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22 トッププレイヤー入りへの挑戦

 次の日、ワールド・オーバーライド・オンラインにログインした雅雄とツボミはまず長船君の店を訪れていた。雅雄は預けていた剣を受け取る。


「改造して完成した〈ショートアダマンソード〉だ。刀身におまえが集めてくれた〈アダマンティン〉を混ぜ込んだ。かなり攻撃力が上がってるぜ」


「ありがとう! 大事に使うよ!」


 長さや重量をほぼ変えることなく、攻撃力を大幅に強化してくれた。劇的に何か変わるわけではないが、充分である。ゴテゴテした妙なスキルより、使い勝手だ。


「まあゴールデン・スカイ・タワーに行くならこれでも不安だろうがな……。〈ヒヒイロノカネ〉の鎧を持たせてやれたら一番よかったんだが……」


 ゴールデン・スカイ・タワーではLv.50以上の敵が普通にわらわら出てくるという話だ。剣を新調したくらいでは気休めにしかならないのも事実だろう。それでも人生は配られた手札だけで戦うしかない。


「まあ、仕方ないよ。でも、鎧の方も思ったより早く仕上がりそうなんだよね?」


「おう、上級職になれたからな」


 長船君は胸を張る。雅雄たちと潜った神聖鉱山で経験値を多く獲得できたこともあり、長船君はLv.40に到達して「親方スミス」なる上級職に就いていた。〈聖なるハンマー〉の改造も順調に進んでいるということで、数日内には〈ヒヒイロノカネ〉の加工に入れそうだということである。


「だから……鎧が完成するまで待ってみないか? 俺も職人として、おまえたちを万全の状態で送り出したいんだ」


 長船君はそう申し出るが、雅雄は硬い表情で首を振る。


「ありがとう。でも、待てないんだ……。〈金の鍵〉はいくつ残ってるかわからないから……!」


 ゴールデン・スカイ・タワー頂上で入手できるとされる〈金の鍵〉が入っている宝箱は七つしかないという話だった。他のパーティーに先んじて頂上に到達しなければ、入手することができない。すでに結構出遅れている雅雄たちは、これ以上待つわけにはいかなかった。


「そうか……。絶対生きて帰ってこいよ! 鎧作って、待ってるからな!」


「うん、そのつもりだよ」


 ツボミとも約束したのだ。雅雄は死なない。




 雅雄とツボミはデス・アンデッド城陥落で解放された関所の先にある【鍵守りの村】のセーブポイントに転移し、いよいよゴールデン・スカイ・タワーへの侵入を試みる。その名の通り空へと高く伸びる黄金の塔が、雅雄たちを見下ろしていた。


 このダンジョンの特徴は、一度に入れるパーティー数が限られていることだ。入り口の扉は三ヶ所しかなく、一つのパーティーが通過すれば閉門して鍵が掛かってしまう。


 それでいて【鍵守りの村】で、どんな鍵でも開けられる〈金の鍵〉は七つしかないことを聞かされるのだから、たまらない。なぜ〈金の鍵〉を作ったジョセフ某とかいう職人はもっと鍵を量産しておかなかったのだ。単なる設定に文句を言っても仕方ないが、頭を抱えずにはいられない。


 頂上にはレベルによって性能が変化する赤薔薇の剣〈クリムゾン・スカイ〉が隠されているらしいが、もはやどうでもいいことである。そんなものはいらないので、とにかく〈金の鍵〉だ。頂上レース七位に滑り込んでやる。




 部活にも委員会にも参加していないので比較的早めにログインできる雅雄たちだが、塔に着いてみるとすでに一つ、扉に鍵が掛かっていた。うかうかしているわけにはいかない。さっさと雅雄たちも開いている扉に飛び込む。


 自動で扉が閉まり、がちゃりと音を立てて鍵が掛かる。わかっていたことだが、閉じ込められてしまったようで不気味だ。雅雄とツボミは慎重に塔の中の探索を始める。


 今回は長船君と一緒に神聖鉱山に潜ったときのように全ての敵を倒す気はない。隠蔽レベルを上げた〈ダークレザーコート〉、〈ダークレザーマント〉を頼みに、いつも通りこそこそと徹底的に戦闘を避けつつ頂上を目指す予定だ。


 壁から壁に貼り付きながら、ゆっくりと雅雄たちは階段を探す。さっそく雅雄たちは次の通路で『グレンデル Lv.53』が二体ほどうろうろしているのを発見した。


 鎧と半月刀で武装した青鬼といった風体のグレンデルは、鼻息を荒くしながら通路を行ったり来たりしている。最初に出会った雑魚でこのレベルとは。やはり、いちいち戦っていたら身が保たない。


 雅雄とツボミはグレンデルが反転した瞬間を狙って次の通路に飛び込み、身を隠す。グレンデルはこちらに気付かず、通路をうろうろし続ける。安堵のあまり、雅雄はフゥッと大きく息をついた。この繰り返しで上へ上へと昇っていくのだ。こんな程度で満足している場合ではない。




 気合を入れ直し、さらに先へと進んでいく。この調子で大丈夫だろうか。先行き不安を覚えながら雅雄たちは先を急ぐが、階段の前で『グレンデル Lv.53』が五体もうろうろしていた。これは間隙を突いて階段に飛び込むのは無理だ。かといってまだ一階なのに戦うというのも論外だ。


「使ってみようか……」


 雅雄は通路の影に隠れたまま、〈ねずみ花火〉を投げた。〈ねずみ花火〉は音と光を撒き散らしながら、通路を疾走していく。〈ねずみ花火〉にグレンデルたちは反応し、追いかけ始める。


 その隙に雅雄たちは階段に駆け込み、どうにか戦闘を避けて二階に到達することができた。階段一個昇っただけなのに、寿命が縮まる思いだ。精神的な疲労がきつい。


「行こうよ。また敵が来ちゃう」


 ツボミの言葉で雅雄は顔を上げる。それでも行くしかないのだ。ノーミスでクリアして、無事帰ってやる。

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