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異世界魔法学と理系バカ  作者: ふんわり理系
5/7

魔法とは

結構長くなっちゃった⋯⋯



 

 グランドさんが無属性魔法を教えてくれることになった。


「無属性魔法の種類は先程旦那様が言った身体強化魔法と治療魔法があります。⋯⋯実はあともう一つあるのですが、そちらは難易度も高く実用性もさほどないので、まずは簡単な身体強化魔法からやりましょう」

「はい!よろしくお願いします!」


 やっとだよ⋯⋯やっと魔法使えるよ。最初の魔法が火でも水でもなく身体強化っていうね⋯⋯脳筋かよ⋯⋯まあ、いいんだけど。


「全ての無属性魔法は体内魔力を使って魔法を行使します」

「体内魔力?属性魔法を使うときの魔力のこと?」


 魔力使うのって習得に時間かかるんじゃなかったの?


「似ていますが違います。属性魔法を行使するときに使うのは体外魔力です。体外にあるものを操り魔法を行使するので属性魔法は習得に時間がかかるのです。一方で無属性魔法は体内魔力、体内にあるものを操るので、体内の魔力を感知することはそう難しくはありません、誰でも出来るようになります」

「そうなんだ、早くやりたい!」

「はい、ではまずは体内魔力を感知しましょう。やり方は体の中に力が溜まっているイメージをしてください。この『溜まっている』というイメージがしっかりしているほど、感知しやすいのです」


 えーっと、『溜まってる』っていうとバケツに水が入っているイメージでいいかな?


 むむむ⋯⋯


 ――ん?これ、かな?いや微弱すぎて確信はないけど、なんとなくこう⋯⋯なんていうか⋯⋯目を凝らしてやっと見える蜘蛛の糸って感じの、あるいはものすごく薄い霧というか、そんなのを感じる。


「グランドさん、なんか⋯⋯本当に微妙だけど多分感知できたよ?このすごく薄い感じの」


 そういうと、グランドさんは目をまるくする。


「ほ、本当でごさいますか!?聞いただけで一発で感知できるとは⋯⋯本来感知するのに最低一日はかかるのですよ?」


 えっ、そうなの?結構簡単にできたんだけど⋯⋯


「じ、じゃあこれで身体強化使える?」

「いえ、残念ながらまだディレク様は体内魔力を十分に感知できておりません。今聞いた程度では発動させるまでに至らないかと」

「じゃあ、体内魔力を感知するのを練習すればいいの?」

「確かに練習すれば感知できる量も増えますが、それよりもイメージを細かくすることが大事です。属性魔法でも無属性魔法でも、とにかく行使したい魔法を起こすイメージをするのが基本中の基本です。引いては魔力を感知するのもイメージをしっかりとすれば、感知できる量も格段に増えます。」

「魔法をイメージ⋯⋯やってみるか」


 =====================================


 ずっと疑問に思ったことがある。


 いつからかと言うと前世からずっと。


 アニメや漫画の中の世界では、なぜ魔法という現象が起こるのかということに対して、主人公は特に何も気にせずに使っている。それはこの世界の人達も同じ。それもそうだろう、今まで当たり前にあったものなんだから。


 しかし、俺は理系バカだったからそれを真面目に考えていた。そして転生してからはさらに頭を捻って考えていた。


 魔法とはそもそもなんだ?


 今日も魔法の説明を受けてからずっと考えていた。そしていまさっき一つ思いついた事ことがある。


 《この世界の魔法って全部物理現象じゃん》


 この世界に来て精神干渉する闇魔法みたいなのは聞いたことがない。


 今まで受けてきた説明から、属性魔法は運動エネルギーや熱エネルギーに関連した現象が起こっていると予想できる。つまり魔法は科学で考えることができる。


 例えば、火属性魔法は火を出す。火というのはプラズマによる現象らしい。火が燃えるには燃料と酸素が必要だ。まず燃料が酸化反応を起こして高温になる、すると燃料が電離してしまう、そうして可視光や赤外線などを放出するから熱を持つし光ってる。


 しかし魔法を使うと、何もないところから火が出てくる。酸素はまわりにあるとしても燃料がないはずなのにだ。


 ここでひとつの仮説が立つ。


 それは『魔力を燃料にしている』という事。


 燃料が酸化反応する代わりに、魔力が酸化反応をしているとすれば火が着く出るのも一応納得できる。


 別の例も考えてみよう。


 特殊属性魔法の雷属性、想像通りなら電気を流すとか雷を起こすとかの魔法だと思う。


 雷も電流も全部電子の流れによるものだ。


 電気を流すなら魔力が電子を流している、と考えれる。しかし、雷はどうだ?空から落とすのか手から放つのか、どちらにしろ電子がどこからか湧き出している以外に考えにくい。


 つまり『魔力は電子にもなれる』


 最後に、リサさんが使った水属性魔法について。


 以前、床に広がった紅茶を集めて球状にしていた。あれはおそらく水分子を魔力を使って操ってる。水分子を魔力が包んでいるか、引っ張っているか、押しているか、そのあと持ち上げるようにしてたから多分包んでいるイメージなんだろう。


 ということは『魔力は物質に作用できる』


 魔力は燃料、つまり原子や分子のように使えて、電子のにもなることができて、物質に作用できる。


 これらのことから魔力は『イメージで原子、分子、電子、などのあらゆる状態になる事ができる万能粒子』という仮説を考えた。


 もちろんまだ仮説。治療魔法などはまだ説明できないけど、体内魔力と体外魔力はなんとなく説明できる。


 体外魔力は原子のようにバラバラの状態で存在しているとすれば、それが体内に取り込まれたら分子のような姿に形を変えて止まっている。


 人が栄養を摂取してエネルギーを蓄えるみたいに。


 =====================================


 俺はバケツに水が入ってるイメージから、人の細胞ひとつひとつに、分子のように結合した万能粒子が蓄えられているイメージに変えてみた。


 仮説が正しければ、俺はそうとう詳細なイメージをしていることになる。


 すると⋯⋯



 魔力が自分の体に満ちているのが分かった。


 さっきまでの微弱な印象ではない。明らかに魔力とわかる力を感知できた。


 正直、自分でも驚いてる。さっきのバケツのイメージとは感知できる量が全く違う。ということは俺の仮説は正解に近いという事だ。


 その瞬間俺の心は舞い上がった。


 だってそうだろう?自分が立てた仮説で大きな魔法の第一歩を踏み出せたんだから。


 ⋯⋯まあ、周りは引いてたけどな。


 そりゃあ、突然目の前で叫んで喜びを全身で表しだしたらビックリするわ。


「ディル、どうした!何があった!?」

「ディレク様!落ち着いてください、何があったのですか!?」

「ディ、ディレク様がご乱心に!」

「ちょ、ディルお前ついに壊れたか!」


 ⋯⋯兄さん、壊れたはちょっと酷くない?


「やったよ!イメージを変えたら体内魔力を感知できたんだ!」

「「「「⋯⋯はい?」」」」


 そのあとイメージを変えたら劇的に魔力を感知できるようになったことをみんなに伝えたけど、何一つ理解されなかった。


 そういえばこの世界、科学の代わりに魔法が発展した世界だったわ。粒子とかわからないよな。


「⋯⋯と、とにかくディレク様は体内魔力を感知できるようになったのですね?」

「うん!身体中にあるのがわかるよ!」

「はぁ、本当に一回で成功させてしまうとは⋯⋯では身体強化のやり方を見せましょう」


 やったぜ!これで俺も魔法を使える!


 グランドさんが魔法を説明しながら見せてくれた。


「まず、身体強化をしたい部分に体内魔力を集中させます。今回は右肩から先を強化しましょう。体内魔力が集まったら、体の表面に魔力を這わせるイメージをしてください。そうする事で魔法は発動します。実際に効果を見て見ましょう」


 そう言ってみんなで家の裏手に出た。


 グランドさんはそこに落ちていた石を拾って身体強化を発動した。するとグランドさんの右肩から先が淡く光り出した。服を着ていたから実際見えたのは手首から先だけだけど。


「身体強化をすることによって、筋力が上昇します。さらに皮膚も頑丈になるので、石も握り潰せるようになります」


 そう言って持っていた石を、ふんっ!っと気合い一発。バラバラにしてしまった。


「うん、いつ見てもグランドの身体強化は淀みないな」

「ありがとうございます」

「すげぇ!俺もやってみる!えーっと、魔力を右腕に集中して⋯⋯」

「おいおい⋯⋯魔力の感知ができるようになったのは確かにすごいが、だからってそんなすぐに魔法を使えるわけじゃないぞ?」

「その通りでございます。身体強化のイメージをしっかりしないとなりませんよ?」


 二人はこう言っているが、俺はできると確信している。


 筋力がアップして、皮膚まで頑丈になるということは、多分グランドさんは籠手のようなものをイメージしているのだろう。握る時に魔力が補助する事で皮膚は破れないし、力も増す。


 ⋯⋯うん、これあれだ、アイア◯マンだ。パワードスーツを装着してる感じだな。


 というわけで、体内魔力を皮膚に這わせて、魔力同士を強力に結合させるイメージをした。これで頑丈な皮膚の出来上がり。あとは動きに合わせて力を補助するようにすればいい。


 その辺にあった石を拾って力を入れる。すると⋯⋯石は見事に粉々になった。


「よっしゃー!身体強化できた!魔法使えた!」


 初めて魔法を使えたことに感動して、みんなに感想を求めようと後ろを振り返ると⋯⋯そこには口をあんぐりと開けて呆然としているみんなの顔があった。


 なに?みんなどしたの?


「ディ、ディル、お、お前それ身体強化⋯⋯」

「うん!ちゃんとできてた?」

「⋯⋯ディレク様、今の身体強化どうやったのですか?」


 なにやらみんな絶句している。だがグランドさんだけ真剣な顔で質問してきた。⋯⋯なんかマズかったかな?


「え?どうって、さっき聞いたのと同じようにやっただけだけど?あっ、でもイメージは俺のオリジナルを少し混ぜたけど⋯⋯ダメだった?」

「いえ、素晴らしい身体強化でございました。しかし驚きました。本来、石を潰す程の身体強化魔法は中級レベルの難易度なのです。見ただけでできるものではございません」

「でも簡単にできたよ?」

「⋯⋯ディレク様、上級レベルの身体強化も試してみませんか?」

「上級!?やるっ!どうやるの?」

「上級は全身の強化をします。魔力を全身に広げて覆うようにするのです」


 ⋯⋯なんか上級っていうからどんなすごい強化がされるのかと思ったら、全身でするだけ?思ったより簡単そうだなあ。


 ま、とりあえずやってみるか!


 さっきのを全身でやる。魔力の結合をイメージして皮膚を強化し、体の動きに合わせて力を補助させた。


 グランドさんも身体強化をして全身から淡い光を放っている。


「できたよ、さっきのを全身でやってみた」

「⋯⋯では、その状態で軽く跳んでみてください」


 なんか、グランドさんだけじゃなくてみんな真剣な顔してるな⋯⋯やっぱりなんかおかしいのかな。


 少し不安になりつつも軽く跳んでみるが⋯⋯


「うわっ!っとと、あ、あぶねぇ⋯⋯」


 自分では軽く飛んだつもりが身体強化によって三メートルは跳んだ。慌てて体勢をとって着地した。


 みんなを見るとやっぱり口を開けていた。


「⋯⋯やっぱりなんかおかしいの?」

「いえ、今跳んだ高さはおかしくありませんが⋯⋯今のは()()跳んだのですね?」

「う、うん。そうだけど⋯⋯」

「⋯⋯ディレク様、本来あの高さを跳ぶのは全力の身体強化を脚に集中させてやっとできるのです。軽く跳んで⋯⋯ましてや全身に身体強化を広げた状態であの高さは⋯⋯異常です」


 なんか魔法が使えたと思ったら異常扱いされた⋯⋯


「で、でもそれって俺の魔法が優秀ってことだよね?なら別にいいんじゃないの?」

「ええ、それだけなら良かったのですが⋯⋯一番異常なのは、魔法反応がないことです」

「魔法反応?なに、それ?」

「魔法反応は魔法を発動している時に発生する光のことです。今も私の体から光がでているでしょう。本来は魔法を使えば必ず発生するのですが⋯⋯ディレク様の魔法は魔法反応が見えないのです」


 そういえば、グランドさんもリサさんも魔法を使うときは淡い光がでていた。


 身体強化をしている自分の体を見ると⋯⋯確かに魔法反応がない。光が見えない。


 それでみんな驚いてたのか⋯⋯


「本当だ⋯⋯なんで?」


 グランドさんも分からないのか首を傾げていると、さっきまで呆けていた父さんが再起動した。


「⋯⋯おそらく効率がいいんだろう」

「効率がいい?どういう事?」

「魔法反応は、高位魔法師であればあるほど反応が薄くなるんだ。まだ研究中の問題だが、集めた魔力を魔法に変換するときに、変換しきれなかった魔力が光となって現れるという説がある」

「じゃあ、俺の魔法反応が見えないのは⋯⋯」

「ああ、多分、変換効率がほぼ完璧に近いんじゃないだろうか。光が出るほどの無駄がないんだと思う」


 なんだそれ?変換効率が良すぎるって⋯⋯


「うーん、効率が良いから魔力反応がないのはわかったけど、なんで効率がいいんだ?」

「⋯⋯イメージの違い、だろうな。イメージをかなり詳細にしているから、変換効率も高いんだろう。⋯⋯ディルまだ身体強化してるよな?」

「うん、まだ全身を強化してるよ」

「それこそが証拠だ。グランドを見てみろ、体内魔力が足りなくて、もう魔法を維持できていない」


 あっ、本当だ。もう魔法反応がないし、なんか肩を激しく上下させてる⋯⋯って⋯⋯


「グランドさん!大丈夫!?」

「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯、だ、大丈夫で、ございます。身体強化は、長時間、続きません。このように、体内魔力が、尽きると、動けなく、なって、しまいます」


 グランドさんが言うように、もうしばらく動けなさそうだ。


「あー、リサ、悪いがグランドを部屋まで連れて行ってやってくれ。グランド、今日はもう休め、明日も休みにするからゆっくりしてこい」

「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯ありがとう、ございます」


 そう言ってリサさんに肩を貸されてヨロヨロしながら行ってしまった。


「⋯⋯悪いことしちゃったかな⋯⋯」


 なんとなく少し罪悪感を感じた。


「そんなことをはないさ、グランドもディルの身体強化と自分のを比較するためにやったんだろう。おかげでディルは魔法のセンスがあることがわかったんだ、喜んでいいだろう。⋯⋯そんなに気になるなら明日、様子を見てくるといいさ」

「⋯⋯うん、そうするよ」

「よし、だがまあ、今日のところは解散だな、リサの出番がなかったのは申し訳ないが、もう日も傾いてる。魔法については明日リサにでも教えてもらうといい。⋯⋯それで、アイム、お前はどうする?明日も教えてもらうか?」

「いえ、やめときます。ディルについていける気がしない⋯⋯」

「ははっ、そうだな。⋯⋯そろそろ夕食ができる頃だろう。行こうか」


 その後、夕食を食べて部屋に戻ると、慣れない事をしたのと、自分でも驚くことが多かったのとで、すぐに眠ってしまった。



 =====================================



 その日の夜


 書斎にはアトマルクとリサがいた。


「はぁ⋯⋯ディルの魔法はすさまじいな⋯⋯リサ、この国の宮廷魔法師はディルと同じことができると思うか?」


 答えは既に分かりきった質問だったが、言わずにいれなかった。


「⋯⋯無理でしょう。あれほどの魔法の変換効率は聞いたことすらございません」

「だなぁ⋯⋯いったいどんなイメージをすればそんなことができるのか、想像もつかん」

「⋯⋯そういえば、ディレク様が体内魔力を感知に成功した時に説明していましたね。⋯⋯正直、私は全く理解できませんでしたが」

「ああ、私もだ。粒がどうとかいっていたが何一つ分からなかったな、おそらくあれがディルの魔法の鍵になってると思うんだが⋯⋯。はぁ⋯⋯本当にディルの将来が楽しみだな。いったいどれほどの魔法師になるのか⋯⋯いっそ恐ろしくもあるな」



 だがディレクの魔法に驚くのはまだまだ早いことなど、誰もまだ知らなかった。













次回も魔法の説明続きます。


あと投稿が遅れると思います。

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