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原初の罪  作者: EVE
第2部 神々の庭
31/32

2-17

 カイルはアシュリーへと振り下ろされる腕をただ呆然と見ているしかなかった。


「きゃあっ!! 」


 アシュリーと影の腕が激突するその刹那。 何かが影とアシュリーの間へと割り込んだ。


「何ぼさっとしてやがる!! 」


「貴方は! 」


 アシュリーとカイルは突然何処からとも現れた人影にただ驚きの表情をつくる。


「ふんっ! 漸く成すべきことを理解したと思ったらこれか。 お前に少しでも期待していた俺が馬鹿だったぜ。 はぁあっ!! 」


 乱入者は力を込めて剣を薙ぎ、振り払う。 影は異常ともいえる速度で壁へと叩きつけられるも、なお止まらることなく、頑丈な岩壁を砕きながらその向こうへと消えていく。

 振り抜いた右手に持つ剣は、影に対応するように眩しく、そして白く輝いていた。


「アベル! どうしてここに! 」


 突如として現れた乱入者(アベル)に、カイルは驚きを隠せずに問いかける。


「ふんっ。 どうしてだと? お前のお粗末な頭は相変わらずだな。 自分が興味のあるもの以外を記憶しておけないのか? 俺はここでの調査を粗方終えた。 ()()()()()()()()()()()()()()()お前らを探していたら途轍もない気配を感じたんだ。 強大で禍々しい魔力とともにな。 まさかこんな空間が隠されていたなんて思ってもみなかったがな 」


「隠されていたですって? 私たちはただ階段をまっすぐに降りてきただけじゃない。 何処にも行ってなんか…… 」


「大凡検討はついている。 おそらくあいつの仕業だろうよ 」


 アシュリーの疑問に、アベルは出来上がったクレーターに向けて剣で指し示す。


『グオオォォオオオオ!!!! 』




 叫び声とともに洞窟壁が爆発したように破壊され、その中から影が飛び出してくる。




「らァッ!! 」


 アベルも同様に地を蹴り、凄まじい速度で影へと肉薄する。




「疾っ!! 」


 一閃 二閃 三閃 刹那の間に三度剣を振るう。 常人ではとても捉えきれない剣速だった。 しかし影も対応するように荒々しく漆黒の剣で受けたつ。 


 軈て剣戟は激しさを増し、二人を取り巻く暴力の風は嵐のような衝撃を生み出した。




稲妻の襲来(ライトニングボルト)!!! 」


 アベルの左手から解き放たれた稲妻が地面を抉りながら影を襲う。


 影は手に持っていた剣を地面に突き立てると、瞬時にバックステップにて距離を取る。


 影の手から離れた剣は、さらに影を纏い、凡そ二倍の大きさに変化した。 解き放たれた稲妻は突き立てられた剣を襲来し、爆音を立てて吹き飛ばす。


「ちっ! 無駄に思考は残っていやがる 」


 心底嫌そうな表情を作り、吐き捨てる。


『剣よ…… 』


 爆風で吹き飛ばされた筈の黒剣が影の手に収まる。


「嘘だろ…… 」


「何よあれ 」


 暴風の剣戟を見ているしかなっかたカイルとアシュリーは、影の持つ黒剣を見て絶望の声をあげる。 ()()()()()()()()()、禍々しい、黒い電撃を迸らせていた。



「厄介なヤツめ。 ウォーター(水よ)……ピュア(純真たれ)……メイル(纏え)…… 」


 アベルは剣を構えたまま詠唱し、生み出した水をその身に薄く纏う。


 影がアベルへ強襲し、剣を袈裟斬る。 アベルは斬りあげるように剣を振るい正面から受け止める。 迸る電撃がアベルを襲うが、撫でるように水の表面を馳しり、ダメージを与えることなく辺りへ霧散していく。


「残念だったな。 真なる水は電撃を通さねぇんだ……よ!! 」


 影はその話を理解したようにアベルの振るう剣技に逆らわず後ろに跳躍し、距離を取る。 そして瞬時にしなるように腕を振るい、剣を投擲する。


 空気を裂くような速さで飛んでくる漆黒の剣を、純白の剣を振り落とし切り捨てる。 開けた視界に影に纏われた腕が映る。


「糞がっっ!! 」


『ガァァアア!!!! 』


 尋常の数倍ほど大きくなった黒い腕は、硬質化し、純白の剣を叩き折ろうと幾度もの衝撃を与える。 辺りに響く金属音がその腕の硬さを物語った。 衝突と離脱を繰り返し、戦闘はさらに激しさを増していく。




「いい気になるなよ。 お前に本当の稲妻の剣を見せてやろう。 魔法付与・電撃エレクトリック・エンチャント・ソード!!!! 」


 蒼い稲妻が純白の剣から迸る。 弾ける魔力が空気を震わす。


武装変更・対なる剣チェンジ・ダブルセイバー!! 」


 アベルの左手には漆黒の剣がいつの間にか握られていた。 左右に剣を携えて、影へと肉薄する。 


「うおぉぉぉおおお!!! 」


 踏み出した勢いのまま剣を振るう。 純白と漆黒。 白と黒の剣撃が上下・左右、あらゆる方向から繰り出され影を襲う。 影は反応すらできず、その身に幾つのも切り傷を作り出していた。


電撃弾(ライトニングショット)! 」


 斬撃の猛攻から立ち直っていない影から素早く離脱し、魔法を詠唱する。 洞窟の天井に打ち出した電撃が天井を穿つ。 身の丈よりも巨大な崩れた瓦礫がその場から動けずにいる影を潰し、呑み込んだ。




武装変更・弓矢チェンジ・ボウアンドアロー…… 標準(セット) 」


 アベルの持つ剣が、詠唱によって真っ白な弓矢に変化していく。 鏃に魔力が凝集し、白い電撃が漏れ出す。 その姿は神々しくも美しく、まるで神代天使たちの弓を彷彿とさせた。


撃て(ショット)!! 」


 解放された矢は畝りをあげて瓦礫に衝突し、吹き飛ばす。 半径数Mに及ぶクレーターと地面を焦がす煙が辺りを漂う。



「終わった、のか……? 」


 呟くカイルの声が辺りに響く。



「いや、まだみたいだな…… 」



 アベルの声に応えるように、クレータの中心部にある地面が罅割れる。 地面から腕が生え、やがてその全身が顕となる。 確かに影はまだ健在としているが、その影の所々が解れ、満身創痍であると見て取れた。


『ググッ……ガァ 』


「そろそろ終わらせてもらうぞ 」


 純白の剣を構え、止めを刺す止めを刺す為に影へと向かう。 その前にアシュリーが飛び出し、必死の表情でアベルに訴えかける。


「待って! エルを……助けて! 」


「……無理だ。 あいつを元に戻す方法を俺は知らない 」


 無機質な声でアベルは告げる。 その宣告にアシュリーは絶望したように蒼白となる。


「そんな…… 」


「残念だが、もう殺すしかない。 」


 アベルは冷酷に返答し、アシュリの横を通り過ぎた。 


 突如地面から伸びた影がアベルを拘束する。


「クソッ! まだこんな力が! 」


 アベルは咄嗟に魔力を練るが、さらに影は強い力でアベルを拘束しする。


「ぐわぁぁあああ!!! 」


 痛みとともに魔力が霧散する。 影が伸び、アベルを天井へ、地面へ、洞窟壁へ叩きつける。


『グオォォォオオオ!!! 』


 影の口腔内で魔力が循環し、高まっていく。 純粋な魔力の塊が共鳴を起こし、まるでそこの空間を捻じ曲げたようにに景色を歪める。


「どれだけ魔力を込めてやがる。 ちぃ……、しくじったぜ 」



 見たこともない程、魔力が高まり渦巻く。 一際甲高い音が響き、そのチカラが解放された。


 闇を纏った魔力の弾丸がアベルを貫き、その身を焦がしていく。


「ーーーーっ!!! 」


 激痛が襲い、確実に生命力を削っていく。



「アベルさんっ!!! 」


 カイルが咄嗟に叫ぶが、苛烈な魔力の暴力に晒されたアベルは力無く脱力したまま応えない。


「そんな…….!! 」


 悲痛な表情を浮かべ、アシュリーは信じられないとばかりに声を上げる。



『ガァっ!!! 』


 影がアベルに向かって跳躍する。 怒張したままの片手でアベルの頸を絞めて、吊るすよう持ち上げる。


「ぐぅ…… 」


 抵抗もできないまま、苦しげに息を漏らすアベル。 影が更に力を込めて締め上げる。



『グルルルルル……… 』




 締め上げる反動で、不意にフードが捲れる。 長い白銀の髪が溢れて垂れる。



『ガァッ!!!! 』


 突如、衝撃に襲われたように締め上げる手を離し、影が後ずさった。 瞳孔が完全に開き、全身が震えている。


「ぐふっ! 」


 支えをなくし地に堕されたアベルは、荒い息をはきながら立ち上がる。


『オ……オ前ハ 』


 影が綻びはじめる。 苦しげに呻く声は、ひび割れた化物の声から、聴き覚えのあるエルの声が混じる。


「お前ハ、誰ダ…… 」






「俺は……誰でもない 」





 何処か悲痛な声は静寂に溶けて消えた………




二章完結です。

長く掛かってしまい、申し訳ありませんでした。


三章は年内に完結できるように配信する予定です(未定←)


一応ストーリーの最終話までの流れは出来てますので、間が空きすぎないように頑張ります。

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