が肩をたたいて言った。

「まあいいじゃない酒飲んでパーっと行こうよ」

「だから僕は酒飲めませんって」


 相変わらず騒ぎまくる帝国海軍の艦魂たちであった。


 

本当にお久しぶりです。もう少しもう少しといううちに1ヶ月以上がたってしまいました。本当にすみません。さて、戦記なのに今だそれらしいことをしていません。ので、できるだけ早く珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦に入れるようにしようと思います。つまらない小説ですがこれからもよろしくお願いします。

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