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三話 ミノタウロス

 迷宮の中は異界である。

 その言葉が嘘偽り無いように、上に浮かぶ太陽が中天まで昇る頃、俺は帰還の為に歩き始めた。

 辿り着いた9階層から帰還を始め、5階層の広間に入った時だった。

 向かい側にあった筈の広間の入口が無くなっており、入ってきた通路も振り返れば石造りの壁で塞がれていた。

 迷宮主は侵入者を監視している、その言葉を思い出したのはそんなタイミングである。

 広間の中心が輝き、地面から牛頭の魔物が生えてくる。

 ミノタウロス、ギリシャ神話に於けるミノス迷宮の主だが、それとは関係無く迷宮に発生する上位の魔物。

 正確に言うならば、今回は明らかに迷宮主によって生み出された魔物、間違い無く監視されていると言う訳だ。

 しかも冒険者ギルド内で、七段階に分けられる魔物の階位の内、4階位に属する強敵の魔物。

 1階位はゴブリンやコボルト等、単体ならば腕自慢の村人でも狩れる魔物。

 2階位はオークや、軍隊レベルになったゴブリン等、初心者を卒業するレベルの冒険者が複数で討伐する魔物。

 3階位はオーガ等、膂力が非常に優れた魔物や、ガーゴイルやゴーレム、ウェアウルフ等討伐する知識が必要な魔物でベテランの冒険者ならば単独討伐が可能な魔物。

 そして4階位、ベテランの冒険者が複数必要な魔物であり、ミノタウロスも此処に属する。

 5階位以上は基本的に単独で戦う魔物では無い、勿論ながら単独で討伐するような化け物染みた連中も居るのだが、それはまた別の話。

「くそ、全くついてないな……っ」

 悪態を吐き出す、間違い無く単独で戦う相手では無いのは、間違いないのだが、俺では破壊不可能な迷宮の壁に囲まれた時点でやらざるを得ない。


「勇者だとか英雄だとか名乗るような連中に相手させろよな……」

 先手必勝と言う事で、全身を現したミノタウロスに向け、隠しの投剣を放つ。

 狙ったのは目だが、振るう腕で簡単に弾かれる。


 だが、それで良い本命は一気に距離を詰めた上での一刀。

「う゛も゛お゛ぉぉぉぉお!!」

 一撃の元に、右足の腱を断ち斬られた痛みに、咆哮をあげる。

 その大音声は衝撃波を生み出し、俺の身体を吹き飛ばす。

 それはこの世界に有る限り、影響を逃れられない能力値ステータス技術スキルの力。

 まるでゲームの様だが、この世界にはステータスがあり、値が高い程人智を越えた力を振るう事が出来る。

 勿論ながら、俺が一足跳びに距離を詰める事が出来るのは、この能力値の力である。

 恐らくではあるが、衝撃波を生み出す咆哮はこのミノタウロスに迷宮主によって付けられた先天技術だと思われる。

 先天技術と修得技術、読み《ルビ》こそ両方スキルではあるが生まれ持つ物と会得する物、大きな違いがある――が、それは今考える事では無い。

 【衝撃】か、【衝撃咆哮】のどちらかの先天技術があるのだろう、初手で気付けたのは大きい。

 衝撃波で跳ぶのはともかく、防げない状況でダメージを受けるのを防げるからだ。

「ミノ助が持つのは――【筋力増加】に【耐久増加】、それに【激昂】辺りだったか、んで追加が【衝撃】か【衝撃咆哮】に【上級迷宮武具】、下手すると【再生】系もあるな……大盤振る舞いだな」

 体勢を整えながら、改めてミノタウロスを見る。

 足の腱を切ったにも関わらず、ダメージが無いかの如く、こちらに歩いて来るその手には、巨大な戦斧が収まっており、上等にも胸当てなんぞを身に付けている。

 普通に生み出されたミノタウロスならば、良くて棍棒に腰ミノ程度である事を考えるならば、迷宮主によってかなり強化されているミノタウロスなのは間違いが無い。

「ちぃとばかし、本気出さないと駄目っぽいな」

 迷宮主に力が知られる以上に、ミノタウロスの肉が食えなくなるのも問題である。

 ミノタウロスはオークなんかと違い、相当上質な牛肉の扱い。

 滅多に出会えないし、狩れないのだが……流石に命のが大事だと割り切る。


「悠長に歩いて来るなら一撃必殺、貯めたゲージ消費技だ――」

 この世界は世界法則以上に個人の資質が重要である。

 世界法則はRPGなのだが、どうも俺の資質、あるいは先天技術は格闘ゲームあるいは横スクロールアクションだと言う事。

一撃フェイタル必殺キリング――本日の十割・天を割る一撃」

 一足、間合いを詰め上段からの一閃。

 ミノタウロスが上げ損ねた戦斧の柄毎その身体を真っ二つに断ち斬る。

 何処からか『フェイタル・K.O.』と声が響いて真っ二つのミノタウロスの肉体は光の粒子となる。



 俺の放った技は一撃必殺オーバーキル技ではあるが、チートでは無い。

 確かに当たれば一撃必殺と言う馬鹿げた技ではあるし、体力ゲージもフルで打てるが――格闘ゲームをやる人間なら判ると思うが、所謂浪漫技、初見殺し……あるいはわからん殺しである。

 格ゲー風に言うならば下段ガード不能、ガード後確定カウンター、十割ダメージ、削り無し7ゲージ消費技、と言った所か。

 解らない人の為に言えば7本ある必殺技ゲージ全て使った上で、立った状態で刃を防御され無ければ一撃必殺、防御されたら殆どの反撃を受けると言う技だ。

 ちなみに必殺技ゲージは俺の感覚で理解出来て、相手が強い程貯まりやすく雑魚を相手に貯めるならば、一日で一本溜まるかどうかである。

 そして、ミノタウロスが消えた理由だが、この系統の技で殺した場合、強制的に魔素変換されると言う謎の特性を持っている。


 強制魔素変換によって出てきたのは魔石、しかも無属性。

 大きさはそこそこあるが、二束三文の代物で。

 拾って、気付けば開かれていた広間を抜けて地上を目指す。

 町で何かしら食事をするとしよう。

主人公は横スクロールでは無く、格ゲー仕様です。


【今回の戦闘内容】

開幕飛び道具牽制

ガード硬直ステップ

めくり下段

相手が余裕で歩いて来た所に上段十割技(わからん殺し)


実に格ゲーしてますね。

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