第6話「再会」
死亡遊戯が始まったのは、午後10時だった。
最初の投票まで2時間。それまでに脱出口を見つけられれば、誰も死なずに済む。私の冊子には脱出口の場所が書いてある。地下の最深部だ。
けれど、すぐにそこへ向かうわけにはいかなかった。
私とユーリアだけが脱出口の場所を知っている。それを他の参加者に伝えれば、全員で脱出できるかもしれない。しかし、なぜ私がその情報を持っているのかを説明できない。
それに、他の参加者の冊子には【ボーナスについて】の項目がある。人を殺せば金貨2000枚。メイドの年収の2000倍以上だ。その誘惑に負ける者がいないとは限らない。
私とユーリアとドーラは、屋敷の1階を探索した。他の参加者たちもそれぞれ散らばり、屋敷の中を調べているようだった。
30分ほどが経った頃、カティアが戻ってきた。
「おい、一度集まった方がいいんじゃないか」
彼女の提案で、参加者たちが広間に集まり始めた。アンナ、ベルタ、ドーラ、フリーダ、ヒルダ、イルマ。そして私とユーリア。
9人。1人足りない。
「エルザがいないわね」
アンナが周囲を見回して言った。
「あの無愛想な女か。どこに行ったんだ」
カティアが舌打ちした。
「さっき、2階の方に行くのを見ました」
ベルタが小さな声で言った。
「呼びに行った方がいいんじゃないですか? 全員で協力しないと……」
ドーラが不安そうに言った。彼女の冊子にも【ボーナスについて】が書いてあるはずだ。人を殺せば金貨2000枚。それでも、彼女は協力を口にしている。
「私が行くわ」
気づけば、私は口を開いていた。
「セラさん?」
ユーリアが私を見た。
「エルザさんを探してくる。皆はここで待っていて」
「私も行きましょうか」
ユーリアが立ち上がりかけた。けれど、私は首を横に振った。
「大丈夫よ。すぐに戻るわ」
本当は、1人で行きたかった。
エルザ——マリアンネに、話があった。彼女が私を覚えているのかどうか。覚えているなら、何を思っているのか。それを確かめたかった。
広間を出て、2階への階段を上る。
冊子に書いてあった罠の場所を思い出す。2階中央の階段の5段目。ここではない。別の階段だ。
2階の廊下は薄暗かった。等間隔に並ぶ燭台の炎が、壁に揺れる影を作っている。
「エルザさん」
声をかけながら歩く。返事はない。
廊下の奥、突き当たりの部屋の扉が少し開いていた。
近づく。扉の隙間から中を覗く。
書斎だった。本棚が壁一面を覆い、中央に大きな机がある。その窓際に、1人の女性が立っていた。
赤みがかった茶色の髪。そばかすのある頬。マリアンネだ。
彼女は、窓の外を見つめていた。月明かりが、その横顔を照らしている。
「エルザさん」
私は扉を開けて、中に入った。
彼女は、振り返らなかった。
「皆、下で待っているわ。一緒に行きましょう」
「……どうして」
マリアンネが呟いた。
「どうして、あなたがここにいるんですか」
彼女は、振り返った。その目には、驚きと、困惑と、そして何か別の感情が混じっていた。
「リーゼロッテお嬢様」




