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アヤナウチテ  ~妖討手~  作者: 野原 ヒロユキ
~金剛寺 羅道編~
16/21

澄空市

白薙会のメンバーはテレビで戦況を見守っていた。

「くそっ! 羅道の奴!」

幹斗が歯ぎしりした。

羅道は事実上、東日本への支配権を手にした。

これは白薙会ではどうにもならない。

「羅道の目的はこの国の『王』になることのようだ。これはもはや一退魔師企業が行えることを越えている。私たちには今のところ事態を見守ることしかできない」

奈雲は羅道との戦いは放棄してはいない。

白薙退魔師会は羅道軍とは戦えないだろうが、羅道個人となら話は別だ。羅道個人を討つ――それなら可能だ。

柳も傷が言えたので事務室でテレビを見ていた。

「これからいったいどうなるのでしょう、この国は?」

詩穂が不安を吐露する。

これは誰もが思っていたことだった。

皆は奈雲を見ていた。

柳もそうだ。

こういう時、人は指導者の顔を見る。

「羅道は王政を樹立すると言った。この国の体制をひっくり返すつもりだろう。そもそも、羅道の活動はすべて未来のビジョンを見据えてのものだった。羅道は究極的には日本全土を支配するつもりだ」

「それを、止める方法はあるのか?」

柳が奈雲に聞いた。

それは希望はあるかということだ。

「方法の問題はあるが、一つだけある」

「それは?」

「羅道を倒すことだ」

全員が息をのんだ。

奈雲が言っていることは理にかなっている。

羅道軍は羅道を頂点としたヒエラルキーを持つ組織だ。

だが、羅道軍には同時に、羅道がいなければ、羅道でなければ機能しえないという欠陥を持っていた。

「羅道を倒せば、羅道軍は瓦解する。私たちの今後の活動は、羅道を倒すことだ」

「さすが、奈雲さん。目の付け所が違いますわ」

貫之条が同意する。

「でも、羅道を倒すとして、どうやって羅道のもとに行くんですか?」

詩穂が疑念を述べる。

詩穂が言っているのは至極まっとうなことだ。

「奴がパトロポリスにいるところを狙う。こちらからパトロポリスに乗り込み、羅道を討つ。それができるのは柳、君だけだ」

全員の視線が柳に集まる。

柳はうなずく。

柳は白薙会のエースだ。

その柳にできないのなら、ほかの誰にもできないだろう。

「それでは誰が出撃しますか?」

舞葉が促す。

「私、柳、幹斗、詩穂この四人だ。貫之条と舞葉にはオフィスで待機していてもらいたい」

奈雲が人選をする。

この人選は文字通りの精鋭である。

「私の召喚獣・霊鳥フォイニクスなら退魔師をパトロポリスに運べる。問題は奴がパトロポリスに乗っていてくれるかだ。国の掌握が進むほど、羅道を抹殺するのは難しくなるだろう。今はまだ奴は地上が安全だとは思っていない。安全性が確保されるまでは、パトロポリスにいるだろう。そのあいだがチャンスだ。そこしかチャンスがない。事態はスピードが求められている。今すぐ行動を……!?」

奈雲が顔色を変えた。

何かに気づいたらしい。

奈雲以外の人物はそれに気づいていない。

「どうした?」

「どうやら、先を越されたようだ。敵が来た」



「ケケケケ! ここが白薙会のオフィスかあ? 退魔師どもは引きこもっているのか?」

カメレオン型の妖魔が白薙会を侮蔑する。

「おい、カメリオーネ? 先にここに来たのは俺だぞ?」

ペンギン型の妖魔が異論を出す。

「なら最初は私だ。私は空が飛べたからな」

ワシ型の妖魔が主張する。

その時どしんどしんと大きな音がした。

「俺様もやって来たぞい。何してんだおまえら?」

象型の妖魔はふんぞり返る。

「ケーケケケ! 俺の邪魔はするなよな?」

「それはこっちのセリフだぜ!」

彼らは羅道が白薙会に送った刺客であった。

彼らはオフィスを囲むように陣取ることにした。

時間は過去にさかのぼる。

羅道の前に四人の妖魔が集められた。

ペンギン型の妖魔ピングイーニ(PInguini)。

カメレオン型の妖魔カメリオーネ(Camelione)。

ワシ型の妖魔イリード(Iglido)。

象型の妖魔ナウマンド(Naumando)。

彼らは妖刃衆ようじんしゅうといって羅道配下の直属の妖魔だった。

羅道が抜擢するだけあって彼らは非常に強い。

並の退魔師ではかなわないだろう。

だが、彼らには大きな欠点があった。

彼らは協調性に乏しいのである。

互いに協力するなど、死んでもできないことだった。

羅道が玉座……パトロポリスの中のから話しかける。

「君たちに集まってもらったのはほかでもない。白薙会の問題に手を討つためだ」

「「「「ははっ、羅道様!」」」」

全員が首を垂れる。

羅道の権威は絶大だった。

「君たちにやってもらいたいのは白薙会の抹殺だ。白薙会のメンバーはすべて殺すように」

「「「「ははっ!!」」」」

「私はこの戦争で最大の脅威は白薙会だと思っている」

「一退魔師企業を、ですか?」

ピングイーニが疑問を呈する。

「フッ」

羅道は笑った。

それは羅道からすれば、白薙会の脅威を認識できなかったということだ。

彼らでも白薙会がどれほど日本人の希望かわかっていないらしい。

「確かに、白薙会は一企業にすぎない。だが、そのメンバーは一騎当千だ。彼らは強い。彼らを侮るな。それではおまえたちが返り討ちに会うぞ?」

「失礼ですが、羅道様、一退魔師企業を過大評価しておられるのですか?」

イリードが反論する。

「ぐははははははは! 要は危険な退魔師をぶっ殺せばいいんだろ?」

「ケケケケケ! いたぶってもよろしいでしょうか?」

「戦い方は君たちに任せる。それぞれ自由に戦うがいい。だが、目的を忘れるな? いいかね? 白薙会は最強の退魔師集団なのだから」

羅道はここまで言わねばならなかった。

こいつらは実力はあるのだが、退魔師を過小評価する。

まったく、困ったものだ。

油断をすれば、倒されうることも分からないとは。

だが、逆のことを言えばその程度の連中だということだ。

「それでは出撃を命じる。白薙会の首を取ってこい」

「「「「ははっ!」」」」


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