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無能の烙印を押された少年、世界を変える『法則破壊』の鍛冶師となる  作者: じゃすりんりん


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証明準備

ページ訪問大変ありがとうごさいます。

初投稿作品で書きながらプロットを組み立てている状況ですが、読んでいただいて後悔させない作品を書くのが目標です。

よろしくお願いします。

 夜明け前。工房の隅に座り込んだレオンは、昨夜から朝にかけて行った『法則破壊(ファクタ・ブレイカー)』の実験結果を分析していた。


「魔力は、法則を歪曲させる。俺の力は、物がもともと持っている法則を書き換える……だけど、魔力によって固定された歪曲には届かないのか……」


 レオンの法則破壊(ファクタ・ブレイカー)は、物体が持っている法則を意図的に操作できることを発見していた。


 しかし、魔力で一度強化された物に対して力を加えても、魔力によって固定された強化を解除することはできなかった。


 里の素材と里の限られた知識だけでは、魔力という巨大な壁を前に無力だということが、分かってしまった。






 里の周囲で採れるのは、魔力の影響をほとんど受けていない通常の金属と木材のみである。


 これらの素材の法則構造は比較的単純であり、レオンの力で容易に把握し、改変が可能だった。


 しかし、魔力によって強化された金属は、法則自体がねじ曲げられ、その構造が極度に複雑化している。


 里には、この複雑な魔力金属の内部構造を解析するための、高度な分析道具は一切存在しない。


「里の素材だけでは、魔力による法則の固定を特定できない。魔力によって固定された法則を打ち破るためには、その法則を具体的に知るための、より高度な素材と知見が必要不可欠なんだ」


 レオンは、倦怠感に襲われながらも、頭脳だけは諦めていなかった。魔力という巨大な壁を打ち破るには、里の外にある、より進んだ知識と技術を手に入れるしかなかった。






 陽が昇り、炉に火が入る頃、父ガレスが工房に戻ってきた。ガレスは、レオンが徹夜していたこと、そして工房の隅の岩が叩き割られているのを見て、苛立ちを隠せない様子だった。


「また無駄な実験か。里の資材を無駄にするな! お前の作った包丁が、リカルドの魔力剣で砕かれたと聞いたぞ。なぜ、現実を見ないんだ!」


 レオンの肩を強く掴んだガレスの手には、息子を案じる親心と、魔力秩序に逆らう者への憤怒が混ざり合っているように感じた。


 だが、ここで引くわけにはいかない。


「父さん、魔力道具を超える力を見つけたんです。でも、里の素材や知識では、魔力の込められた物の持つ歪んだ法則の構造を分析する手がかりが足りません。もっと高度な知識と素材があれば、最高の物を鍛えられるはずなんです!」


 ガレスは、聞くに堪えないとでも言うように首を振った。


「法則の操作だと? 聞き飽きたわ! お前の曽祖父も似たようなことを言ったが、結局は何一つ大成できず、里の嘲笑の的となった! お前は、その妄執をそのまま受け継いだだけだ!」


 ガレスの、レオンの肩を掴む手にさらに力がこもった。彼の目は、息子ではなく、過去の失敗者ライナーを見ているようだった。


「父さん。俺が里に残れば、それは曽祖父ライナーの絶望を、俺の代で確定させるということです。俺には、知識と、この力がある。俺は、曽祖父が到達できなかった場所へ行きたい。この世界の法則の絶対性を、俺の手で証明したいんです!」


「馬鹿者! お前は、自分の妄想のために、家族の平穏を壊すつもりか!そんなことをしたら、全員が笑いものになるんだぞ!」ガレスの怒声が工房に響き渡った。


 レオンは、何も言い返さなかった。


 これ以上何を言っても無駄だと悟り、沈黙した。


 この親子には、魔力の有無よりも深い、世界の認識における溝ができていた。





「なんで父さんは俺の挑戦を認めてくれないんだ、

 俺には法則破壊(ファクタ・ブレイカー)の力があるのに、なんでそれを理解してくれないんだ」


 父との会話で、レオンは里での生活に留まることが、自己存在の否定につながることを再確認した。


「仕方ない、か。でも父さんにはきちんと認めてもらって里を出たかったな……でもせめて」


 彼は、いまの自分の力が魔力に対してどれだけ通用するのかを知るため、里の領主代理である準男爵アルベルト・フォン・クロイツへの謁見を申し込むことに決めた。


 アルベルトは魔力至上主義者であり、彼の前で力を試すことは、里の秩序への最後の挑戦だった。





「さてと、使う素材は何がいいかな?できるだけ魔力を通しにくい物がいいんだけど」


 レオンは、里の素材の中で最も魔力による法則の歪曲が起こりにくい素材として、木材を選んだ。


「金属は、組成そのものが魔力の影響下にあるけど、魔力の影響を受けにくい木材なら。法則破壊(ファクタ・ブレイカー)を発動させて、その強度を書き換えられれば、抵抗できるかもしれない」


 レオンは、良質なオークの木材を削り出し、棒を制作した。そして、誰も見ていない深夜、彼はその木材に、自分の持つ知識の全てを集中させた。


「木材の持つ法則を破壊し書き換えて、硬度を限界値まで引き上げる。かといって硬く脆いのでなく、しなやかに。そうだ、こんなふうに……」


 指先から微細な力が棒へと流れ込む。レオンの眉間には、集中によって血が滲むほどの力が込められていた。


 ブゥン……


 微かな共鳴音と共に、木の棒が淡く青白い光を放った。その光が収まった後、棒の硬度を叩いて確認する。


「成功だ……! 法則破壊(ファクタ・ブレイカー)の効果が持続している。この木材は、里のどの木材より硬く、そしてしなやかさを持っているはずだ!」


 レオンは、この成功を、里の秩序に一矢報いるための切り札だと信じた。


「弓や槍といった、しなりと折れにくさが求められる長物を作るときに、魔力素材だと製造コストが跳ね上がる。この木材であれば、魔力素材の弓よりも遥かに安価でありながら、極限まで引っ張っても曲げても折れない、これってすごいことじゃないか?」



 これであれば魔力に抵抗できるかもしれないという希望を胸に、アルベルトの館へ向かった。

少しでも面白いと感じていただけましたら、評価や感想を簡単にでも何卒お願いいたします。

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