Lesson? ずっと前から知ってた
最終話です!
「エルリーナおはよう!」
「おはよう〜」
朝の講義室。
今日もまったり元気な友人を迎える私の気分は凪いでいる。
眠い。
そして暑い。
「エリィはほんと歴史の授業嫌いよねー。」
「私は未来を考えていたいのよ……」
「さっすが民主主義の革命家の娘、言うこと違うわね」
「やめて。また怖い女とか、悪女とか言われるから」
クスクス笑う友人は席につくと教科書を並べた。
「まぁやっとうちの国も民主主義の国になったんだものね。王家も一般民になって、事実上王国は滅んだわけだし。歴史って気持ちになれないのも、わからないでもないわ。」
「政治の背景とかは面白いとは思うのよ……でも歴代国王の名前を覚えるとか本当に興味なくて」
先日のテストの答案用紙を見る。
○○年就任の国王の名前を答えよ……のような問題は大体バツだ。
もうすぐ夏の期末テストだ。
ハァとため息をつく。
「そうそう、歴史といえばさ、聞いた?新しい編入生。やたら魔術が得意で、しかも歴史がほぼ満点の秀才。」
「へぇ」
「しかも間違った歴史の問題、解釈が違うんじゃないかって逆に指摘して、結果的に歴史の先生たちの中でも議論になって……歴史が塗り替えられるかもらしい」
「ふーん」
「更にめちゃくちゃイケメンで、黒髪にほんのり紅い目が素敵だとかで、ついたあだ名が魔王だってさ」
「なにその13歳病みたいなあだ名」
「……エリィってあんまりイケメンに興味ないわよね……」
「そういう話題はああいう可愛くて守ってあげたくなるような子たちの特権なのよ」
うんざりした顔でキャアキャア騒いでる女の子たちを見る。
男子に人気のキュートな女子集団だ。
「私の中ではエリィみたいにスラッとした美人さんって好きなんだけどなぁ」
「ミーちゃん!!優しい!!!」
前向きで明るい友人のミリアル。
だからこの友人は大好きなのだ。
感激でミリアルに満面の笑みを向けたが、ミーちゃんは何だかポカンとした顔をしていた。
「隣いいかな?」
「あ、はいどうぞ?」
そう言いながら振り返ると、黒髪の男がカタリと隣に座るところだった。
ほんのり紅の目の、やたら顔が綺麗な男。
「……もしかして、噂の編入生?」
「噂かは知らないけど、編入生だね」
ちょっといたずらっぽく笑う顔が妙に既視感があるのはなんでだろう。
首を傾げつつ様子を伺う。
「…………貴方、どこかで会った?」
「ちょっと、エリィ!口説き方が古臭いわよ!」
「口説いてないから……」
裏表のない友人のコメントは時にストレート過ぎるときがある。
いきなりの変な女になってしまった。
残念な気持ちで男を見ると、男はそのほんのり紅い目を見開いて私を見ていた。
「……ご、ごめんね。変な意図はないから。綺麗な顔だからどこかのアイドルと被ったのかも」
「……何か覚えてるの?」
「え?」
「いや………なんでもない」
何だろうと首を傾げていると、男は私のノートを指さした。
「ここ、間違ってるよ」
「え」
「5代目のナリザス王の時代は、化粧品の開発じゃなくて医薬品の開発が盛んだった。」
「そう……ありがとう……全く覚えられる気がしないわ………」
全く興味が湧かない。
とりあえず書き直す。
「………ナリザス王はさ、酒に弱かったんだ」
「え?」
「それで、王位継承した時の式典で、飲みすぎて倒れて……額に大きなたんこぶができた。」
「かっこわる!」
「それで、周りのものにもバカにされて、悪いのは酒に酔わない薬がないのが悪い!ってトンデモ理論を繰り出して、国中の学者に酒に酔わない薬の開発を国費でさせまくった」
「……そのハングリー精神はいいわね……」
「結果、酒に酔わない薬はできなかったんだけど、顔の赤みを抑える皮膚病の薬とか、頭痛薬とか、めまいの治療法とか……色んな成果が出たんだ。で、ナリザス王の時代には、優れた医薬品が沢山の開発されたってわけだ。」
「へぇー!!なにそれ、面白い!」
「でしょ?」
その男は紅い目を何だか優しげに細めて笑った。
「覚えられた?」
「………確かに。覚えられちゃった気がする。ありがとう。さすが、歴史がほぼ満点の編入生ね。」
「まぁ……歴史はある意味得意だから。」
「ある意味?」
男はただ意味深に笑うと、遠い目をした。
私も同じ方向を見る。
私達は階段状に席が配置された講義室の一番高い、後ろの席にいるのだが。
下の方のカワイイ女の子たち集団が、こちらをチラチラと見ている。
「………あなた、あっちの方行かなくていいの?大人気になると思うけど」
「…………ああいうの、面倒だから助けて欲しい」
「え?」
「そのために編入してきたんじゃないから」
よく分からなくて友人に助けを求めると、友人は何故か妙にキラキラした顔で私を見ていた。
「やっぱりエリィみたいなスラッとした一見冷たそうな美人さんが良いわよね!!」
「え、何言い出したのミーちゃん」
「バカね、今は攻めの時よ!ほら、もっと仲良くなっときましょうよ!そうだ、あれ見せてあげなよ、魔法の印を出したり消したりするやつ」
「あぁ、あれ……」
実は私の手の甲には、触ると出てくる変な模様があった。
黒い蔓薔薇みたいな模様で、出したり消したりできるから一発芸として重宝してたんだけど。
「それがね、最近なくなっちゃったみたいなの。」
「え、そうなの?」
「そう、ちょうどパパが革命を成功させて周辺国合同の民主主義国になった頃の、例の記念パーティーで見せようとしたんだけどね。何故か綺麗サッパリなくなっちゃってて。もう薬指の紅い指輪みたいな模様がほんのり残ってるだけなの。」
「へぇ?なんでだろうね?」
「……赤ちゃんの蒙古斑的なものだったのかしら」
「……蒙古斑……例えが渋いよエリィ……」
また間違っただろうか。
こんな話題に付き合わせてしまって申し訳ない気持ちで男を見ると、男は何だか妙に綺麗な目でこちらを見ていた。
紅い瞳が、何だか光って見える。
吸い込まれそうな、紅くて綺麗な瞳。
「……っほら!あんたたち、見つめ合ってないで、先生来たよ!」
ミーちゃんに小突かれてはっとして慌てて前を向く。
先生が黒板に、期末のテスト範囲を書き始めた。
最悪だ。
この先生、また歴代国王の名前書かせる気だ。
「……さっきみたいに教えようか?」
男がひそひそ声で話しかけてきた。
「いいの!?」
「もしよかったら。……でも、その代わり、あの怖い女たちから守ってほしいんだけど……」
「えっ……どうやって?」
「うーん……一緒にいてくれたらそれで十分かな」
「まぁ……それぐらいなら?」
そんなんでどうにかなるもんなんだろうか。
よく分からないけど、それぐらいならまぁいいか。
「……でも、あの子達からもの凄い勢いで貴方を紹介して欲しい!とか言われそうね。」
「…………そしたら、俺の好みは悪女だとでも言っておいて」
「え?」
「『魔王』の隣にいる女なら『悪女』でしょ」
うっかりついてしまった13歳病のあだ名の事か。
思わず吹き出す。
なかなか笑いのセンスが良いではないか。
「私が怖い革命家の娘で『悪女』って呼ばれてるの、知ってたのね」
「……もっとずっと前から知ってたよ」
「ん?なんて??」
「なんでもない」
講義中でひそひそ声で話してるからよく聞き取れなかった。
大した話題ではなさそうだから良かったけど。
「そうだ、まだ名前聞いてなかった。私はエルリーナ。みんなエリィって呼ぶわ。宜しくね。」
「うん、宜しくエリィ。」
何だか分からないけど名前を呼ばれるとむず痒い。
ぽりぽりと頭を掻く。
「ええと、で、貴方は?」
「………ルヴァイ」
「ルヴァイね!了解。」
「………俺の名前、古臭い響きで嫌なんだけどさ……」
「そう?一周回っておしゃれじゃない?」
確かに昔風の発音だけど。
なんだか響きが心地いいなと思った。
気の合いそうな新しい友達ができた気がして、満面の笑みを浮かべる。
「よろしくね、ルヴァイ!』
ルヴァイは何だか少し懐かしむような不思議な笑顔で、宜しくね、と囁いた。
ーー完ーー
最後まで読んで頂いてありがとうございます!!
そして、いいねブックマークご評価で応援してくださった方ありがとうございました!
途中執筆が進まなくなって苦労したのですが、最後まで頑張れたのは皆様のお陰です。
ありがとうございました!!
最終話を書いてみたら私が続きが気になったので、
また少し置いて続編書こうかなと思っています。
その時はまたぜひご覧下さい!
「面白かった!」「ルヴァイ素敵だった!」と思ってくれた方も、
「私もこの学校入りたい……」「悪女教育は今回もやるのかしら!?うふふ」と妄想を膨らませてくださった方も
ぜひブックマーク、
☆下の評価を5つ星☆からご評価よろしくお願いします☆彡!!!
最後までありがとうございました!!!
☆活動報告におまけ話を書いています。
良かったらそちらも見て下さい!
目次の作者名「ソラ」から飛べます。
☆完結済み作品ご紹介
『森の賢者と太陽の遣い〜期間限定二人暮らしから始まる異文化恋愛〜』
番外編投稿中で、番外編も本日完結予定です。
ぜひこちららもご覧ください!
下のリンクコピペか、目次の作者名「ソラ」を押して出てくる作者ページから飛べます!
https://ncode.syosetu.com/n2031hr/