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31話 魔力封じを解除する

 悪役令嬢であることを忘れてしまいそうなくらい平和な毎日が続いた。


 このまま何事もなく過ぎてほしい。

 まあ、王子様とは拗れちゃってるけど、その代わり聖女であるヒロインとはお友達になれた。

 公爵家が没落することがない様にできれば王族とは関わり合いにならないでおこう。

 決意を新たに私はお父様の執務室に向かった。


「お父様およびですか?」

「座ってお茶にしながら話そう」

 執事のパウロがお茶を淹れてくれる。あらかじめ私が来ることがわかっていたのか、大好きないちごタルトの他にもいくつか小さめのケーキが用意されていて、遠慮なく口に頬張った。


おひしひ(おいしい)

「そうか、それはよかったよ。アリエル、以前に魔力封じの魔法陣を解除してほしいと言っていただろ」

「はい、お父様。見つかったのですか」

 なんだかんだ、これをほどこした魔術師はこの国でもトップクラスの宮廷魔術師だ、本人に内密に解除するにはそれなりに時間がかかると思っていたが、予想外に早く見つかったようだ。


「ああ、心当たりはあったんだけど、なかなか良い返事をもらえなくてね。先日やっと了承をもらったんだ」

 さすがお父様である。


「どちらの方ですか? お話だけでも聞いてみたいのでお会いできればうれしいです」

「そうだと思ってね。近いうち会えないか調整しているところだ。ただ……かなり変わり者で礼儀知らずだから一人で合わせるにはちょっと心配だな」

「一人でですか? お父様と一緒ではなくて」

 まだ社交界デビューもしていない令嬢が、親しくもない貴族の家を訪ねることはない。相手は平民なのだろうか?


「私も一緒について行きたかったんだが、あそこに入る許可がもらえなくてね。せめてユーリが一緒でいいか今掛け合っているところだよ」

『あそこ』とか『許可』とかその人物はいったい何処にいるんだろう。


 *


「僕は絶対に反対です。護衛も付けてはいけないなんて、怪し過ぎです」

 お父様と二人で話をしてから数日後、今度はユーリも一緒に呼ばれお父様から詳細な話を聞いていると、不機嫌マックスの顔でユーリが噛みついてくる。


「だいたい、あと数年すれば学院に入学です。そうすれば僕のようにマギ様から直接魔法を開放できるように魔力封じを弱めてもらえばいいでしょ。そんなわけもわからない人間に任せて何かあったらどうするんです」

 心配でたまらないという風に後ろから抱きしめられて、私はユーリにわからないようにため息をついた。


 ここ最近ますます弟が過保護で困ってしまう。


「アリエルの場合、お前と違って小さい時から訓練をしてきたわけじゃないから、生徒の多い学院では多分魔力解放はされないだろうな。特別生として魔法の実技が免除される対応だろう」

 貴族の子供は魔力があるとわかった時点で、先生をつけてある程度まで魔法が使えるようになって入学する。

 魔力制御ができないなど論外だ。


「ユーリ、わけのわからない人じゃないわよ。マギ様の師匠だって言ってたでしょ。今は引退してひっそりと城壁の外で暮らしてらっしゃるから、沢山で押しかけては迷惑だし、暮らしている場所も特定されるのはお嫌なんですって。だから今回、私たち二人なら受け入れてくれるってお返事が来たのよ」

「姉さま、それおかしいですよね。住まいを特定されたくなければ、あちらから公爵家へ来ればいいだけじゃないですか」

 そもそも姉さまを城壁外に連れ出したくない、とか姉さまは僕が守るからそもそも魔術なんて必要ないとか、ぶつぶつぶつ……ユーリの反対はまだまだ続きそうだった。


「ユーリ、私はあなたがいれば何も心配していないわ。剣の腕もピカイチ、魔法の腕もピカイチなんでしょ」

 ね、と瞳を潤ませてお願いポーズをすれば、ユーリが断るはずはなかった。


「うー。姉さま。そんなふうに頼んだら僕が断れないと思っているんですか?」

 うん、そうだよ。と心の中で思ったが、「どうしてもだめ?」とさらに瞳を潤ませて駄目押しをした。


「はぁー。わかりましたよ。でも、危険だと思ったら途中でも引き返しますから」

 盛大にため息をつくと、ユーリはやれやれと両手のひらを上げた。

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