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 ゆっくりと食事をした記憶が思い出せない程に過酷な環境にい続けたタケジなので、体と心が癒え始めている状況であれば味わう喜びも思い出す事が出来たらしく、肉を美味しく食べながら再び町を歩いている。


「この肉、日本の感覚だと一本百円とすると大銅貨が百円と考えて良さそうだな。その十倍が小銀貨、更に十倍が大銀貨……と続くわけだ。それなら神貨がないのも頷けるな。でも、これだけでも十分だ。本当にありがとうございます、先輩()


 正確に確認したわけではないが袋の中に小金貨と大金貨が数枚あったのは間違いないので、日本円にすると建屋の他に数百万円以上を与えられている事になる。


 手紙の内容や現実的にどう考えても地球ではない場所にいる事から、あのフロアで唯一同じ環境にいた沢田が神である事は疑っていないので、新たに命を与えて全く違う環境に送り相当なお金まで準備してくれた事にお礼を伝えている。


「へ~、飲み屋は昼でも全部開いているんだ。そうだ!この国の法律も勉強しておかないと、知らずに違反して投獄なんてシャレにならないぞ」


 いくら資産があっても投獄されては目も当てられないので、今は何も知らないこの世界の常識を少しでも早く得るべきだと考えた結果、公的機関に就職する事で嫌でも知識は入ってくるのではないかと考えた。


 そもそもそのような機関があるのか、人員を募集しているのか、その要件を満たす事が出来るのか、全てが不明の為にできる事は何なのかを考えた結果、過去……と言っても数か月前なのだが、嫌々上司に連れて行かれた飲み会の事を思い出した。


 曰く、酒の席は本音が出るし仲良くなりたければ驕る事で味方につける事も出来る、非常に有意義な場所だ!と熱弁していた事を思い出す。


 お酒が好きな顧客であればその通りと言えなくもないが、実際には強制参加である上に社内の集まりでまごう事なき上司の独演会だったと思いつつも、確かに昼間から酒を飲んでいる人に対して奢ってやれば、多少の情報は得られるだろうと思い店に入る。


 そもそも昼から酒を飲める店が多数営業しているので、この世界ではそれが常識なのだろうと柔軟な考えで行動しているタケジ。


「こんにちは」


 大半が未だタケジが慣れる事の出来ない銃刀法違反と思われる品々を持っているので、話しかけるにしてもガラの悪そうな人物は出来るだけ避けたい気持ちから比較的優しそうに見える人物を選んでいた。


「何かしら?」


 言葉から分かる通り優しそうに見える女性だけの集団の席に向かっていたタケジは、予想通りに厳しい反応ではなかった事に安堵しているが、突然席に座る事はない。


 この世界の常識が分からないので、見た目優しそうな女性であったとしても対応を間違って刃物で攻撃されてしまえば折角の二度目の人生が瞬間で終了してしまう事もあり、食料を購入した時とは異なって必要以上に慎重に行動すべきだと考えている。


「えっと、俺はタケジと言います。突然申し訳ありません。冒険者として登録したてなものですから、諸先輩方に色々教えて頂ければと思い声をかけさせていただきました。宜しければ、一杯ご馳走させて頂けませんか?」


「お!分かっているじゃん!アタシは良いよ。アンタらは?」


「「良いわね」」


 どうやら酒を奢るのは正解だったようで、驕ると言った瞬間に最も近くにいた女性が笑顔で椅子を勧めてくれていた。


「ありがとうございます」


「で、何が聞きたいの?」


 真っ青な髪の毛の女性なので、日本では黒髪、染めている人でも茶色や金髪しか見ていなかった事から、色に慣れていないタケジは目が少々チカチカしてしまうのを必死で抑えつつ、公的機関についての話をする。


「えっと、冒険者を纏める機関がありますよね?」


「え?(タケジ)も冒険者登録したんでしょ?だったらギルド(・・・)に行ったよね?」


 冒険者の登録を行う場所が正に公的機関なので、何を言っているのかと言わんばかりの表情になっている青髪の女性。


 冷静に考えれば確かに女性の言っている通りだと思い、焦りを見せては怪しまれるばかりか最悪は……と、一瞬彼女達の武器に視線を移した時に緊張してしまったのだが、女性三人は驕りになっている酒が丁度運ばれてきた事から、タケジの言動を怪しむような事は一切なかった。


「そ、そうですね。そうでした。登録したばかりで少し緊張しているのかもしれません!」


 ありそうな言い訳をしつつ、仕切り直しだとばかりに公的機関の名称がギルドと理解したのでもう一つ質問をする。


「俺の様な駆け出しがギルドで働く事は出来ますか?」


 この世界の常識が分からない以上は、この言葉に対する女性三人の反応によってはこの場から逃走する事も視野に入れなくてはならないと、変化を読み取る為に慎重に三人を見ている。


「そっか。(タケジ)は優しそうに見えるしね。それだと同業(冒険者)には舐められるし、虫も殺さないように見えるから職員の方があっているかもね」


 タケジの過剰とも言える警戒は不要だったようで、青髪の女性はタケジが冒険者として活動するには不向であると自ら理解したのだと勝手に解釈し、職員になるための方法を教えてくれた。


「でね?私達は体が資本だけど、職員は結構頭を使うんだよ?例えば計算能力も必須だし、魔獣の種類や状態によって適正な買取金額の査定もしなくちゃならないし、冒険者程じゃないにしても体力も必要だよ?」


 その後も簡単な説明は続き、普通に受付にお願いすれば受験できることを知ったタケジはお礼を伝えると席を立ち、教えてもらったギルドの場所に向かって移動する。


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