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34話 運命の出会いじゃないです選択ミスです

「フッ、アハハハハハ。見た目と違って凄いお転婆な令嬢だね。いいですよ。魔力の解放に手を貸しましょう。ですが、私にできるのはそこまでです。魔力が使えるようになるかは令嬢次第。血みどろになる覚悟で練習しなくては、君の魔力を使いこなすのは難しい」


 イケメン魔術師は、何がおかしいのか椅子に深く座り直しお腹を抱えて笑った。

 なんて失礼な!


 でもさっきまでの壁がなくなった気がする。

 これって一歩前進よね。


「魔術師様。本当に魔力封じを解除してくれるんですか?」

「サスキと呼んでください。簡単にはいかないです。それでもいいなら」

 どこが気に入られたのかわからないけれど、取り合えずスタートラインには立てたようだ。


「もちろんです」

「平均的な魔力量なら、魔法陣を描けるようになれば済むが、並外れた魔力を制御するのには本人の強い意志が必要なんだ。これは教えられてできる事じゃない。自分では気づいてないかもしれないが、魔力は気持ちに引きずられる。死んでもやりきる覚悟をしてもらう」


「お断りします。死んでもやる覚悟なんて姉さまに必要ありません」

 過保護全開にユーリが堂々と言いはなった。


「ユーリ……」



 *




「つまり、私の魔法封じをこの変な人形に移すってことでいいですか?」

 サスキ様の態度が気に入らないと拗ねていたユーリをなだめ、私たちは今、魔道具があちこちに無造作に置かれている部屋に移動した。


「変かな? 可愛いと思うけど、ほらこのピンクの髪と目なんかそっくりだよね」

 テーブルには、見るからにありあわせで作られたとおぼしき手作りの人形が置かれていた。

 確かに、ルビーのような髪の色と薄ピンクの瞳はけっこう近い色合いだと思う。けれど、そこしか似ていない気がする。

 私ってこんなにたれ目じゃないよね。


「全然似ていません。姉さまの人形を作らせるなら専属の職人に頼まなくては、間違ってもこんなぼろなんかを代わりにするわけにはいきません」

 3日前、絶対に連れて帰ると駄々をこねたユーリをやっとのことで説得したのだ。今は四六時中見張られて、やることなすことしつこく文句を言ってくる。


「ユーリ君、これはおとりだから。似てる似てないが問題じゃなくてアリエルちゃんの髪を使ったことに意味があるから」

「え? まさかこの髪、姉さまの?」

 壁に立ち、私達のことを横目で監視していたユーリが慌てて人形を取り確認する。

「貴様、姉さまに傷をつけたな……許さん」

 またしても剣を抜かんばかりのユーリを取り押さえて、「ユーリこれでも、サスキ様はご老体だからおじいさまのたわごとだと思って、ね。それにこれ以上じゃますると、口きかないわよ」と脅す。

 まったく。困ったものだ。


「それで今すぐ、魔法陣をこの人形に移していただけるのですか?」

「今すぐは無理だな。この魔法陣の原動力は魔力をかけた術者ではなく、かけられた本人から吸い取って維持されているんだよ」

 なんじゃそりゃ、ヒルみたいなやつね。


「まずはこの人形に魔法陣を維持する君の魔力を付与ふよする」


「どうやって? 私自分では全く魔力をコントロールできませんけど」

 そんなことができるくらいなら、少しづつでも魔法が使えるはずである。


「わかってるよ。大まかな手順を言うと。毎日少しづつ私が君から魔力を吸い取ってそれをこの人形に注いでいき、ある程度いっぱいになったら、君の魔法陣をこの人形に転送する」


「なんだかそれほど大変そうでなくてよかった」

 思わず声に出してしまって、あわてて口を押える。


「これでも私は偉大な魔術師だからね」

 濃い藍色の瞳がきらめいて、ウインクされる。

 この見た目で200歳越えって詐欺よね。

 一瞬見とれるも、ユーリに目をふさがれてしまう。


「魔術師なんか見つめたら、呪いにかかりますよ」

 呪いって何?

 すでにユーリのことはあきらめたのか、サスキ様もスルーしてくれる。


「ですがここからが、大変なんだ。まず、魔力封じの魔法陣を転送した途端、君の魔力が暴走します。そうならないために、弟子のビエラが魔法陣を転送させるのと同時に私がアリエルちゃんに新たに魔法陣を施します」

「それはお断りいたします」

 ユーリが即座に割って入る。


「ユーリ、いいかげんにして、さっきから全然話が進まないじゃない」

「姉さま」

 威圧感たっぷりの声音で、ユーリは私の名前を呼んだ。

 ここ最近甘々なユーリとは別人のような、まじめな態度に一瞬ゲームの中の冷たい彼を思い出してしまう。


「僕たちは、元王宮魔導士筆頭でこの国最高の魔術師であるサスキ様に魔法を解除してもらうために来たんです。こんな訳の分からない男に、魔法を施されに来たんじゃありません。サスキ様一人でできないと言うのなら、お断りします」

 絶対に譲らないという決意なのが伝わってきて、私は困ったようにサスキ様を見た。

 たしかに、この軽そうなビエラという人間は信用できるかわからない。


「でも、ビエラ様はサスキ様の弟子なんですよね」

「彼は人間じゃない」

 間髪入れずにユーリがすごんでくる。


 は? 人間じゃない?


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