表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐代行  作者: 射月アキラ
第2章
7/24

01

 テーブルの上には、ヴァージルの残した一つの実包と、一枚の紙切れが残っていた。


 重い頭を振り、無理やりに視線を反らす。どんなことを言われても、どういう風に考えても、今は「復讐」という言葉を思い出したくなかった。


 ヴァージルが去ってから、日が沈んで昇るだけの時間が過ぎている。夜更かしをしたつもりは全くないのだが、寝不足特有の体のだるさが残っていた。


 眠りが浅かった。悪夢を見ては目を覚まし、もう眠りたくないと思いながら睡魔に襲われる。そんな一晩だった。


 グレッグ・ブリュー。


 あの男の夢だ。


 目からは殺人鬼の薄ら笑いが。鼻からは血と硝煙の匂いが。右足からは激痛が。両手からは体温を奪われそうな金属の冷たさと、想像を上回る銃の重さと──どうしようもない震えが。


 夢を見ているときの恐ろしさもさることながら、なによりもつらいのは、震える四肢を抑え込むようにしてベッドで丸くなって目が覚める、あのやりきれなさだ。


 これはきっと、いつまでも続く。あんな出来事を忘れるなんて、僕には想像することすらできない。


 殺人鬼が死んだところで、それは変わらないだろう。


 ため息を吐きだす。復讐代行なんていう蜜に釣られるのがバカだったのだ。そんなことをしたって、なんの意味もない。僕の記憶は消えたりしないし、問題はなにも解決しない。


 用事を済ませて、気分が落ち着いたら、ヴァージルに連絡を入れよう。


 僕はもう二度と、あの男を自分から思い出したくない。





 少し鮮やかすぎただろうか。


 墓石の上に花を供えるとき、そうやって自問するのが癖になりつつあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ