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夕日に染まる

「そこで提案なんだが……」



 副所長は、私を窺うように言い淀む。


 言い淀む副所長の姿は、普段の自信に溢れる姿とかけ離れていて、不思議な気持ちになる。



「僕は魔塔に報告する為に、しばらくシェルロン国に来る事が出来なくなるんだが、シャーロットは休暇が残っているだろう?だから……」



 言葉を探るように言う副所長の耳と顔が、夕日で赤く染まって見える。


 副所長の緊張感が伝わった私は、副所長の言葉を聞き漏らさないように、真っ直ぐと副所長を見る。



「捜査の引き継ぎが終わったら、僕と街で買い物をしないか?」



 「仕事とは関係なく」と言う、副所長の誘いに驚く。


 仕事とは関係なく、買い物をしようなんて、副所長にその気がなかったとしても、デートに誘われたと勘違いをしてしまいそうになる。

 


「二人で、ですか?」


「あぁ。買い物ではなくても、シャーロットが行きたいところなら何処へでも行こう」



 どう答えたらいいか分からなくて、言葉が出てこない。


 私が悩んでいると思ったのか、副所長は手を差し出した。

 


「僕にシャーロットと過ごす栄光をくださいますか?」


 

 差し出された手と、副所長の顔を見る。


 副所長が私の事をどう思っているかは分からないけれど、差し出された優しさは本物で、私の事を大切に思ってくれているのを感じる。 


 私はこの優しさを拒む事が出来るだろうか?


 私は悩む事はやめて、震えそうになる手で差し出された優しさを手に取る。



「はい……」



 私が副所長の手の上に手を重ねて言うと、副所長は手を優しく握った。


 副所長は私の返答に嬉しそうに笑っている。




 肌寒くなってきたため、馬車に乗って屋敷へと帰る事になった。


 今日も副所長は、家まで送ってくれるらしい。


 エスコートしてくれる手でさえも、副所長を意識し出すと何もかもが特別に感じてしまう。


 ほんの少し前まで、副所長と馬車に二人きりになる事に何も感じなかったのに、緊張する自分がいた。


 何も話さずに緊張している私を、副所長は不思議そうに見ている。


 屋敷に着くまで沈黙が続く中、副所長は言った。



「二日後の昼過ぎに迎えに来るから、待っていてくれ」

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