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揺れる水面

 カフェを出た私はウィリアムと別れ、副所長と公園に来ていた。



 小さな泉には小舟があり乗ることも出来る。


 温室がある公園は、首都で自然を感じられる数少ない場所だ。


 シェルロン国の美しい花々を副所長に見せたかった私は、副所長をここに連れて来た。


 泉に来た私達は泉の周りを歩く。副所長は泉の周りに咲く花を珍しそうに見ている。


 そんな中、私はカフェでウィリアムと話したことで頭を悩ませていた。



◇◇◇



 私が学生時代からエドワードの素行に悩んでいるのを知っていて、心配をしてくれていたウィリアムに、エドワードと婚約破棄した事を話した。



「シャーロット、今まで辛かっただろう……」



 そう言ったウィリアムの顔は、私を本当に心配してくれているのが伝わってくる。 



「そんな事は……」



 そんな事はないと言おうとして言葉が詰まる。


 今までは強がって大丈夫だと言っていたけど、辛かった気持ちを受け入れる事で、前に進める気がした。



「そうね、辛かったわ。自分ではどうしようない事だったから」



 そう言うと、ウィリアムが「シャーロット……」と心配そうに見ている。


 そんなウィリアムにニッコリと明るく笑う。



「でも、今は大丈夫。私には私を大切にしてくれて、心配してくれる人が周りにいるから」



 「本当よ?」と言うと、ウィリアムは安心したように笑って言う。



「これからは、自分の幸せだけを考えて欲しい。君の優しさは、君を大切にする者だけに与えて」



 私の事を心配して言ってくれるウィリアムの言葉に心が温かくなる。



「ありがとう」



 ウィリアムと私は目を合わせると、自然と笑顔が溢れた。


 

「でも、安心したよ。シャーロットの周りには、君の事を大切に思ってくれる人がいるみたいだから」


「そうね…お父様もお母様も、私の事を心配してくれているわ」


 

 今回の事で、両親に迷惑をかけてしまったけど、私が決めた事を否定する事なく、私の幸せを望んでくれている両親には感謝しかない。


 そんな事を考えていると、ウィリアムは言った。



「両親の事じゃなくて、さっきの彼の事だよ」



 彼?彼って副所長の事?


 ウィリアムの言葉に思わず笑ってしまう。



「何を言ってるの?あの方は仕事上の上司よ?」


「上司?上司って言うには、君を気にかけていたように見えたけど……」

 


 ウィリアムの言葉に確かに、副所長の行動は少しおかしい所がある様に感じる。



 わざわざ私の屋敷に来た事、魔法の箱、ネックレス、そして馬車の中での出来事やその他の事も、部下と上司にしては少し距離が近い気がする。



 他人に興味がない副所長が優しい事に困惑した事もあったけど、私は副所長の部下で、私が落ち込んでいるから優しくしてくれると思っていたけど…。


 

「ウィリアム、男性の立場として教えて欲しいのだけど……例えば、ただの友人に高価な魔法道具や宝飾品を贈ったりする?」


「高価というのがどれ程の値段かは分からないけど、ある程度の値段なら贈ることはあるかな」


「ある程度…」



 魔法の箱も今着けているネックレスも、ある程度の範疇から外れている気がする。


 副所長は部下だと思って優しくしてくれていると思っていたけど、そうではなかったら?


 私が考え込んでいると、ウィリアムは明るく言った。



「シャーロットが幸せならそれでいいよ」

 


◇◇◇

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