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シンデレラマシーン  作者: 黄金の右脚
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中編


 さて、これから俺は 『シンデレラマシーン』 によって性転換する訳だが。

 このシンデレラマシーン。所謂、性転換手術とは根本的に異なる。

 シンデレラマシーンは外科手術的な事を一切しないのが特徴だ。シンデレラマシーン本隊はCTスキャンに似た機械で、この中に入って性転換がおこなわれる。

 その際に痛みや苦痛もないという。


 それだけでも凄いことだが。一番凄いのは性転換後の見てくれが異常に美化されることだ。

 シンデレラマシーンにかかれば、どんな醜い女も寒気がする程の男前になり。どんなブ男も絶世の美人にすることができる。

 

 まったく、政府は巨額を投じてこんな機械を作るとは呆れたものだ。

 それもこれも超富裕層の大バカ様たちが大金を融資してくれたから実現した訳だが……。


 まあ、それはさておいて。

 順番を待つことに。


「……」

 待合室は一流企業の応接室みたいで緊張した (というよりも、立派過ぎて落ち着かないのが本音)


「あ! 高杉くんじゃないの」

 どこからか俺を呼ぶ声が。


「誰かと思えば橙門だいだいもんじゃねぇか」

 待合室には順番待ちで3人いたが。その内の1人に幼なじみの史橙門ふみだいだいもんがいた。

 こういうお話の 『幼なじみ』 ってのは、だいたい可愛い女の子なのに。俺の幼なじみは髭ボーボーのそばかすまみれの汚い男なんだよなぁ……。


「高杉くんも超富裕層の婚約者に選ばれてたのね」

「まあな」

 なお、選ばれる人はコンピューターによって超富裕層の人と相性の良い人が選ばれる。

「あら、なんだか不満そうなへんじね。性転換するの嫌なの?」

「当たり前だ! 誰が好き好んで女になりたがる!」


 一応選ばれた人にも拒否権は有るのだが。

 親が 『大金持ちの嫁になれば苦しい家計がなんとかなる』 と土下座して頼み込んできたのだ。

 現代は貧困や病気がなくなったとは言え。全ての人が裕福な暮らしをしている訳ではない。

 俺のように必要最低限の生活水準で暮らしている者も少なくない。

 従って、シンデレラマシーンに選ばれた者はメルヘンの世界のシンデレラのように成り上がれると言える。


「ふーーん。そうなんだ」

 俺の言ったことに橙門は一応納得してくれた。

「でもアタシはシンデレラマシーンに選ばれて良かったと思ってるわ♪」

「マジで!?」

 これには目が飛び出る程驚いた。


「だって、今まで育ててくれたお母様とお父様を楽させてあげられるのよ。それって立派な親孝行じゃない」

「まあ、たしかにな……」

「それにアタシは女の子に生まれたかったから、願ったり叶ったりなの♪」

 そう言えば橙門は昔から女みたいな喋り方だったが。そういう理由だったか……。


「十八歳で結婚するのは少し抵抗があるけど。まあ、なんとかなるわ」

「……」

 橙門の言ったように (男が) 結婚できる最低年齢で結婚するのは抵抗がある。

 それも俺が不満を言う理由の一つなんだ。


 などと喋っていると。

「史さーん」

「あ、はーーい」

 橙門に順番が回ってくる。

「それじゃあ行ってくるわ」

 橙門はまるで戦地に出向く兵隊のように勇んで向かって行く。

 ちょっと力み過ぎな気もするが。橙門は緊張すると決まって仁王様みたいな表情になる、変な癖があるのだ。


「美しくなってくるから楽しみにして待っててね♪ チュッ!」

 仁王様みたいな顔で愛想よく投げキッスしてくる。

「うーーむ……」

 なんだか、本物の仁王様に投げキッスされた気分だ。これには思わず苦笑い。

 まあ、本人は不安と期待の混ざり合ったごちゃ混ぜな気持ちなのだろう。


 それもその筈。

 シンデレラマシーンは使用者の性別を転換して美化するが万能ではない。

 いくつかの問題点があるのだ。


 それは外見は変化できても体格は変える事ができないところだ。

 つまり、デカイ人はデカイママ。チビな人はチビのまま。

 そんなんだから俺や橙門みたいな大男 (どちらも百八十センチ近い長身) がシンデレラマシーンを使った場合は長身美人になる。

 正直、男は自分よりも大きい女と結婚したがらない傾向にあるけど。大丈夫なのか?


 また、それ以外にも問題点はある。

 それは声質がそのままな事だ。

 これは致命的な欠陥である。

 なにせ見た目美少女でも声が男では違和感が半端ない。言ってみれば、オカマと喋っているようなものだ。

 一応、声が低めな女性が性転換した場合は違和感が少ないが……。


 それ以外にも小さな問題点は幾つもあったので、橙門が心配するのも納得な訳だ。

 無論、俺も心配はある。

 そんなんだから、まったく落ち着かない。

 なので気晴らしに施設内を見て回ることにした。


「……」

 施設内は広くテ入り組んだ構造になっていて、地図が無いと迷子になりそうなぐらい複雑だ。

 なんだか探検してるみたいで、ちょっとドキドキする。


「しかし複雑に入り組んでいるな。まるで迷路みたいだ」

 案内図を携帯電話のカメラで撮っておいて正解だった。

 そうでもしないと迷子になっていただろう。

 なんて思いながら結婚相手の事を考えていた。

「白瀬開南丸とか言う名前だったかな?」

 はっきり言って船みたいな名前だな。


「……はたしてどんなヤツだろうか」

 一流企業の若社長だと聞くが、どんな姿かまでは分からない。

「デブか? ゴツ顔か? はたまたブ男か?」

 なんて独り言をブツブツ言いながら歩いていると……。


「メソメソ……」

 小柄な坊ちゃん刈りの男が道の端っこで一人悲しそうにしゃがんでいた。


「どうしたんですか?」

 無視するのも可哀想なので、この男に話し掛けてみる。


「恥かしながら迷ってしまって」

 まさか本当に迷子になってるヤツがいるとは。

 この人に少々呆れたが、このままほったらかしにしておく訳にもいかず、道案内してあげることに。


「ジーーッ」

 で、一緒に歩き始めたが。この男は何者だろうか?

 スーツを着ていたので多分施設の職員だと思うが、かなり頼りなさそうな顔している。

「オマエ何歳だ?」

 気になったので聞いてみた。


「はい、三十歳です」

「ブッ!?」

 驚いた事にこの人、俺よりも十二歳も年上だった。

「見えねぇ~~」

 思わず本音がポロリと出てしまう。


「あっ! すいません、失礼なこと言ってしまって」

 勢いで言ってしまったが、失礼な発言を謝った。


「気にしないでください。初対面の人は私の事を十代だとよく勘違いされるんですよ」

 この人は俺の無礼を気にする事なく気さくに振る舞ってくれた。

 人によってはチビな事を必要以上に気にするヤツもいるが、この人はまるで気にしてない。

 外見は十五歳ぐらいなのに精神はかなり大人なようだ。


 さて、話も程々に道案内をしてあげるのだが。

 結構歩いてしまったようで、目的地まで意外と時間が掛かった。

 歩いている間ずっと趣味の話ししてたが、不思議な程気が合って話しが弾んだ。

 そんなんだから途中で立ち止まって話しに没頭してしまった。

 そして目的を忘れて互いに話し続けたのだった……。




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