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18話 誘拐事件は起こるのか2

「ユーリ! いつの間に」

「ひどいな、もう一カ月くらい前には目線が僕の方が上だったでしょう」

「全然気づかなかった。そういえば足が大きくなったなぁとは思ってたのよ」

「足ですか? 変な所に気づくんですね。確かに何足か新品のままサイズアウトしてしまいました」

「なんだか悔しい。弟に背を抜かされるなんて、まだまだ先だと思ってた」

「ふふふ、いい気分です。これで、ダンスを踊ってもさまになりますね」

 にへらっと、本当に嬉しそうにユーリが笑う。


「そうね、これで私もぺったんこ靴から卒業できるわ」

 これぐらいの嫌味は言わせて欲しい。


「それは困りましたね、つま先に鉄板を入れた方がいいでしょうか」

「あー、酷い!」

 この前、私の誕生日会で踊った時、緊張で何度かユーリの足を踏んだことをまだ根に持っているのね。


「あの時は人前で踊るのは、久しぶりだったから」

 そのあと、ソールと踊った時には足を一度も踏まなかったのだけど、それを見ていたユーリがめちゃめちゃ機嫌を悪くしたので、それには触れないでおく。


「はいはい、しばらくは僕が責任をもってお相手しますね」

「そうね。ユーリに婚約者ができるまでは私の専属でお願いするわ」

「まだまだ先の話ですね。しばらくは姉さまのエスコートをさせてもらいます」

 ユーリの腕に軽く腕を絡め、私達は庭園の入り口に姿を現した人物の所までゆっくりと歩いた。


「お久しぶりです。ユーリ様。お嬢様」

 王宮魔術師はうやうやしく頭を垂れた。

 その気取った言い回しに笑いだしてしまいそうだったが、彼なりに公爵家に合わせて演技をしていてくれているので、それをぶち壊すのは不味い。

 令嬢らしく挨拶を返したが、ユーリの機嫌がいっきに降下していくのがわかった。



 *


「ざっと見た感じ変な魔法の気配はありませんね」

 リリーを迎えに行く馬車の中、王宮魔術師が素に戻って偉そうに背もたれにもたれかかり、足を組んでいた。

 ユーリは露骨には嫌な顔をしないが、相変わらず王宮魔術師のことは疑っているらしい。

 王宮魔術師を警戒しているのはなんでなのか?

 今回の警護は騎士団長をしているソールの父も心配しており、そちら経由で王宮魔術師も警護を担当しているらしい。公爵家の影と対立しているのかわざと拗らせているような気さえする。


 ぎすぎすした空気をまき散らさないで欲しいんだけど。

 もとは気遣いのできる日本人だったんだから、私の方がつかれてしまう。


 *



「王宮魔術師から見ても問題ないなら、今回は無事に済みそうね」

 重い空気を払拭ふっしょくするためにもできるだけ明るく振る舞ったのに、王宮魔術師は人差し指を口元に当てて「うーん」とあいまいに答えた。


「何? 何か気になることがある?」

「怪しい魔法は感じられなかったのですが、魔法の気配はそこら中にありました」

「ん?」

 意味不明ですけど?


「まあ、もともとこの辺は貴族相手の高級な店が多いんです。魔道具もあちこちで見かけるし魔術師専門の店も多いから魔法の気配が多くても仕方ないのですが、油断はできません」

 なるほど。魔法が珍しいとはいえ、まだまだ貴族の中では使えるものも多いし、逆にお金を出せば魔法石も比較的手に入りやすい。


「つまり。何も判断できないってことだな」

 ユーリが、またもちょっかいを掛ける。


「公爵家の影も同じかと思いますが」

「何だと! 貴様。調子になるなよ」

「二人とも、いい加減にして。狭い馬車で喧嘩しないの」

 両手で今にも立ち上がりそうなユーリの身体を引き留め、王宮魔術師の余裕ぶった顔を睨む。





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