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40話 悪夢の再来

お知らせ。

こちらのお話、39話と同じものを投稿しておりました。

本日6月10日に正しい話に直しました。以前に読んでいただいた方申し訳ありませんでした。

「まさかラキシスがアリエルちゃんの夢に関係してるとは思わなかったよ」

 混乱する頭でぐるぐる考えていると「ごめんね、気づかなくて」とサスキ様があやまってくれる。

 別にサスキ様にあやまってもらう筋合いはないのだけれど……。


「なんでそんなに楽しそうなんですか?」

 ちっともすまなそうじゃない顔に、なんだか逆にもやもやしてしまう。


「ふふ、わかる?」

「思いっきり笑顔ですけど」

「あれ、そう? だって子供がもがく……頑張る姿って微笑ましくない?」

 今、もがくって言いましたよね。もしかして幼児をいたぶって興奮する変態?


「アリエルちゃん、今なんだか失礼なこと考えたでしょ」

 ぶんぶんと頭を振って否定しておく。


「長く生きていると楽しみが減ってくるんだよ。魔法もきわめちゃったし、権力もある。知らないこともほとんどないし、これから先ずっと困難がない人生っていうのも退屈なんだ」

 冗談めかしているが、なんだかそれは本音のような気がした。


「それは、贅沢な悩みですね」

「だからね、暇つぶし……じゃなくて。退屈しのぎ……じゃなくて。美少年を愛でる……じゃなくて。あれ?」

「もういいです」

 絶対にからかわれてるし。


「違う、違う。誤解だから。えっと、そう。少年が困難と闘って成長するのをみるのは、なんか自分のことのようにわくわくするって言うの?」

 良いこと言ったね。って顔してるけど、そもそもわくわくするのおかしいですから。


「悪い人ではなさそうっていうのは分かりました」

 退屈しのぎに巻き込まれるのは嫌だけど、偉大な魔術師と仲良くするのは悪いことじゃないと思うことにしよう。


「もちろん、私はアリエルちゃんのファンだよ。君はすごく面白そうだ」

「そこは普通味方だよって言う所じゃないですか?」

 それがファンって、なんだか手の上で転がされている気がする。


「だんだん調子が出てきたみたいだね。心配しなくても私もビエラも君のいやがることはしないから」

 その言葉に私はちらりと、ビエラに視線を移した。

 目が合うと、にこりと微笑み返される。

 隙のない笑顔は、少なくとも彼はサスキ様とは同じ気持ちではないような気がした。


「ところで、ラキシスは君にどんな悪さをするんだい?」

 うっ。油断していた。

 そのことはできるだけ思い出したくない。


「……」

「まあ、無理に聞き出そうとはしないよ。物語は謎が多い方が楽しいし、じっくり鑑賞させてもらうよ」

「鑑賞じゃなくて、味方になって助けてくれると嬉しいんですが」

「もちろん、助けるよ。女の子には優しいんだ。でも、それにはアリエルちゃんがすべて話してくれることが条件だよ。それは嫌なんだろ」

「……」

「安心していいよ。物語を盛り上げる手伝いは大いにするし、私は主人公の応援は惜しまない」

 それって……。

「私は主人公じゃないですが」

「何言ってるの? 私の主人公は君だよ」

 そんなキラキラな顔で甘い言葉をささやかないで欲しい。


「もしかして、私、口説かれていますか?」

 初日はあれほど冷たかったのに、いったいどういう風の吹き回しだろう。


「それじゃあ私が変態みたいじゃないか」

「違うんですか?」

 思わず聞き返してしまい、私は慌てて両手で口を押さえた。


「それは心外だな」

 がっくりと肩と落とし、サスキ様が頬に手を当ててため息をついた。


「なんだか、私のイメージが地に落ちているようなので、挽回のために一つだけ約束しよう」

 急に真面目な顔になり、声をひそめ私にイケメンの顔を近づけてくる。


「アリエルちゃんの《《夢見》》通りには絶対にしないって約束しよう」

「ユーリに聞いたんですか?」

 夢見なんて絶対に違うって言ったのに。


「まあ、責めないであげてよ。アリエルちゃん、暴れているとき『私は殺される』って口走っちゃったんだろ。それを聞いてユーリ君すごく動揺してね」

 そうよね。ユーリは夢見のこと信じているようだったもの。


「あんなに賢いユーリ君が、まるでそれが本当に起こるって信じているみたいで、なんだか尋常でない雰囲気だったからかまをかけてみたんだ」

 鎌をかけたんだ。


「にわかには信じられなかったけれど、面白そうだからユーリ君には力を貸すって約束したよ」

「見返りは何ですか?」

「やだなぁ、アリエルちゃん。私のこと分かってきたね。ユーリ君には君の夢見が現実にならないようにする代わりに、彼が公爵家の当主になったら私と《《友人》》になってくれるようにお願いしたよ」

 なんだかすごく俗世な願いだ。


「ほんとに、助けてくれるんですか?」

「ああ、少しは安心できたかい?」

「どんな夢だったか聞かないのにいいんですか?」

「言っただろう。困難のない人生は退屈だって。夢見の内容(ネタバレ)を聞いてしまったら、物語が面白くないだろ。だから、もうダメだ夢見が現実になるって寸前に助けてあげるよ」

 ん? それって……どうなの?

 何故か、感謝できない。


「そう、深く考えない。私は才能のある子は大好きだし、育てるのもろうを惜しまない。大志を抱けば惜しみなく手助けするよ」

 あははは。と大口を開けて本当に楽しそうにサスキ様が笑うのをみて、「もういいや、深く考えるのはよそう」と短くため息をついた。


 最後の最後に助けてくれるって言うんだから信じよう。


「分かりました、全力で頑張ります」

「うん」


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