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22 俺も確保

 アリンさんが歩いてくる。

 俺と、少年を見て言う。


「そういうことか」

 とアリンさん。

 察しがいい。


「村では裸で少女を追いかけ、王都では裸で少年を追いかけるのか」

「ちがいます!」

「まあ冗談はいい。その少年はなんだ」

「じょ……! そんなときじゃないんですよ!」

「急いでいるなら早く言え」

「くっ……!」

 すっかり俺の、くっ……、も体になじんできた。


「こいつが」

 と言いかけたら。


「おい! 少年から手を離せ!」

「抵抗するなら命の保証はしないぞ!」

「アリンさん、ここは我々が!」


 ぞろぞろ出てきた警備兵が、わいわい言う。

「そこの変態男! 少年を開放しろ!」

「それだけはしません!」

「なんてやつだ!」

「囲め!」


 兵隊が増えてきて、本当に俺のまわりを大きく、ぐるりと囲んでしまった。


「おい、その尻の穴にヤリを突っ込まれたくなかったら、いますぐ少年を開放しろ!」

「えっ」

 ふと思う。

 そのへんの防御力はどうなってるの?

 いざやられて、だめでした! じゃあ、すまないよ?


 俺は体をねじって、ヤリを持っている人を確認する。

「いまだ!」

 しゅっ、とかすかに音がして、飛んできたナイフが俺の腕に当たった。


 はじかれて、落ちる。


「防御スキルか」

「魔法を展開しているのかもしれません!」

「抵抗しやがって!」

「俺は無抵抗です!」

「少年を離せ!」

「だから無理です!」

「こっのやろう!」


 そんなときだった。

 警備兵の間から、胸に紋章みたいなものが入った、しっかりした服の兵士が出てきた。


 兵隊たちは、おつかれさまです! みたいな感じだったり、危険です、お下がりください、みたいな感じを出したりしている。

 えらい人の予感……!

 でも三十歳くらいだろうか。そこまでえらくない予感……?


「隊長、彼は危険人物ではありません。少年を取り押さえていることにも理由があるはずです」

 アリンさんが言った。

「彼が、樹海の報告で出てきたバインさんですか?」

「はっ!」

 アリンさんが、びしっ、とする。

 隊長?


 隊長さん? が口を開く。

「そこの少年は危険なスキルを持っているそうですが、スキル封印を行ってくれているようですね」

 隊長さんは、あくまで、ていねいな口調だ。


「少年は、我々が引き取りましょう」

「はい。あ、首のやつ、外れやすくなってるんで気をつけてください」

「どうもご親切に」


 隊長さんと一緒にやってきた、警備兵とちょっとちがう兵隊が、近くにいた一般人らしき人たちを追い払っていく。

 そして荷車に少年を乗せると、一緒にひとり荷台に乗って、しっかり首輪をおさえながら連れられていった。


 ついでに俺には、上半身から下半身まですっぽり覆える服をくれた。

 公衆全裸卒業。


「さて」

 隊長さんが俺を見る。


「コッサの、バインさんですね?」

「あ、はいそうです」

「先ほど、武術大会参加者数名から、バインさんが特別な力を持っている、という報告があがっているそうです。場所を変えて、お話をうかがいたいのですが」

 と隊長さん。


「いいですけど、それはあれですよ。かんちがい」

「かんちがい?」

「起こし員さん、あ、ええと運営の係員さんが、俺の防御力を上げてくれただけで」

 隊長さんが、じっと見てくる。


「武術大会の運営には、そういうスキル持ちはいなかったはずですね。どういうことでしょうか」

「え?」

 どういうことでしょう。


「でも、実際、それであの少年のバリバリゴリゴリの攻撃を防いだんですけど」

「……」

「……」

 なんだか、隊長さんの表情がさっきより引き締まったような気がする。


「参りましょうか」

「……えっと、それ、行かなきゃいけないんですか?」

 隊長さんは、俺を見た。


「正直に申し上げるなら、いまのあなたの働きだけでなく、アリンを救っていただいた点についても、すばらしいものがある。王都としては充分なお礼をすべきです。あなたが求める、コッサへの交通手段の提供だけでなく、充分な謝礼も必要であると考えています」

「えっ」

 充分な謝礼とは。


「と同時に、不審な点も多い。あなたが今回のできごとの元凶でもある、そのようにも見えるのです」

「そんなことしてませんよ!」

「バインさん、少年の拘束に力を貸してくださったのですから、できれば、お話に協力していただくというのも、いかがでしょうか」


 ざっ、と兵隊の包囲がちょっと縮まる。

 断れないやつだ。


「……そんな感じの態度なら、いっそ、手錠とかして連れてったらどうですか」

「そんなもの、あなたには効果がないでしょう」


 少年の攻撃を受け続けた俺を見ていたあの参加者たち。

 あの場にいた人たちによる、俺最強説、をそのまま聞いてしまっているようだ。

 あんなの演技だよ。わかってよ。

 起こし員さんのおかげだよ。

 ブレイさんとか、本質を見抜けそうなのに。ちゃんと証言しないで帰っちゃったのかな。


 俺は隊長さんとならんで歩き始めた。

 ぐるっとたくさんの警備兵に囲まれて、まわりからは、完全に犯罪者にしか見えないやつだ。



 そして連れていかれたのは、兵舎だった。

 ここからは警備兵は入らないそうで、俺、アリンさん、隊長さんが、中に入った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そろそろ主人公は気がついちゃうかなー
[気になる点] ただのアホを見てるだけが続き、これ以上は…っとなってしまったのであまり面白みを感じませんでした。はっきりいって私は面白くなかった。 勘違い鈍臭い系主人公が好きな方はいいかもしれません。…
[気になる点] この話の 「 って誤字です? 言葉も」もありませんが、。 [一言] 一応打ち間違えかな?と思い 誤字報告で文字を全て消すということができないので空白、と書きました
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