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「寝間着まで用意していただいて、ごめんなさいね」


 夕食を終えて部屋に戻ると、整えられた寝具と清潔な衣類が目に入った。

 食事の前に、リディアさんが他の使用人に用意を言付けていたらしい。彼女の気配りの細やかさには、本当に感心させられる。


「ありがとう、リディアさん」

「……リア、と」


 感謝を伝えると、彼女は少し緊張した面持ちで、もじもじと指先を弄びながら申し出た。


「よろしかったら、リアと呼んでください」

「えっ?」

「こう申しては失礼かもしれませんが、わたくし、年の近い友人が少ないものですから、クロエ様が来てくださって、とっても嬉しいんです」

「まあ……」


 リアの真っ直ぐな瞳に、純粋な気持ちが伝わってくる。


「でしたら、わたしのこともどうぞクロエと呼んでください」

「よろしいのですか?」


 驚いたように、リディアさん──リアがわたしを見つめた。

 彼女の戸惑いが可愛らしくて、わたしは思わず笑みをこぼした。


「もちろんです。中身はお婆さんですけど、仲良くしてくださいね」

「クロエ……!」


 途端にリアは、ぱっとわたしに飛びついてきた。

 彼女の抱きつき癖には慣れてきたところだ。しっかりと抱きとめながら、わざと顔をしかめてみせる。


「急に抱きついたら危ないですよ、リア」

「えへへ、ごめんなさい」


 リアの甘えるような表情は、年相応の可愛らしさに満ちていた。

 頭を撫でたい気持ちにかられたけれど、子供扱いをしたら婆臭いと怒られてしまうかもしれない、と思いとどまる。


「今日はゆっくり休んでくださいね。また明日、たくさんお話しいたしましょう。おやすみなさいませ」


 リアは軽やかな足取りで部屋を出て行った。


「まさか曾孫に近い年齢の友達ができるとは思わなかったわ」


 ぽつりと呟いてから、ハッと顔を上げる。


「わたしは十五歳、わたしは十五歳……」


 自分に言い聞かせるように何度か繰り返していると、なんだか可笑しくなってきた。

 こんなにも意識しないといけない時点で、やっぱりわたしは『元お婆さん』なのである。


「──さて、どうしましょうねぇ」


 わたしは小さく伸びをして、ベッドの縁に腰かけた。

 休むといっても、先程たくさん寝てしまったから眠くはない。

 魔界の夜は思ったよりも静寂に満ちていて、城内もしんと静まり返っている。


「少しお散歩でもしてみようかしら」


 わたしはそっと立ち上がると、廊下へと足を踏み出した。

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