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 本来死亡していた武治を完全に修復し、年齢も下げた為に相当な負荷がかかってしまったのか……人として生活する罰を受けていた神である沢田が異世界に転送した武治は、直に目が覚めなかった。


 安全に配慮された人気の無い建屋内部で目を覚ましたのは、もう戻れない日本で女性社員三人が有休消化に入った頃だった。


「ん……そうだ、早く仕事を終わらせない……と?」


 最後の記憶は本当に少しだけ休憩をとった事だったので、意識が戻ると再び仕様変更の仕事を行わなくてはならないと自分のパソコンを探すのだが、既に異世界の建屋の中にいるので、何が起きたのか理解できずに部屋の中をきょろきょろと見回している。


 最もパソコンが置かれていそうな机を直ぐに見つけるのだが、オフィスとは異なって本当に木で組み立てた机と椅子があるだけで、何時ここに来たのか理解できないままベッドから起き上がり机の方に移動する。


「手紙?」


 机の上には封筒に<武治君へ>と書かれた手紙が置いてあり、椅子に座ってその手紙を読み進める。


「え?」


 初めの方は武治が如何に頑張って仕事をしていたか、や、自分がもっと助けられれば良かったと比較的理解できる内容の記載があったのだが、やがて話が進むにつれて沢田の正体が罰を受けていた神である事、この場はオフィスで話していた異世界であり、武治の死後回復の上で送還したので、今後はここで楽しく生きて欲しい事が書かれていた。


 慌てて窓の近くに向かって外を見ると、確かに少し離れた位置に日本では見る事の出来ない巨大な城が存在しているし、見える範囲で歩いている人の一部は日本で禁止されている銃刀法に露骨に抵触する品々を平然と持ち歩いている。


 流石に銃はないのだが、槍や剣、巨大な盾や何に使うのか良く分からない武器や杖を持っている人も見える。


「凄いな」


 思わず口にしてしまったのは頭上に耳が生えている所謂獣人族と呼ばれている人々、どう見ても鱗で体が覆われている二足歩行の存在、カラフルな髪の色の人々によって、間違いなく異世界に来ていると理解できる状況が明確に視界に飛び込んできたからだ。


 世界が変わる事で過酷な仕事をしなくても良いと理解するのも早く、再び手紙を読み進める武治。


「そっか。それはそうだよな」


 そこには神であっても出来る事は限られた状態で異世界に送ったので、体は完全に癒してはいるが世界を渡った際に何らかの力を授かった可能性は否定できないながらも、無敵に成れるような能力を付与する事は出来ていない事が書かれていた。


「言葉は……」


 更に読み進めると、言語については理解できるし今いる建屋についてはこの世界で武治の物になっている為、このまま住むも良し、売って何らかの活動資金にするも良し、と嬉しい記述があった。


「そっか。先輩(沢田)、ありがとうございます」


 手紙があった机の横には小さい袋、その横には見た事も無い様な長方形のカードが置いてあり、何故か読めるタケジの名前とFの記載があった。


 手紙を最後まで読むと全て理解でき、沢田が出来る事として多少の金銭を袋に準備済みであり、一般的に商才や手元資金がない大多数の人々がこの世界で稼ぐために就く職業である冒険者の登録まで済んで、その証明書が目の前のカードである事、レベルは登録したての最低ランクのFだと理解する。


「一先ず何をするにも現状把握だよな。お客さんとの打ち合わせも、向こうが望む物を知る為に現状把握を行ったからなぁ」


 日本と異なって建屋の登記がどうなっているのか等不安な要素もあるのだが、何も分からない状況で慌ててもどうしようもないので、一先ず周辺を散策する為に建屋から出る武治。


「おぉ~」


 沢田()のおかげで体は完全に癒えたばかりか、かなり若返っているので視力も回復し、初めて見る景色を楽しみながら歩いている。


 最悪の環境に居続けて慣れたつもりになっていたのだが、気が付かない内に体と心は蝕まれており、体が回復した状態で今のところ平和な町中を散策する事で、あり得ない程に楽しく感じて心も癒され始めている武治。


 沢田の手紙にもあったが、恐らく異なる世界を渡った事によって回復力が増加した為だろうか……


「とりあえず、腹が減っては戦が出来ぬ!」


 屋台が多数出ており、所謂焼き鳥の様な食べ物を販売している店から嗅いだことのない良い匂いがしてきたので、急にお腹が減ったと感じた武治改めタケジ。


 袋の中身には金銀銅で大きさが異なる貨幣があったので、全て持ち出して盗まれては目も当てられないと、日本の知識から価値が低そうな小銅貨と大銅貨だけを数枚持ち歩き、他は建屋の天井裏に隠していた。


 商品を購入する為に出店に向かい、食料購入のついでに貨幣についての情報も仕入れようと、過去に嫌々ながらも顧客と話す事で得た話術で怪しまれる事も無くある程度の知識を得る事に成功していた。


 貨幣の種類は大きく分けると4種類で、更にその貨幣は大小二種類に分かれており、価値の順に、


 神貨>金貨>銀貨>銅貨 で、それぞれの貨幣に大小がある為に8種類の貨幣が流通している事を知る。


「流石に先輩()も神貨は準備できなかったのだな。でも、建屋もあるし有難い!」


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