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追放された“無能支援役”、実はパーティ全体を最適化する最強の頭脳でした 〜気づかれなかった俺が抜けた途端、全部崩壊する〜  作者: 鷹宮ロイド


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第4話 戻ってきた理由

 ガルドが、ここにいる。


 その事実だけで、部屋の空気は一段冷えた。


 ジンが一歩前に出る。

「なんだ、あんたら」


 ザックが鼻で笑った。

「部外者は引っ込んでろよ」


「誰が部外者だ」


 空気がぶつかる。


 リゼが静かに一歩だけ前に出た。

「ここは私たちの拠点です。用件があるなら、簡潔にお願いします」


 落ち着いた声。

 でも、逃がす気はない。


 ガルドはリゼを一瞥して、それから再び僕を見る。


「レイン。外で話すか」


「ここでいいよ」


「……そうか」


 わずかに眉が動く。


 イーリスが腕を組んだまま言う。

「で? 何してるのよ。こんなとこで」


「仕事探し」


「は? こんなボロいとこで?」


 ルナの顔が一瞬険しくなる。


「ボロいのは事実だけど、言い方あるでしょ」

「事実じゃない」


 リゼが即座に否定する。


「まだ整っていないだけです」


 “まだ”。


 その一言で、場の意味が少し変わる。


 ガルドが小さく息を吐いた。


「……話を戻すぞ」


 視線が僕に戻る。


「お前、さっきの戦闘で何した」


「さっき?」


「帰り道だ。影狼のとこ」


 ああ。


 思い出す。


「ちょっと位置をずらしただけ」


「それで、ああなるか?」


「なるよ」


 短く答える。


 ガルドは黙る。

 その横で、ザックが舌打ちした。


「気持ち悪ぃな、お前。そんなことできるなら、なんで最初から言わねえんだよ」


「言ってたよ」


「は?」


「何回か」


「……」


 ザックの顔が歪む。

 思い当たる節がある顔だ。


 イーリスも目を逸らした。


 ガルドだけが、動かない。


「……分からなかった」


 低い声だった。


「お前が何やってるか」


「そうだろうね」


「だが、さっきは違った」


 少しだけ間が空く。


「お前がいないと、ズレる」


 その言葉で、部屋の空気が変わった。


 ジンとルナがこちらを見る。

 リゼも、わずかに目を細めた。


 やっと、そこに来たか。


「で?」


 僕は続きを促す。


「で、なんで来たの」


 ガルドは一瞬だけ言葉を選んだ。


「……戻れ」


 短い一言。


 ルナが吹き出した。

「は?」


 ジンも眉をひそめる。


 リゼは何も言わない。


 ただ、僕を見る。


「戻れって」


「そのままだ。お前を戻す」


「理由は?」


「必要だ」


 さっきとは逆の言葉だ。


 少しだけ面白い。


「さっきまで“いらない”って言ってたのに?」


「状況が変わった」


「何が?」


 ガルドは答えない。


 代わりに、ザックが苛立った声を出す。

「だからさっきの戦闘で――」


「違う」


 ガルドが遮る。


「……違う?」


「それだけじゃない」


 その言い方で、確信する。


 もう一つある。


「他に何かあった?」


「……」


 ガルドは一瞬だけ迷った。


 そして、言った。


「次の遠征だ」


「うん」


「依頼内容が変わった」


「どう変わったの」


「中層じゃない」


「じゃあ?」


「深層だ」


 部屋が静まり返る。


 ジンが低く呟いた。

「……深層?」


 ルナも顔をしかめる。

「正気?」


 王都近郊の迷宮、その深層。


 中堅パーティが軽々しく踏み込んでいい場所じゃない。


「報酬が跳ね上がった」


 ザックが言う。

「危険度もな」


 イーリスが続ける。

「正直、今のままじゃ無理」


「だから?」


「だから、お前が必要だ」


 ガルドの視線が真っ直ぐ来る。


 逃げ場のない目だ。


 必要だから呼び戻す。


 分かりやすい理由。


 でも。


「……それでいいの?」


「何がだ」


「僕が何してるか、まだ分かってないでしょ」


「……」


「さっきは“ズレる”って言っただけ」


「それで十分だ」


「違う」


 少しだけ、言葉を強くする。


「分からないまま使うと、また同じことになる」


 沈黙。


 ザックが舌打ちする。

「面倒くせえな、お前」


「そうだね」


 否定はしない。


 ガルドが一歩近づく。


「じゃあ、どうすればいい」


 その問いは、少しだけ変わっていた。


 命令じゃない。

 確認だ。


「簡単だよ」


「言え」


「全部、変える」


「は?」


「やり方も、順番も、役割も」


 ジンとルナが反応する。

 この言葉は、さっきの流れと同じだ。


「今のままじゃ、深層は無理」

「……」


「だから、作り直す」


 ガルドの目が揺れる。


「それを、お前がやるのか」

「やるよ」


「……できるのか」


「できる」


 間を置かずに答える。


 嘘じゃない。


 ただし。


「条件がある」


「言え」


「全部、聞くこと」


 部屋の空気が張り詰める。


 さっき、ジンたちに言ったのと同じ言葉。


 でも意味は違う。


 あの時は“調整”。


 今は“再構築”。


「……」


 ガルドは黙る。


 ザックが口を開きかける。

「そんなの――」


「いい」


 ガルドが止めた。


「……やる」


 短い返答。


 覚悟が混じっている。


 イーリスが目を見開く。

「ちょっと、ガルド――」


「やると言った」


 それ以上は言わせない。


 ジンが低く笑った。

「随分あっさりだな」


 ルナも腕を組む。

「で? うちはどうすんの」


 視線がこちらに集まる。


 ああ、そうか。


 今のは、こっちにも関係ある話だ。


「レイン」


 リゼが静かに言う。


「どうしますか」


 選択肢は二つ。


 元に戻るか。

 新しく作るか。


 どちらも、面倒だ。


 でも。


「両方やる」


「は?」


 全員の声が揃った。


「時間、無駄にしたくないから」


「意味わかんねえよ」


「簡単」


 僕は指を二つ立てる。


「こっちは“作り直す”」

「……」


「こっちは“壊さない”」


 リゼたちを見る。


「同時にやる」


「……本気で言ってる?」


 ルナが呆れた声を出す。


「うん」


 ジンが笑った。

「面白ぇじゃねえか」


 ガルドは黙ったまま。


 ただ、目だけが変わっていた。


 最初に見た時の、“分からないものを見る目”。


 でも今は、そこに一つだけ増えている。


 期待だ。


「……いいだろう」


 低く言う。


「やってみろ」


 その一言で、流れが決まった。


 終わったはずの関係が、もう一度動き出す。


 ただし、今度は前とは違う形で。


 ――問題は。


 これが、どこまで持つかだ。

「戻る」か「進む」かではなく、「両方やる」という選択。


少しずつですが、レインのやり方が周囲に影響を与え始めています。

ただ、この選択は確実に波を大きくします。


次は、その最初の歪みが表に出ます。

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