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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異端魔狼のフェ・アルミア

作者: てとら

投稿始めてみました。

初心者なのでお手柔らかにお願いします。

気分で不定期にアップしていきます。


「ーー獣の王となってくれないか」


「え、そういうの無理なんで。すみません。

つか、獣ってなんですか。俺人間ですもん」


「すっごい冷めた断り方するじゃんっ

 しかも、転生したら獣になるって言ったよねぇ!?断り方酷くて普通に傷つくわ!」


 そういって獣神ケルヌンヌス?だったかな。は狼狽えながら虚空をポコポコ殴っている。


「地球の輪廻に従って生き返るってのでいいっていったじゃーん。押し付けがましいなぁプレゼンするならしっかりやってくれないかな?」


 この神めんどくさいなぁ。

 いいって言ってんのに無理くり押し通してくるとかそんな恩返しするほど旧知の仲じゃねえし。


 あー、なんでこんなことになってんだっけ。




------------------


「今日の登山は天気にも恵まれてよかったなぁ」

 真っ暗な山道の下り坂を車のヘッドライトが照らし、車は進んでいく。


「でも、そんな素晴らしい天気の登山中にあの人達に会ってしまうなんて……ついてない」


 俺、黒野猛(くろのたける)は幼少期に親と弟を亡くし、親戚の黒野家へ引き取られた。

 大好きだった家族が亡くなってから、俺は塞ぎ込んでしまい、周りから不気味がられるようになった。


 引き取って育ててくれたことには感謝してるが、黒野家の人間も例に漏れず俺を気味悪がった。


 谷ばかりの人生を歩み社会人になって一人暮らししてから漸くして黒野家に解放されたのだ。


「なにも、同じ日に同じ山に登らなくてもいいじゃないか何年も経ってるというのに未だによそよそしいし」


 誰も愚痴を聞いてくれるわけではないが、車を運転しながらぼやいていた。

 そりゃぼやきたくもなるさ。

 社会人になって、登山の良さに魅入られて趣味としてる俺からしたら、唯一の安息の時間がストレスを感じる時間となったのだから。


「まあいいか来週も山に登ってリフレッシュしよう」


 そう思い、少しブレーキを緩めた途端前方30mほど先に突然黒い生き物の影が見えた。

 このままじゃ……咄嗟に急ブレーキをかけ黒い生き物の無事を祈って目を瞑った……。



ーーあれ?衝撃がこない。

 というか音も聞こえない。

 どうなったんだ?


 目を開けてみると車も、夜の帳もそしてあの黒い生き物もなく、雲一つない快晴の山の頂にいた


「へ?なんで?」

 昔から取り乱すことはなかったが、流石にこれは状況がわからない。

 どうなってる?


 というよりさっきの黒い生き物……。

 そうだ、黒い狼に見えたような……。


 あんな山にいるわけないと思考が脇道にそれるのを首を振って切り替え、現状把握に努めることにした。


「んー、どっからどう見ても山の頂上だよな。景色が綺麗だし…」

「ーーこの山、気に入ったか?」

 不意に後ろから声をかけられ、本日二度目の素っ頓狂な声をあげてしまった。


「へ?誰?」

 振り向くとそこにはボーイッシュなショートカット、褐色の肌にどこかの部族のような格好とフェイスペイントをしているすらっとした女性がいた。


「すまんな、いきなり声をかけて。私は獣の神、獣神ケルヌンヌスだ。よろしく、猛くん」


 ついに俺も、ラノベの読み過ぎで神に会ってしまうようになったか……

 やれやれ。


「いや、心の声聞こえてるからね!?結構威厳ある自己紹介したんだから信じてくれないかな!?」

「俺あんまりそういうの信じないんですよね物語の中だけでいいというか」

「じゃあ君の心を読めたことをどう説明する?」

「表情からなに考えてるか読み取っただけでしょ」

「さっぱりいうんだね!君って人は!!まあいいさ、ところで猛くん。君はなんで急にこんなところに来たかわかるかね?状況は把握できてる?」


 自称獣神様は、挑戦的かつ蠱惑的な笑みを浮かべながらそう聞いてきた。

 この(ひと)マウントとるの好きなのかなぁ。

 めんどくさいなぁ。


 "聞こえてるからね、猛くん"


 !?

 心を読まれた!?そして心に直接訴えかけてきた。


 "これで認めてくれるかい?神にとってこのくらい当たり前なんだよ、自称神にとってね!!!!"


 あ、これ絶対拗ねてるわ


「はいはい。神様であることは認めます。よく見ると毛皮纏ってるから獣神ていうのも間違いじゃなさそうだし」

「よろしい。で?状況は理解してるの?」

「いや、さっぱりだ」

「では説明しようかな、君の置かれてる状況を」


 豊満な胸を張って、自慢げに獣神は説明をし始めた


「まず、君は死んでいる」


 んーーー、

 もしやこのパターンはと思ったが、まじか……

 死因はあの黒い狼?をひきそうになってハンドリングミスって転落死ってとこかな。


「思ったより動揺しないんだねぇ。だが、死因は検討ハズレ。ショック死だよ」


 ……え。

 ショック死?ショック死にショック死しそう。

 いやいや、そんなバカな

 生き物ひきそうになってこっちがショック死なんて、そんなこと……。

 ないよね?


「残念ながら、急ブレーキによるショック死「なんじゃそれ!」だよ」


 だっさい死に方したなーー

 余計ショック


「まあまあ、稀な死因ではあるけど、それだけ君が根のいい奴ってことさ」


「で、あの狼?はどうなったんだ?大丈夫だったのか?」

「どんどん遠慮のない口調になっているね。ちょっとは神を敬いたまえ。はぁ、まあいい。狼であってるよ。あの狼はね、無事っちゃ無事さ。常に君と共にいると思ってくれ」


「なんだそれ、矛盾してる答えだぞ。死んだような死んでないような。無事ならいいが」


「詳しい話は置いといて。実はあまり時間がない。君はもう間も無く地球の輪廻によって再び地球で生を受ける歯車に戻らなければならない。今は私が少し、地球の神にお願いして君を借りてるだけなのさ」


 茶目っ気のあるウィンクしてごまかされた。

 輪廻?輪廻転生のあれか。

 じゃあもうすぐ俺は、黒野猛ではない誰かになってまた別の人生を歩んでいくのか。

 どんな人生になるのかな……。

 今までの人生は結構しんどかったからな。

 もう少しイージーにして欲しいな。


 せめて家族ぐらいはいて欲しかったよ……。


「その願いなら叶えられるよ?」

「ほんとか!?」「ただし、」

「地球だったらその願いは叶えられない

私がいる別の世界で転生するならの話だ」

「ここじゃない世界なんて本当にあるのか?」

「あるよ。君の読んでた本みたいに、魔法や冒険がある世界がね、ちなみに私の誘いに乗るなら、そういう世界に転生させてあげる」


 おーー!異世界転生か!!

 願いも叶うならありだなぁ!!


「叶える代わりに、君にはお願いしたいことがある」


 ごくっ。

 出会って一番神様っぽい目つきになった獣神が、俺の相貌を射抜く。


「お願いってなんだ。勇者に転生して魔王と戦うとか?」

「そんなに身構えなくてもいい、勇者にならなくてもいい。魔王とも戦わない」


 じゃあいったい願いってなんだ


「獣の王となってくれないか」


ーーーー

 ということで、今に至るわけである。

 そりゃ異世界転生で少しは浮ついたよ?

 でも、王とか器じゃないんで。

 本当無理。


「じゃ、じゃあ中々強い能力を持たせて転生させようじゃないか!!これでどうだ!?」

「そういう問題じゃないんだよ。王ってのが器じゃないの。前提から拒否なの!だったら地球の輪廻とやらに乗っかってそのうちいい人生を送れることを願うわ」

「確実に家族と一緒に過ごせると言われても……?」


 ぐっ。確かに、魅力的だ。

 前の人生では、家族団欒というやつをどれだけ渇望(かつぼう)したか……。

 いつしか自分が周囲から切り離されていくことで次第にその思いも諦めに変わっていた。


 別に自分はいいんだと。

 最低限生活できて趣味を楽しんで密かに生きていければいいと思ってた……。


「私はね、ずっと君を見ていたんだ。君の思いをずっと知っていた。だから、君には家族との愛や絆。それだけじゃなく周囲の人との絆を知って生きて欲しいんだ。だから、君にとっては悪くないと思う。ただし、今回は人間としてではなく獣として獣の家族がいる家庭に君を落とす。それだけは知っていて欲しい」


 なるほどね。それで獣の王か。

 獣とはいえ、ちゃんと家族がいるんだもんな。

 家族と一緒に何かしたり笑いあったり喧嘩したり……。


「わかった。いいよ」

「ほんとかい?......後悔はしないかい?」

「そんなのわからない。でも、いいよっていってあんたが食い気味だったら断ろうと思った。だが、あんたは一応心配してくれた。その優しさを汲んで、あんたの願いに添えるよう頑張ってみるよ」


 パァっと明るい笑みを浮かべたのも束の間、剣呑な雰囲気で

「きみぃ、今神を試したね?やるじゃないかっ。私の思いを感じてくれたから許すが、次やったらオコだからね!」


「はいはい。すまなかったよ。で、もちろん強めの能力だかなんだかもつけてくれんだよな?」

「ちゃっかりしてるねぇ。いいよ、神に二言は無い。さぁ、そろそろ時間だよ。素敵な人生をね」


 貰えるものは貰っとかんとね!貧乏性ですから!


「獣神ケルヌンヌス。ありがとう。素晴らしい第二の人生になりそうだよ。ここで見守っててくれ」

「ごめん、一個言い忘れたけど、ここでの記憶や前世の記憶もサービスでつけておくからね!!じゃ、いってらっしゃい!!」


 あぁ!行ってきます!

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