四話 町
ガヤガヤと五月蝿い通りにある屋台通り。
店先に幾つかのテーブルがあり、その一つに座って安い粥を啜る。
時折俺の装備を盗もうとするこそ泥には、拾っておいた小石をぶつけ追い払う。
此処は迷宮深遠の淵に一番近い、名前の無い町。
噂では迷宮主によって作られただとか、人の姿を取る魔物が住んでいるだとか、神様が信仰を集めているだとか、異世界から来た勇者が居るだとか。
全て事実である。
月に一度発行される新聞には迷宮主からの今月のお勧め魔物と言う記事や、迷宮主が推す売り出し冒険者なんて記事が載るし、今食べている粥は目には毒だが人畜無害なスライム娘が売っている。
町の広場では、神様の一柱が有難い説法を説いているし、冒険者ギルドでは地球からの召喚勇者が雑用依頼を請けている。
つまりは何でもありな町だと言う事だ。
名前が無い理由は、迷宮主が付けるのを面倒臭がっただとか、誰も正式名称を呼べないだとか、名前公募しているが誰も出さないだとか言われて居るが、そこだけは不明である。
調べようとしていないだけだが。
迷宮主は会いたいならば、迷宮を攻略しろと言っており、配下の魔物達曰く、町中で姿を見掛ける事は無いらしい。
目的の為にはやはり迷宮攻略が第一だと言うのは判っていた。
腹を満たした俺は、今回の戦利品を換金しに冒険者ギルドに来た。
テンプレ通りのギルドで絡まれる事態と言うのは、時折あるが大体はヤラセである。
それはさておき、換金する際に受付嬢にギルドカードを更新しろと言われる。
恐らくは拠点を移す前に更新した情報では、駄目だと言う事だろう。
完全中立な立場で、現代日本も真っ青な程の情報保護を誇る冒険者ギルドなので、素直にギルドカードを提出する。
直ぐに返って来たギルドカードを見る。
ヒビキ 種族:人間 ギルドランク:B
筋力:48/D+ 耐久:31/D− 敏捷:73/B
魔力:27/E+ 精神:41/D 信仰:39/D
器用:62/C+ 感知:66/B− 幸運:47/D+
ランク:D+
スキル
【異界資質:格闘】【上級剣術:5】【投擲:4】
【料理:3】【全魔術無効】【鑑定:4】【軽業:6】
ステータスについては詳しくは説明しない、見たままだからだ。
ただ、一般人の能力値は10程度であり、ベテラン冒険者の得意能力値で40程度だと伝えておけば分かりやすいのでは無いかと思う。
スキルに関してだが、スキル名の後に数字が書かれているのが修得技術、書かれていないのが先天技術である。
修得技術の後に書かれている数字は、熟練度であり7を越えると上級のスキルに変化する。
俺の場合で言えば上級剣術のような。
変わって先天技術は熟練度が表示される事は無い。
生まれつき、そのスキルを極めているからであるらしいが、中には先天技術として普通に修得技術として覚えるスキルを持つ者も居るらしい。
そして、スキル表示されるのは7つまでであり、実際に効果があるのも同じく7つである。
実際には修得しているスキルもあるが、入れ換える為には莫大な予算か、専門のスキルが必要である。
さて気になる換金額ではあるが、サイズの問題か意外とミノタウロスのドロップが高く、小銀貨二枚大銅貨四枚となった。
この世界、非常に貨幣や数字の計算が面倒である。
普段の数字は十進法だが、重要な部分では七進法、貨幣の計算に至っては全くの謎である。
まず金銀銅にそれぞれ大中小で九種類ある。
小銅貨が一番安く、大金貨が最も高い。
小銅貨十二枚で中銅貨、中銅貨三枚で大銅貨。
価値としては、大銅貨一枚あれば、三食食べれる額である。
大銅貨七枚で小銀貨、小銀貨四枚で中銀貨、中銀貨十五枚で大銀貨。
価値は銀貨があれば最低でも一週間は宿に泊まれると言った程度だ。
大銀貨八枚で小金貨、小金貨十四枚で中金貨、中金貨十枚で大金貨。
価値はもはや不明、魔術道具等は最低でも金貨である。
まあ、今回の換金額は二週間程宿でゆっくり出来る額だと言う訳だが、いざというときの備えには足りない。
この世界、理不尽な事に迷宮で死んでも死体を持ち帰れば生き返る事が出来る、但し魔素変換によって能力値の大半が失われる。
まあ、某3Dダンジョンゲームよろしく、絶対では無いし、莫大な金をぼったくるのだが。
しかし、いざというとき運んで貰うパーティーメンバーを探さねばならない。
ダメ元で受付嬢に聞いた所によると、現在前衛のメンバーを探している者が居るらしいので会う事にする。
生産活動を行える者らしく、依頼を完了したら伝えてくれると言うので常宿としている店の名を伝え、今日は一先ず宿に向かう。
一人で迷宮攻略を目指している訳じゃ無い、会うのが楽しみだ、気の合う奴だと良いんだが。
次回、仲間が登場。
希望があれば主人公の技コマンド表など設定もあげます、が需要ありますかね?
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