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原初の罪  作者: EVE
第2部 神々の庭
25/32

2-11

思ったより、早く書けました!

今回は青春成分多め(笑)


それではお楽しみください!

 辺りは薄暗くなり、昼間に比べると随分と静かになった。

 まだまだ夜にかけて、盛り上がりを見せるであろう飲屋や酒場などからは、話し声や笑い声が聞こえてくる。


「久しぶりにみんなで飯を食べるのも、いいものだな」


 そう呟き、宿までの残りの道を足早に通り過ぎていく。



「戻った」


 部屋に入り、カイルに声をかける。


「腹減ったぜぇ。随分と遅かったんだな? 」


 ベッドに仰向けに倒れていたカイルは、身体をそのままに、顔だけこちらに向けて文句を垂れる。


「ああ、少しな……。アシュリーは? 」


「自分の部屋にいるぜ」


 俺はそれだけ聞き、扉に手を掛ける。


「カイル……」


「あん? 」


 俺の呼びかけに気怠そうな返事が返ってくる。


「その……すまなかった。色々とな」


 俺は照れを隠すように返事を待たずにそそくさと部屋を出た。視線の端にカイルの笑う顔が、見えたような気がした。






コンコンと扉を叩く乾いた音がする。

沈黙が辺りを支配する。時間にすれば数秒ほどだったが、永遠とも思える時の中で、逸る気持ちを必死で抑える。


「……はい」


 暫くの時間が経ち、ノックをした扉の向こうから返事が聞こえてくる。


「アシュリー、俺だ。エルだ……」


 そう答えた声は掠れ、喉が異様に渇く。暫くしても部屋の中の気配は変わらぬままだ。やはり話してはくれないか。ふとそう思うが、ここに来た目的を思い返す。

 いや、ここで引いては駄目だ。そう考え、もう一度ノックをしようと拳を握ったその時、小さく鍵の開く音が聞こえて、扉が開いた。


「どうしたの?」


 少しだけ開いた扉から目線だけを送り、アシュリーが尋ねてくる。


「少し話をしたい。部屋に入れてくれ」


 そう伝えると、アシュリーは少し目線を下に降ろす。一瞬の間を空けてから、どうぞと扉を開いて、俺を部屋へと招いた。


 部屋にはまだ、荷物が端の方に寄せられており、使われていない様子だった。

 それもそうか、カイルと一緒だったんだ。今帰ってきたばかりだろう。


「女の子の部屋をジロジロ見るものじゃないわ」


「そうだな。すまない」


 アシュリーに軽く窘められ、それもそうだと思い、素直に謝る。


「アシュリー。本当にすまなかった」


 もう一度深く謝る。一度言葉にすると、今まで言えなかった言葉が、口から次々と溢れ出てきた。


「アシュリー達がずっと俺の身を案じてくれていたのは知っている。知っていたのに俺は気づかないフリをしていた。俺は……怖かったんだ。またあの牛頭種(ミノタウルス)の時みたいに、二人が傷ついてしまうのが……。ただ、怖かったんだ」


 話すにつれ、息が詰まり、涙が溢れてくる。

 そうだ、俺は二人が傷付いた姿をみて、二人を失ってしまうんじゃないかと思ってしまったんだ。


「すまなかった……」


 手で目を覆い、涙を拭った。止めようと頑張ってみたが、どうしても溢れて止まらなかった。


 ふと、暖かい何かが俺を覆った。気がつけば、俺はアシュリーに優しく抱きしめられていた。


「そんなの、私もそうだよ。自分一人で背負いこんで、傷ついていくエルを見てるのが怖かった。そして腹が立った……。パーティメンバーで、仲間の私たちにどうして頼ってくれないのって。何よりそんな自分自身に一番腹が立った」


 顔をくしゃくしゃにしながら、アシュリーは思いを教えてくれた。


「ははは、凄い顔だね」


「お互い様だ」


 俺たちは力なく笑いあった。


 そしてアシュリーは軽く俺の胸を拳で叩いた。


「もうこんな心配、かけさせないでね」


 その眼は真っ直ぐに俺を見ていた。


「あぁ、分かってる」


 アシュリーの目をしっかりと見返し、頷く。


「ふふ、それじゃあ明日から頑張りましょう! 明日は行くんでしょ?」


「あぁ、その為に来たんだからな」


 そうだ、しっかりと切り替えて前を向こう。俺たちには寄り道する時間なんてないからな。


 この件が片付いたら、この都市の封印を確認しに行く必要がある。だが、俺にはそれよりも先にする事があるな。


「あ、アシュリー」


 扉をノックした時よりも強い緊張感が俺を襲う。


「どうしたの?」


 そんな俺の態度にアシュリーは、怪訝な様子を見せる。


「しゃ、謝罪の印だ。受け取ってくれ」


 何でもないように贈り物(プレゼント)を包装した箱を取り出して手渡す。

 初めはキョトンとした様子でプレゼントを受け取ったアシュリーは、ゆっくりとプレゼントへと視線を送ると、急にソワソワした様子をみせた。


「あ、ありがとう。空けてもいい?」


「勿論だ」


 遠慮がちに聞いてくるアシュリーに了承の意を伝えると、アシュリーはゆっくりと包装を解いた。そして、首飾りを見て、興奮した様に俺を抱きしめた。


「エル! ありがとう」


「お、おう!喜んで貰えてなによりだ」


 あまい香りが鼻腔をくすぐる。その匂いに俺が勝ってにドギマギしていると、目の前に首飾りが差し出された。


「着けて」


 アシュリーは俺の手に首飾りを押し付けると、その場で向こうを向いた。その姿をよく見ると、アシュリーの耳も少し赤くなっている。


 お互い、照れ隠しは苦手みたいだな。


 俺はそう苦笑して、首飾りをアシュリーに着けた。


「大事にするね」


 そうアシュリーはそうはにかんだ。



 よし、これでまたいつも通りだ。明日からはまた気合いを入れ直さないとな。そう心に決め、俺たち3人は、その夜ばかりは息を抜き、次の日に備えた。







 ーーーーーーーーーーーー





 果てしない草原が広がっている筈だった。


 しかし目の前に広がるのは広く焼け焦げた大地が続いていた。所々に転がっている黒い塊は、どうにか無事な所がある、数匹の魔物だった物体から、羽蛇種(ウィングスネーク)だという事が分かった。


「す、すげぇ」


 カイルが不意にそう零した。だが、これは凄い何てものじゃない。こんな圧倒的な暴力の跡を、俺は今まで見た事がない。


「これは……魔法の跡ね。それもとても強力な……」


 アシュリーが焼け焦げた大地を観て、そう推測する。アシュリーの言葉を受け、俺は1人の人物を思い浮かべる。


「強力な魔法。こんな魔法が放てる人なんて、俺が思いつくのは1人しかいねぇぜ」


 どうやらカイルも俺と全く同じ人物を思い浮かべたようだ。


「こんな所で会うとはな」


 いつの間にか黒いフードを深めに被った人物が、其処にはいた。



「……アベル!」


「ふん、随分と気安く俺の名前を呼んでくれるじゃないか」


 アベルは不快げに鼻を鳴らすと、アシュリーと俺を見て、驚いた様子をみせた。


「どうやら少しはマシになったようだな。ここであったのも数奇な運命なり……か」


 アベルは思案げに一言呟くと、俺たちに向き直った。


「お前達がここに来た理由は推測出来る。恐らく大量発生した羽蛇種(ウィングスネーク)の討伐だろう」


 黒く焦げた塊と化した羽蛇種(ウィングスネーク)を指差してアベルは告げる。


「ここら一帯にいたモノは俺が排除した。しかし、可笑しいと思わないか?」


「可笑しいって何がだ?」


 アベルの問いにピンとこない様子のカイルが尋ねる。しかしその問いに答えたのはアシュリーだった。


「ここが第三都市周辺っていうことね」


「正解だ」


 アシュリーの言葉に漸く腑に落ちた表情をしたカイルが言葉を繋ぐ。


「あぁ、なるほど! 羽蛇種(ウィングスネーク)が繁殖し、繁栄しているのは第三都市じゃなくて、第六都市レヴィア! 大量の羽蛇種(ウィングスネーク)がいるのは可笑しいってことだな!」


「一匹や二匹なら迷い込んだのだろう。しかし、これ程大量のここらにはいる筈のない(・・・・・・)羽蛇種(ウィングスネーク)がどういう訳か大量発生している……。恐らく誰かが手引きしていると考えるのが妥当だろう」


 アベルは、カイルの言葉に頷きそう答えた。しかし、魔物(モンスター)を手引きするなんて尋常じゃない。恐らくは……


「影が関わってるな」


 俺は思考を打ち切り言葉にする。“影”という言葉に、カイルは表情を固くし、アシュリーはピクリと肩を震わせた。


「恐らくその通りだろう。お前達はこの第三都市の試練の間に行け。もともと其れが目的だろう?」


 アベルは俺に目を向ける。


「俺は少し、調べたい事がある。恐らく向こうで落ち合えるだろう」


 アベルはそれだけ告げて、何処かへ消えていった。

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