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アヤナウチテ  ~妖討手~  作者: 野原 ヒロユキ
~金剛寺 羅道編~
19/21

再戦

空中機動要塞パトロポリスは澄空市上空にとどまった。

どうやら羅道は白薙会と最後の決戦を行うつもりらしい。

奈雲は白薙会のメンバーを前に演説した。

「パトロポリスは現在、澄空市上空にある。これはチャンスだ。この機会に、羅道とその一党を倒す。私たちはこれから、パトロポリスに乗り込む。そして金剛寺 羅道を打ち倒す。この戦いのいかんによって、日本の未来が決まる。この国を救うためにも、我々は羅道を倒さねばならない。この国を救えるかしだいは、諸君らの活躍にかかっている! さあ、行こう! 我々を待つ敵のもとへ!」

奈雲は誇張してはいない。

実際、日本を救えるのはもはや白薙会しかいなかった。

この戦いに日本の未来がある。

つまり、これからは日本の将来を決める戦いになるのだ。

この戦いには奈雲が、指導者自身が乗り込む。

こういう決戦においては指導者は自ら戦場に赴かねばならない。

それが部下に与える影響は大きい。

それは決定的なものになるだろう。

リーダーシップとはそれがあるのとないのではまったく違ってくるのだ。

白薙会は指導者原理で動く企業だ。

それは白薙 奈雲という一人の個人の働きが大きいということであった。

部下たちは危機の時、指導者の顔を見る。

それは部下の本能といっていい。

指導者が毅然としているかは勝敗を左右する。

奈雲は召喚魔法を唱える。

「霊鳥フォイニクス! いでよ!」

青い魔法陣が現れた。

それは回転して、フラッシュを巻き起こす。

フラッシュが終わると、中から一体の赤紫の鳥が現れた。

それは大きな鳥だった。

霊鳥フォイニクスははばたくと、奈雲の傍らに飛んできた。

「さあ、出発だ!」

フォイニクスが翼をはばたかせると、浮力が生じた。

柳たちは浮かび上がった。

「すごいな、浮かび上がる……」

「これが召喚獣かあ……」

「これが奈雲さんの召喚獣フォイニクスの力……」

柳、幹斗、詩穂の三人は浮力でどんどんパトロポリスに近づいていく。

奈雲は退魔師というより、魔法使いなので自身の力で空を飛ぶことができた。

こうして四人はパトロポリスに侵入した。



パトロポリスの中は機械化された空間だった。

ザコの妖魔でさえ機械化されていた。

それが守護者たちの在り方を予告していた。

「機械化……ザコ妖魔でさえ機械化されている……こいつらはいったい?」

柳は刀で機械化コウモリを斬り捨てた後に言った。

柳からすれば、不気味に見える。

「これが羅道のやり方なのだろう。サイボーグだ」

「サイボーグ? それってフィクションに出てくる?」

幹斗が問う。

「まあ、似たようなものだな。サイボーグ化すれば確かに戦闘力は上がる。もっとも生物としての機能は失われるだろうが……」

奈雲はこんなサイボーグ妖魔に嫌悪感を示した。

奈雲が嫌悪感を露骨に示すのは、珍しい。

「私にはこれが妖魔というより、物に見えます」

詩穂が悲しそうな顔をした。

「まあ、羅道からしたら手下も『物』なんだろうさ」

柳がはき捨てた。

「では、行くぞ。この扉の奥に何かいるようだ。ボスでもいるのか?」

奈雲は扉の前に立った。

すると扉が自動で開いた。

警報が鳴る。

柳たちは奈雲の後に続いていった。

その瞬間、灰色の炎が降り注いだ。

柳たちはをれに気づいて、散開する。

「あれは……!」

柳の前に因縁の敵がいた。

「ガシャドクロ! ちょうどいい。あの時はとどめをさせなかったが、今度は倒してみせる!」

「柳と幹斗は前に出ろ。詩穂は後方から支援射撃だ」

「ああ!」

「はーい!」

「はい!」

三人が返事をする。

ガシャドクロは灰色の粒子をまとっていた。

「あいつ……おい、幹斗?」

「何だよ?」

「あいつは前より強化されている!」

「何だって!?」

「十分気をつけろ」

「わかったよ!」

「前回は羅道が邪魔をした。今だからこそわかる。あの時羅道は俺たちを助けたんじゃない。こいつを守ったんだ」

「行くぜえ!」

幹斗がガシャドクロに斬りかかる。

剣を上から振り下ろす。

ガシャドクロはそれを手のひらで受け止める。

「はっ!」

柳が霊刀で斬りつける。

ガシャドクロは軽くのけぞった。

更に幹斗が攻撃を叩き込む。

いい感じだ。

こちらが優勢を保てている。

このまま一気にとどめを刺す。

ガシャドクロはその時、口から灰炎の息をはいた。

「くっ!?」

「こなくそ!」

灰炎の息により二人は後退する。

幹斗の踏み込みが浅かった。

ガシャドクロはそれを見抜いた。

手で幹斗を握ろうとする。

「させません!」

詩穂が霊弓で幹斗を守る。

詩穂の射撃は性格にガシャドクロをうがった。

「詩穂ちゃん、サンキュー!」

「これくらい、任せてください!」

「詩穂、ナイスだ」

ガシャドクロが一気に前進してきた。

狙いは三人を分散させようとしているんだろう。

三人は分散して回避する。

ガシャドクロは詩穂を狙って灰炎を放った。

詩穂は焦らなかった。

詩穂は霊弓に霊気を集めると、回転する霊気の矢を射った。

霊光回転撃れいこうかいてんげき』である。

回転する霊気は灰炎とぶつかった。

なんと詩穂の射撃は灰炎をぶち抜いた。

ドカーンと霊気の矢がガシャドクロを貫く。

「ガアアアアアアアアアア!!」

ガシャドクロが叫ぶ。

「はっ! 銀光剣!」

光の霊気がガシャドクロを斬り裂く。

「アアアアアアアアア!?」

柳はさらにガシャドクロに追撃する。

ガシャドクロは弱くない。

この程度の攻撃ではすぐに再生してしまうだろう。

柳はガシャドクロを侮っていなかった。

「弱点の光属性でもこれだけ粘るか……」

柳はガシャドクロから距離を取った。

ガシャドクロの反撃を警戒してだ。

「幹斗、援護を頼む! その隙に俺がこいつにとどめを刺す!」

「わーったよ! 行くぜ! ウインドストーム!」

小型の竜巻を次々と幹斗は送る。

ガシャドクロは両腕でガードする。

柳はとどめの一撃を出すことにした。

「くらえ! 銀粒斬ぎんりゅうざん!」

銀色の粒子をまとった斬撃がガシャドクロを斬った。

ガシャドクロは叫び声も上げずに斬り殺された。

灰色の粒子が残って消える。

「よし! こいつは撃破だ!」

「さすがです、兄さん」

「柳、ナイス!」

「よくやった。これで二度とガシャドクロは復活できまい。さあ、先を急ごう」

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