夢見心地
「シャーロット君はシェルロン国にいつまでいるんだい?」
「あと2週間休暇が残っているので、長くても2週間はいるつもりです」
「そうか。じゃあ、帰る前にまた会えそうだね」
私にとっては願ってもいない事だけど、今回マーティン様に会えたのは仕事があったからだ。
それに、一介の魔法使いである私なんかが普通に会いに来ていいんだろうか……
「迷惑ではないでしょうか?」
「迷惑な筈がない。最近では訪ねてくる者が減って暇をしているところなんだ」
「君さえよければだが」と私の不安をよそに、マーティン様は言った。
「それに、ジェレミーにはまた届けてもらわないといけないから、一人が不安なら君も一緒に来るといい」
「それなら…」とチラリと副所長を伺う。
「僕と一緒に来るなら問題ないだろう」
「決まりだね」
「…はい!」
尊敬している人にまた会えるとなって私は元気よく答えた。
話していると、メイドが夕食の準備を聞きにやって来た。
「あぁ、もうそんな時間か。君達も食べていくかい?」
外を見ると太陽がかなり傾いている。
もうこんな時間なのね。浮かれて時間が経つのを忘れてしまっていたみたい。
「家の者が待っているので、今日はお暇させていただきます」
「僕も国に戻ってしなくてはいけない事があるから、今日は帰らないといけない」
「そうか…残念だよ」
そう言ったマーティン様は、メイドに見送りの準備をするように伝えた。
玄関までやってくると、マーティン様が言った。
「さっきの話は本気だから考えておいてね」
「さっきの、ですか?」
考えておく事なんてあったかしら?とマーティン様に問い返す。
「シェルロン国で働く話だ。今すぐに、とは言わないから、考えておいてくれ」
お話を沢山したから忘れていたけど、マーティン様にシェルロン国で働かないか誘われていた事を思い出す。
どう答えたらいいか分からない私は、曖昧に笑って言葉を濁す。
「考えておきますね…」
別れの挨拶もすみ、微妙な空気が流れる中、黙っていた副所長が私の手を掴む。
「用事はすんだから帰るぞ」
「ちょっと!副所長!!」
副所長に連れられる私は、急いでマーティン様に別れの挨拶をする。
「今日はありがとうございました!」
「気を付けて帰るんだよ」
マーティン様に見送られ、私と副所長はお屋敷を後にする。




