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33話 魔術師サスキはイケメンです

 少年のあとを1時間ほどついて行くと、山頂に近いにもかかわらず、木々が途切れ開けた場所にたどり着いた。

 数件の建物が並び、そのうちの一軒は豪華さはないが貴族の別荘といっていいくらいの大きさがある。


 勝手に丸太小屋のような質素な家を想像していたので、ちょっと意外だ。

 案内された応接室は、埃一つなく家具だけ見れば相当に古いものだったがピカピカに磨き上げられ、そこには見知った有力貴族の家紋が入った書簡が幾つも山積みにされていた。

 ここが引退した魔術師が余生を送っているだけの場所ではないということだ。


 お父様の話だと結構変わり者のようなので、会う前に色々聞きたいことがあったのに、あれからずっとユーリと少年が険悪な状態で、名前すら聞き出せていない。


「お待たせしたね。想像以上に速い到着で驚いたよ」

 気難しそうな老人をイメージしていたけれどこちらも外れたようで、目の前に現れた人物はお父様より少し年下くらいの、威圧感もなくどちらかといえば色気だだ洩れのちょいワル魔術師といった感じの人物だった。


 うそでしょ! 

 ゲームではマギの師匠がいるっていうくらいの軽い説明でほとんど背景と同じくらい影の薄い人物なのに、何このイケメン。

 隠し攻略対象といっていいくらいのクオリティーじゃない。

 呆然と見つめてしまう私の脇腹をユーリが不機嫌そうにつついてきて、あわてて挨拶するために立ち上がった。


「この度はお忙しい所お時間いただきありがとうございます。お会いできてうれしいです。私はアリエル。これは弟のユーリです」

 小さな時から叩き込まれた見本のように綺麗なお辞儀をする。


「私も会えてうれしいよ。まさかこんな面白そうな魂にまた出会えるとはね。長く生きて来てもう面白いことはないだろうと思っていたけれど、まだまだ世の中不思議なことがあるらしい」

 面白そうな魂というのは前世のことだろうか?

 それとも魔力封じのことだろうか?


「エルドラ公爵からは話は聞いています。魔力封じをマギにないしょで解除して欲しいとか」

「はい。ご存じかとは思いますがエルドラ家は王家に忠誠を誓っておりますが、弟も幼少期魔力封じされるほど魔力量が多く、ここ数年では財力も私兵も王家に匹敵するほどで警戒されております」

 その上私まで魔力封じを解くことは王家にとって好ましくない。


「ですが、私はどうしても自分の魔力を使えるようになりたいんです。どうか、お知恵をお貸しください」

 こんな小娘の話をどこまで真剣に聞いてくれるかわからなかったが、私は必死に頼んだ。


「公爵令嬢なら別に魔力がなくても、十分じゃないですか? って言うか普通の結婚をするのに障害にしかならないし、開放して終わりじゃないんだよ」

 イケメンのツンな態度は想像以上にダメージがある。

 簡単には承知してもらえないと思っていたけれど、私の話を聞く気がないのが伝わってくる。

 どうやら、うわべだけ取り繕っても相手にしてもらえそうもない。


「魔術師様。封じられている魔力は私の一部です。気づかない振りをしていても、いつも何かが足りないと感じるんです。欠けたままじゃ絶対に幸せにはなれません。お願いです。力を使えるようにしてください」


「なるほど、君の言う事はもっともだ。でも、お嬢様には魔法の訓練は難しいと思うよ。人間欲張っては破滅するだけだ。君は十分今でも幸せに見える。これ以上は欲張りというものだ。おとなしく家に帰って、婚約者を探した方がいい」

 イケメン魔術師の関心はもう私にはないようで「じゃあ、やることがあるんで」と椅子から立ち上がろうと肘掛けに手をかけた。


 カチンと頭の隅で音がした。

「なにそれ、女は黙って男に従っていればいいって、いつの時代の考えよ。これは私の力でしょ。それなのになぜ誰かに封じられなければならないの? 誰かの駒になって権力に利用されたりするのはまっぴら。私の力は私のものよ、絶対に魔法を使えるようになってやるから!」

 最後にイケメンだからって偉そうにしてんな。といってやりたかったが、慌てて私の口をふさぐユーリにじゃまされる。


「姉さま。落ち着いて」

 耳元でユーリが呆れたように囁くが「いくら魔力が強くたって人徳とは関係ないのね」ともごもごと言ってやった。

 ふん、もう手遅れなんだから言いたいことは言わないと。


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