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第0話
「……やっちまったな、今日は。」
夜道をとぼとぼ歩きながら、自分の失態を思い返して頭を抱えた。営業成績の目標を達成できず、部長にきつく叱られ、意気消沈する僕。けど明日の予定を見て、少しだけ胸が温かくなる。
明日は彼女の生誕祭だ。売れないとわかっていても、僕にとって彼女、西宮津香紗は誰よりも輝いて見える。毎年欠かさずに生誕祭に参加してきたけれど、今年は特別な気がしてならない。彼女がアイドルから女優へと転身してもう10年目。いまだに大きな役には恵まれず苦しんでいる彼女を、自分の応援が支えているかもしれない、そんな淡い期待が僕を支えていた。
明日は、彼女が笑顔でいられるように、精一杯の声援を贈ろう。