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27 決着と、最後の敵

「「喰らえ! 『ギガ・フレイム』!」」


 『薔薇の剣士 Lv.130 ソードセイバー』が背後から放った巨大な火球に、『ベリアル Lv.150 魔王』は飲み込まれる。


 単なる炎の呪文ではない。装備状態になっているミヤビの〈焔の波〉の力で作り出した消せない炎の波を、一緒に混ぜ込んで射出していた。たとえ即死させられなくても、じわじわと焼き殺せる。


「この程度で俺を倒せると思うなよ?」


 一面の炎をかき分けるようにして飛び出してきたベリアルが、薔薇の剣士に斬りかかる。その身はまとわりついた炎に焼かれ続けているが、動きが鈍る気配はない。


 ここまで戦って、薔薇の剣士はベリアルの格付けを済ませた。せいぜい、本気のユメ子と互角程度だ。油断は禁物であるが、今の薔薇の剣士であれば全力を出さずとも勝てる相手である。


「「思ってないよ! 『薔薇ブレイド・ダンス』!」」


 炎による攻撃は、あくまで下ごしらえといったところだ。料理はここから始まる。炎を纏った剣を何度も打ちつけられたベリアルはたまらず後退する。すでに薔薇の剣士のペースだ。


「「『れんぞくスラッシュ』! 『チャージスラスト』! ……『メガ・フレイム』!」」


 スペシャルラッシュではなく、単なるスキルの連続攻撃で攻める。これで充分だ。余力は、ノブとの戦いに備えてとっておく。


 消せない炎にじわじわと体力を削られ、反撃の隙もないほどに殴られ続ける。どう考えても絶望という状況に、ベリアルは追い込まれていた。


 ここに至って、警戒すべきはノブの奇襲だ。前口上を思い出すと、二人は通じている可能性が非常に高い。ノブが介入すれば即座に反撃する。その覚悟を持って警戒しつつ、攻撃を続ける。


 これほど一方的に攻め立てられているのに、ベリアルの目は死んでいない。間違いなく何かある。思った通り、ベリアルは仕掛けてきた。


「そこだ……! 『デモン・カウンター』!」


 モーションスキルで斬りかかっていた薔薇の剣士の眼前に、淡く光る透明な壁が出現する。おそらく、与えたダメージをそのまま返してくるカウンター技だ。ここまで使ってこなかったことから考察するに、ある程度HPが削れていないと使用できないのだろう。おそらく、その分威力は絶大だ。


 これが、ベリアルの切り札。もう薔薇の剣士は止まれない。が、どうにもならないというわけではない。


「「〈青のレクイエム〉! 〈ブラック・プリンス〉!」」


 スキルを共有する二本の剣で時間加速を繰り返し、極限のスピードを超える。二刀の愛剣は呼びかけに応え、時間を巻き戻した。逆再生でベリアルが『デモン・カウンター』を発動する前に戻り、すかさず時間加速を使用して突っ込む。


「『デモン・カウ……」


「「『アイアンバニッシュ』!」」


 薔薇の剣士は、スキルを打ち消すスキルをぶつける。一瞬でベリアルの『デモン・カウンター』は消失した。当然、ベリアルは何もできない。無防備なベリアルが、薔薇の剣士の前に立ち尽くしている。


「「『捨て身スラッシュ』!」」


 狙うは、ベリアルの首だけだ。ベリアルのHPはかなり削れている。クリティカルヒットで、きっと倒せる。


 ただ、ベリアルはまだ勝負を諦めた風ではない。剣を振りながら、薔薇の剣士は何かあると直感する。


 刃が接近する中、ベリアルは静かに笑う。そして、最後のスキルを発動した。


「フッ……。『自爆』!」


「「無駄だ!」」


 もう一度、時間を巻き戻す。あっという間に『自爆』の発動前に戻り、今度こそ『捨て身スラッシュ』をベリアルに打ち込んだ。ベリアルの首が血しぶきを上げながら宙を舞い、そして床に転がった。


 一度倒したことによりパワーアップして復活する展開も警戒していたが、ベリアルの首と体は光の粒子となって消える。まず、ベリアルは倒した。ならば、次の敵が現れるというだけである。




「フフッ……! 隙だらけだぞ……? 『雷斬り』!」


 天井に潜んでいた『又吉信龍 Lv.73 上忍』が、上から斬りかかってくる。忍び装束に、藁人形をいくつもくっつけたたすきを掛けているという以前も見た姿だ。藁人形に何の意味があるのか、まだ薔薇の剣士は知らない。


「「隙なんかないよ……! 『スパロースラッシュ』!」」


 当然、ベリアルを倒すと同時にノブが襲撃してくるというパターンは予測していた。即座に対空斬撃で反撃する。剣と刀がぶつかり、二人はいったん距離をとる。


「『疾風迅雷』!」


 ノブは百倍の加速を発動して突っ込んでくる。薔薇の剣士は時間加速で対抗し、剣技を叩き込む。


「「『スラスト』!」」


 至近距離からぶちかました突きを、ノブは紙一重で避けた。避けた結果が紙一重なのではない。狙って、その距離を保った。無論、反撃するために。


「そんなものかね……? 『神速の一太刀』!」


 『疾風迅雷』発動中であるにもかかわらず、さらに加速してノブはモーションスキルで斬りつけてくる。どうやら『疾風迅雷』とコンボで使えるモーションスキルということのようだ。


 ユメ子と違い、この男はワールド・オーバーライド・オンラインをクリアしている。道中でレアなスキルやアイテムを、相当数確保していると思われる。使えるスキルも戦い方も、ユメ子と似ているようで全く違うと思っていい。


 さらに加速して薔薇の剣士は逃れる。ノブはまだオーバーライドを使っていない。ステータスではなく戦闘の技術という意味で、間違いなくノブは最強のプレイヤーだった。

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