表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖怪✕人間の救済記録  作者: 山公乃傘
一章 邂逅編
7/115

緞帳の上がる前・体育館

 只今開演五分前。


 ステージ裏には、一年四組の面々が今か今かと出番を待ち侘びている。


 そんな中、恐らく津島だけが憂鬱な気持ちを抱えていた。


 先程から煩いとさえ感じるクラスメートの視線。なんなんだとこちらから視線を送っても、無言で善い笑顔を返されるだけ。


 全く何なのさ。ほんと、僕の居ない間に何があったの?


 思うも、もう聞いている時間は無い。


 こうなったらさっさと終わらせて皆を問い詰めよう。

 津島は決意し、舞台裏にある時計に視線を送った。




 開演四分前。


 観客席では、観客たちが小さな騒めきと共に、開演を待っていた。


 騒めきの内容は、やれどれ程のクオリティなのか、だの。主演の津島君はどれ位出てくるのか、だの。写真撮影ってオッケー何だっけ?だのと、何とも文化祭らしいものだ。


 しかしその中に、少しばかり珍しい囁き声が混じっていた。


「なんだろう? あの人たち」

「他のクラスの演劇の人? でもあんな雰囲気の劇有ったっけ?」

「高校生じゃないのかな? コスプレイヤー?」

「男の方の服ダッサ」


 彼らの視線は体育館後方、ステージから見て右奥の隅に集まっていた。


 そこに居るのは、二人の人間だった。


 否、人間という表現は正しくはない。何故なら、彼女らは正真正銘の妖怪なのだから。


 一人目は、暗い体育館からでも良く分かる白い長髪に水色の目を持ち、着物と袴を着た女性。頭には白い狐耳と、腰には白い狐の尻尾が九本生えていた。


 二人目は対称的に、体育館の影に紛れそうなほどに黒い、しかし白髪交じりの髪を持つ青年。こちらは耳と尻尾こそ生えていないものの、ポロシャツに短パン長外套と、何とも悪い意味で目立つ格好をしていた。


 この文化祭会場にこんな格好をしている二人組は一組しかいない。一組居れば十分である。


 周りから好奇の目で見られているとはつゆ知らず、二人は小さな声で会話をしていた。


「いやー楽しみだねえショウセイ君」


「小生の名前はショウセイではない! と何回いえば分かるのだこの記憶障害狐っ。全く、何故小生がこのような人間だらけの場所に座らねばならんのだ」


「ちょ、ちょっと待って。記憶障害狐ってすごく面白いのだけれど。一体どこで習ったの? もしかして林太郎さん? それとも語彙力のあんまりない筈のショウセイ君が私に言う為だけに態々考えて呉れたって痛っ」


「煩いわっ。重ねてボケるなっ。小生では突っ込み切れんだろうがっ」


「殴るなんて酷いよショウセイ君」 


「小生の名前はショウセイではないっ」




 開演二分前。


 体育館の天井裏、普段人間が絶対に入らないような所に、二人の妖怪が潜んでいた。


 そっくりな見た目をした、人型の、少年のような見た目の妖怪である。


 赤味の肌。丁度頭の中心で左右に色が分かれる焦げ茶と黒の髪で、藍色の瞳を持っている。服は山伏のような格好だ。


 二人に唯一違うところがあるとすれば、髪の左右の違いだろうか。二人の髪は左右で配色が逆だった。


「そろそろだね、紅平」


 右側に焦げ茶を持つ方が、心底楽しみだと言うように言った。

 見た目通りの高い、少年のような声である。


「そうだね、藍平」


 紅平と呼ばれた、左側に焦げ茶を持つ方が答えた。

 藍平と呼ばれた少年よりも少し低い、だがよく聞かねば分からないほどの違いしかない声だった。


「ふふふふ」

「はははは」


 二人は会話を終えると、不気味に、そして静かに笑いあった。

 背中で、黒い羽がゆらりと揺れた。



 ごめんなさい順番間違えました。割り込ませます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ