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ジェレミーの優しさ

 マーティン様のお屋敷から帰る途中の馬車の中、私は夢見心地で外を見てみた。


 サインも貰ったし、本では知る事が出来ないお話を聞く事も出来た。それに、また会う約束もした。


 こんな幸せなことがあっていいのかしら。


 そんな事を考えていると、副所長が口を開く。

 


「どうするつもりなんだ?」 


「何がですか?」


「マーティン卿に誘われていただろ」


「あぁ、その事ですか……正直、分からないんです」


「分からない?」



 私は服をギュッと握る。



「はい。副所長には言ってませんが、色々ありましてこの国は私にとって居心地があまり良くないんです」



 「生まれた国なのに、おかしいですよね」そう言って力なく笑うと、副所長は笑う事なく私の目を見つめていた。



 副所長の見透かすような目に耐えられなくなった私は笑うのをやめ、視線を逸らす。



「おかしくなんかないだろ。生まれた国が自分にとって、居心地が良いとは限らない。何があって居心地が悪いのかは知らないが、無理してこの国にいる必要はない。少なくとも、僕の目にはラミア国にいたシャーロットは生き生きとして見えた」



 副所長は真剣な目をフッと緩めて、笑う。



「それに、僕はシャーロットにはラミア国に、魔塔にいて欲しいと思っている」


 

 人と距離を置く副所長に、こんな事を言われて私は驚いてしまう。


 どう返していいか迷っていると、副所長の耳が赤く染まっているのに気付く。



 耳が赤く染まるほど恥ずかしい事を、私の為を思って言ってくれた副所長の優しさに心が軽くなるのを感じる。


 

 私はフフッと笑って、今度は私が副所長の目を真っ直ぐと見る。



「そうですね。副所長が寂しくならないように、魔塔にいないといけませんね」   



 私が副所長を揶揄う様に言うと、否定する言葉が返ってくると思ったけど、予想外の反応が返ってくる。



「そうだ。僕の為にもシャーロットには側にいてもらわないと困る」



 私が驚いた顔をすると、副所長はしてやったり顔をして馬車の外へと視線を向けた。


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