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お久しぶりです。
2ヶ月更新されていませんって表情が出てしまいました。
寂しくなって、頑張って書き上げました!笑
お楽しみ頂けたら嬉しいです(^ ^)
ーー第三都市ベルフーー
第一都市から馬車で3日ほど走った位置にこの都市は存在する。俺たち冒険者にとって、移動時間は貴重で大切なものだ。
程よい緊張を保ち、クエストを遂行するための体調を整えたり、パーティメンバーとの交友を深め、連携を取る為の戦略を立てたり、その他のパーティと情報交換を行ったりと、この時間の利用方法はそれこそ考えれば考えるほどあるだろう。
しかし、この長時間の馬車での移動は楽しいものにはならなかった。
頬を撫で、あの時の感触を思い出す。あの時から俺たちはあまり会話をしていない。勿論パーティとして必要なことは話し合ってはいるが、お互いにそれ以上の干渉もしないまま、ただ依頼だけをこなす日々だった。
そんな俺たちに、この依頼が飛び込んで来たのは丁度1週間前だ。
【ー1週間前ー】
「しゃあ! 今日も大量だぜ!」
依頼報酬が入っている袋を掲げて、カイルが楽しそうに笑う。
新人として巨大蜂種を討伐した俺たちは、相変わらずEランクの魔物討伐の依頼を堅実にこなしていた。
この日は、都市に近い街道で犬頭人種が旅人や商人を襲うといった事が数件起こった為、その討伐に向かった。
「お疲れ様です」
にこやかな微笑みとともに、エミリアが労いの言葉を投げかけてくる。
「あぁ、ありがとう。次も何かあれば依頼を頼む」
礼とともに軽い返事を返す。俺がこういう風に返事しているのも、今回の依頼はエミリアが是非にと斡旋してきたものだったからだ。
なんでも、被害を受けたのはギルドに登録している商会の商人たちで、第1都市の街道近くで襲われたという事だった。そのため、迅速な対応が求められる依頼だったそうだ。
「そうそう、エミリアちゃんが紹介してくれた依頼、すっげぇ割がいい依頼だったしな! いつでも歓迎だぜ! 」
「そうね、わたしからも感謝させてね」
カイルとアシュリーがそれぞれお礼を述べると、エミリアが少し困ったような嬉しいようななんともいえない表情をする。
「皆さんからそう言われると少し照れますね。それにこの依頼事態は私でなく、ギルドマスターが直々に是非エルさん達にと言付けられたものですから」
「ガハハハっ! そういうなエミリア。貰った礼を素直に受け取るのも、ギルド職員の務めだぞ! 」
「は、はい!マスター! 」
エミリアが緊張したように、ぴょんっと背筋を伸ばして返事をする。
豪快な笑とともにギルドカウンター奥の扉からマスターと呼ばれた男が出てきた。
ギルドマスター……初めてみるが、何というか……。
「で、デケェ〜 」
隣でカイルの口から思わず言葉が出てくる。
だがその意見には同意だ。身長2mはあるだろうか。筋骨隆々のその肉体は歳を感じさせない。
確かもう、80を過ぎていたよな……。とてもそうは見えないが……。
「ふむ、お前さん達がエミリアの言っていた新人か。儂はギルドマスターのマギサ・ルイスだ。よろしく頼むぞ! エミリアの報告では新人だが、Eランクの依頼のみを受け、その全てを達成しているそうだな。レベルもステータスも申し分ないな」
ギルドマスターのルイスが手に持ったステータス証紙を見ながらそう話す。
「はい、パーティリーダーのエルロイドです。こちらがメンバーの」
「カイルだ、です!」
「アシュリーです」
それぞれが簡潔に紹介を済ませると、ルイスは面白そうに話しかけてくる。
「ガハハハっ!! そんなに緊張せんでもいいぞ! なに、儂の管轄するギルド所属の、期待の星を見たかっただけだ!」
バシバシと俺の背中を叩きつけて豪快に笑う。うおっ、凄い力だ。やはり、ギルドマスターの称号はだてじゃなさそうだ。この人は恐らくはパワータイプの冒険者だったんだろう。
「ルイスさん、その辺でいいんとちゃいますか? ほら、彼も痛そうにしてますやん。ここらで僕の紹介もして下さると嬉しいんやけど」
「おっと、そうだったな!」
いつの間にかルイスの側にはエミリアよりもひと回り小さい白いフードを被った男の子が立っていた。
「お初にお目にかかります。エルさん、カイルさん、アシュリーさん。僕はイーヴァン。第三都市に本拠を構える商人や。以後お見知り置き宜しゅうに」
イーヴァンは何処か独特な喋り方をして自己紹介した。
イーヴァン、何処かで聞いたような名前だな……駄目だ、思い出せない。
いや待て、もしかして。
「イーヴァンって、あのイーヴァン商会の!?」
「んー? なんだそれ?」
アシュリーが目を見開いてイーヴァンを見る。
「なんで知らないのよ! イーヴァン商会っていったら世界七都市で展開されている大商会じゃない! 私たちが普段何気なく買っているアイテムや武器なんかも全てこの商会の系列なのよ!」
アシュリーが呆れた様にカイルに言う。
「うんうん。その通りや。まぁ、僕の事は知らんでもしゃーない。道具買うのにワザワザ商会系列とか気にする冒険者はいはらへんよ」
イーヴァンはそうカラカラと笑いながら言う。
しかし、その眼だけは値踏みしたように俺たちを順に観ている。
一癖ありそうだな……。チラリとそう思い、直ぐに感情を仕舞う。
「丁重なご挨拶ありがとう御座います、イーヴァンさん。それで、俺たちにどの様な要件でしょう? 」
その場で一礼し挨拶を返すと、イーヴァンは嬉しそうに目を細めた。
「話が早く進むのは好きですね。Time is money !! 時間はどんだけお金があっても買えへん」
イーヴァンはそう言って金色の懐中時計を胸の内ポケットから取り出して鎖で吊るす。
そこに見えるのは黒い短長二本の針。針は休むことなく時を刻んでいく……。不思議な事に俺たちはその針の動きから眼を離せなかった。
まるで、その針の奥に見える何かを見ようとする様に……。
「さて! ほな、話の続きをしましょか」
「……! 」
イーヴァンは懐中時計の蓋を閉めると同時に魅せられた様な感覚は消え去った。
なんだ?この感覚は。まるで自分が吸い込まれそうだった。
「今のは……? 」
隣にいるアシュリーも不思議そうな表情をしている。
不思議な感覚を振るう様にかぶりを振って、俺はイーヴァンに向き直った。
「うんうん。切り替えは大切やで。さて、話というのは他でもない、商人が話すっていうことはもちろん勿論儲け話や! 」
イーヴァンは指をこちらに向けていい顔でそう告げた。
「ん? 誰か儲け話って今言ったか!? 」
まだぼーっとしてたはずのカイルが、急に食いついてきた。
「せや! 君らは知ってるか? 第三都市周辺に大量の羽蛇種が発生しているらしいんや! 彼奴らの鱗は良い防具の材料になる。」
「それを俺らが討伐して来たらいいんだな! 」
「その通りや、カイルくん。一匹分の皮10枚で銀貨1枚や! 勿論魔石は別料金出しまっせ? 」
イーヴァンはにやりと笑みを浮かべて揉み手している。
「ぐふふふ。それはええ条件やね、イーヴァンさん? 」
カイルも合わせて揉み手する。
「アンタはなに合わせてやってんのよ! 」
「痛っ! 」
アシュリーの鋭いツッコミがカイルの後頭部を襲った。
「だってよー」
「だってじゃないでしょ。エル、どうするの? 」
後頭部を抑えて言い訳をするカイルを切り捨てて、アシュリーが目を合わせずに尋ねてくる。
そうだな、第三都市か。あの都市にも封印がされているはず。
ついでではないが、いつかは行く必要がある。丁度良い機会だ、調べてみるか。
「お受けしましょう、イーヴァンさん。出発はいつにしますか? 」
そう考え、今だに揉み手をしているイーヴァンに了承の意を伝える。
「流石エルさん! 受けてくれると思った通りや。せやね、今から丁度4日後に第三都市行きの馬車が出るはずや、その日に出発してもらいましょか」
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過ぎてゆく景色を眺める。視界にはポツポツと歩いている冒険者風の二人組や、商人と思わしき人が繰る馬車が見えてくる。
そろそろ着く頃か。
俺は何気にそう考えると、御者台からこの3日で聞き慣れた声が聞こえてきた。
「もうそろそろ着く頃や、降りる準備してや! 」
御者台からこちらに顔を向けてイーヴァンが言う。
「うっしゃー! やっと着くぜ! これで固い所で寝なくても済むぜ! 」
「そうね、とりあえず私はシャワーを浴びたいわ」
二人とも嬉しそうだ。まぁ当たり前か、俺も3日間の馬車での移動で窮屈な思いをしていたからな。
今日は精一杯羽根を伸ばして依頼は明日から取り掛かろうか。
そこから暫く進むと、都市の関所の扉で馬車がとまる。
イーヴァンと駐屯している騎士とのやり取りが行われた後、門がゆっくりと開いた。
「第三都市へようこそ、くれぐれも問題を起こさぬ様に 」
騎士の声を後に、馬車はゆっくりと歩を進めて扉をくぐっていく。




