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29話 ヒロインと友達になる 2

「アリィはどうしてこの世界に転生したと思う?」

「えっと、死ぬ前にやっていたゲームがこれだからかな」

「やっぱりそう思うよね、でも私はほとんどこのゲームはやってなかったの。どちらかというと続編の設定のテンプレ乙女ーゲームに夢中だった」

「そうなの?」

 続編はテンプレ乙ゲーなのか。

 まあ、制作もあれじゃあ駄目だって考え直したんだな。


「転生前は病気でずっと入院生活だったし、バトルものや冒険ものはしんどくて。だからどうしてかなって不思議だったんだ」

 いやいや、ここって冒険者でもバトルものでもないけど。

 マリーの話だと、乙女ゲームらしくないとかなり批判があり、続編はテンプレから外れないゲームだったらしい。


「たぶん、死ぬ前にずっと病気を治したいって思ってたから、聖女なんかに転生したんじゃないかな」

「そうなんだ」

「ほんと、なんかおとぎ話みたいですごいよね」

 前世を思い出したからなのか、急にマリーの元気がなくなる。


「人を治すのが嫌とかじゃないよ。聖女になったらむしろ政治の道具に使われるだけで、一般市民なんか治すことはなくなるみたい」

「何か想像つく」

「神殿では治療できないって言われた人をこっそり治してあげるくらいがいいかな。せっかく健康な身体で転生できたんだから、前世でできなかった結婚とか子育てをしたいの」

「それは素敵な夢だね。聖女になんかなったら人間らしく生きられないかも」

 もともとこの世界で生まれ育っていれば、聖女になることはこの上ない名誉なんだろうけど、現代に生まれた人間にとって、この世界の価値観は結構抵抗あるものも多い。



「いっそのこと逆ハー目指して、最後誰も選ばないってのはどう?」

 重い空気を軽くしようと、ちょっとあほな提案をしてみる。


「そんなの目指さないに決まってるでしょ。現実を見てよ。逆ハーなんて何一ついいこと無いでしょ。疲れるだっけよ。乙女ゲームのシナリオ中はいいよ、でもゲームが終了したらドロドロの関係に未来なんかないし。誰かが刺されて終わりよ。下手したら生まれた子供は誰の子かわからないなんて恐怖でしかない」

 マリーは大げさに頬っぺたを膨らませて、口を尖らせた。本気で怒っていないのはわかるけど、これは失言だったな。


「確かに」

 それは笑えない。


「アリィは誰を攻略したいの?」

「私は別に攻略とか考えてないよ。そもそも悪役令嬢だし。誰にも断罪されないように今から仲良くするのと、最後勇者と結婚して腹ボテエンドだけは避けたいと思っている」

 できれば攻略対象以外に好きな人を見つけて、ひっそりと幸せな結婚をしたい。


「へー、勇者様と腹ボテエンドは阻止したいんだぁ」

「当たり前じゃない」

「そう? 勇者様って結構優良物件じゃない?」

「どこが」

「だって、結局この世界で、魔王より強いし顔もこのみだし、領地も魔界の瘴気で汚染されてるから、領地経営もしなくていいし、報奨金でのんびり暮らせそうじゃん。スローライフだよ」

「絶対にありえないから」

 彼は不幸な設定が目白押めじろおし、人を信用できず誰にも心を開かないで生きていくんだから。

 勇者をいやすことができるのはヒロインしかいない。


「まあねぇ、アリィは勇者様から恨まれちゃってるから、それを挽回するの難しいかも。しかも、勇者様が恋するのは私だし」


「え? 私、すでに勇者から恨まれてるの?」

「あれ、知らなかったの。あっそうか、まあゲームはじまる前だし、サラっと設定に書いてあっただけだけど、勇者が学院に入学するまで奴隷としてつかまっていたのがアリィの領地だよ」

 しかも性奴隷。


「やっぱり、うちの領地にいたの?」

「あれ、もしかして逢っちゃってる?」

「逢っちゃってるかも? そうかもと思って今探してる途中」

「そっかぁ。やっぱり転生者が混じるとシナリオからだいぶんれちゃう感じだよね」

「今どこにいるか分かる?」

「分からないよ。さっきもいったけど私、設定だけ読んで、はじめの数回でリタイヤしたんだから」

「そんなぁ」

 亜紀(前世の友達第2話参照)と一緒のパターンだ。

 ほんと人気ないなこのゲーム。


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