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27 職務質問

「本当か?」

「もちろん、絶対とはいえないですけど……」


 俺たちは、通りすぎていった男たちの後ろ姿を見ていた。


「なんだ? やっぱり、持ち物検査すんのか?」

 ナックルが言った。

「絶対とはいえないなら、なんだ?」

 アリンさんが言う。


「……いえ、変なこと言ってすいません。神殿に行く準備を手伝います」

「おい」

 アリンさんが俺の頭をつかんで、のぞきこんできた。


「私は、絶対といえないならなんだ? ときいているんだ」

「アリンさん……?」


「いいか? 物事は、ゼロか10かではないんだ。お前はいま、なにかおかしいと思ったから言ったんだろう? 自分の中で、なんとなく、以上のものがあったんだろう? 問題になると思ったんだろう? なら言え。どのくらいおかしいと思った」


「え、どうしたんで」

「言え。ボスだった可能性は、お前の中で、どれくらいだ」

「……10が最大なら、……7か、8、かもしれないです」

「なら、やつらに話をきいてこい」

「まあ待ちなって」


 ナックルが笑う。

「そのへんの警備兵に行かせりゃいいだろ。どうした? 落ち着けよ」

「おい変態私はこいつと話をしているもし文句を言われないから許されてると思うなら大まちがいだ黙れ」

 アリンさんは一息で言ってから、また俺を見た。


「いいか? 隊長が、答えはお前の中にある、と言ったのはおそらく、お前はこれから、お前が感じたことを、正しいことなのかどうか、自分で判断しなければならない。そうしないと、自分につぶされるかもしれない。そういうことを言っているんだ」

「えっと……?」

 俺の顔を見て、アリンさんが、ふっ、と笑った。


「まあお前の場合、平和な日常が待ってるだけかもしれないが」

「はあ」

「考えろ。追うのか? 追わないのか?」


 ボス? の後ろ姿が離れていく。


「……もし、あれがボスじゃなくても、ナックルが言うように、あやしい物を持っているなら声をかけても、遠征兵的には、損はない、かな、と」

「なら行け」


「でも、それだと本当にボスで、おそわれたりしたら」

「それは平気だ」

 アリンさんが断言した。


「そんなこと言えないでしょう? 物事は、0か10かじゃないって」

「10だ。お前がやられることはない」

 アリンさんの断言。

 めちゃくちゃだ。

 防御力があるからって、他人事だと思って。


 だけど俺は馬車を降りた。


 なにもなければいいんだし。

 俺の記憶、予感。そんなもの、あてにならないだろう。

 たぶん、ただの旅行者だ。


 それより、1でも、2でも、行動してみろ。そういうことなんだろう。

 武術大会のときといい、アリンさんはそういう、自立うながし系女子なところがある。

 そして俺は、もっと自立したほうがいい系男子というわけだ。


 話しかけるだけだ。

 ちょっと早足で追う。


 でも具体的になんて言うの?

 ちょっとよろしいですか? みなさんにおききしてるんですが、とか?

 無作為にきいてるんですよ。ではお荷物、見せていただきますね、とか? ちょっと急じゃない?


 あれ? アリンさんか、ナックルか、○○兵という肩書がある人がいないと、難易度激高では?

 ついてきてもらうべきでは?


「えっ」

 彼らの後ろ姿が横道に入っていった。


 ちょっとちょっと。

 慣れない数の人をよけて、なんとか商店の間の道に入る。

 道がせまくなっていて、空き箱が積んであったりするので人の姿はない。

 

 こっちか、と進んだ先。


「あっ」

 先の角で、後ろ姿がちらっと見えた。

 走っていって、角を曲がると。


 誰もいない。

 見失っちゃった。

 うーん。

 しょうがない、もどろうか。


 そう思ったとき、なにかが背中に押し当てられた。

 バリバリバリ、と体がしびれる。


「ああああああ」


 なんだか、覚えがある。

 あのときは一瞬だったけど。


「ああああああ」

 これ。

 たぶん、あのときのしびれだあああああああ!


 ということは!


「誰だか知らねえが、始末させてもらうぜ」

「うううううう、うううううう!」

「……なんだこいつ、気絶しない……!?」

「ぬうううううううう」

 気絶しない系男子!


 そのとき、誰かが突っ込んできた。

「オラあ!」

「ぐほっ!」


 俺の横に誰かが倒れた。

 拳をかかげていたのは、ナックルだ。

 来てくれたのか。


「なんだこの棒」

 ナックルが、いま倒した男が持っていたものを拾う。

 銀色の、円柱形の棒だった。

 ナイフくらいの長さで、中心に剣のつばのようなものがあって上下が区切られている。


「ナックル、まだあっちに」

 道の先の方、誰かが早足で角を曲がっていった


「おれのスキル忘れたか? へへ、見えてるぜ。オラあ!」


 路地の建物の、木の壁を拳で叩き割ると、中に男が二人いた。

 帽子の男と、横にいた男。


「これはおどろいた」

 そう言って帽子の男が、にやあ、と笑う。


「そこまでして逃げるってことは、なんかありやがるなてめえら! おら、ついてこいやうぎゃあああ!」

 バリバリバリ、とナックルがしびれた。

「よく見ないといけないな。その棒は、ただの棒だぞ」


 ナックルと、その右足がふんでいるものがビビビと光っていた。

 光る石?

 しびれていたのはそっちなのか。


 ナックルが倒れた。

「この格好。警備兵じゃなさそうだ。武術大会参加希望者か? なら、どうして我々をつけるのか。間をとって、遠征兵ならあるか。まあいい」

 帽子の男は言うと、ナックルが落とした棒を拾って、俺に軽くほうり投げてきた。


 つい、受け取る。

「うわわわわわわわわ」

 結局、棒もしびれるのかい!


「さて、始末しろ」

 横の男が、剣を抜いた。


「まずはその寝てる男から」

「な、なにおおおおお」


 俺はナックルを抱えた。


「やらせるかあああああ」

「なんだと?」

「お前たちの目的はああああああ」

「なんだいあいつは、どうしてしびれながら平気でいられる!?」

「なんだああああああ!」」

「それにおい、その男、そんなにしびれさせたら死ぬぞ?」

「ええええええええ!?」


 しまった、棒と一緒にナックルを抱えていた。

 とどめをさしてしまう!


 ナックルを地面に寝かせ、顔をあげたら男たちを見失っていた。


「逃した……。いや」

 ナックルが倒した男がいたはず。

 思いついたとき、棒をナックルの上にうっかり落としてしまってバリバリ、急いで拾った。


「うおおお!なんだ!?」


 とバリバリで起きたナックルと一緒に、男を捕まえ、連れていった。

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[気になる点] ただただストレスがたまる身体能力は、すごくても知能は、0の無能 無理やり気づかないようにしてるのがイラつく [一言] ストレスがとにかくたまる
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