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十七話 武器庫

前話、ヒビキとアモンの会話を修正しています、よろしければご確認下さい。

読まなくても、大筋は変わっていませんが。

「それでヒビキは何しに来たの?」

「あぁ、それなんだが預けてあった俺の得物を取りにな」

 俺とコココは話しながら武器庫の奥へと進む。

 俺の様に現状不在だったり、使い手の居なくなった武具は奥にしまい込むようにしたんだとか。

 納得ではあるが、今まで誰もやらなかった作業である。

「そう言えば、新しいお気に入りでも見つけたのか? 小銭稼ぎやら、冒険者やらやってるみたいだが」

「あーそれ? もう手に入れたんだ、コレ!」

 笑顔で腰に提げていたを戦槌(メイス)見せて来る……戦槌?

 外見は持ち手と言うか、50センチ程の棒が底から生えた白磁製に見えるティーポットであった。

 国に仕えない数少ない神聖騎士、さらにはもっと少ない騎士職の草原小人、彼女の趣味は『変わった武器を集める』事であった。

 いわゆるゲームに於けるネタ武器使いと言う奴だ。

 ずっと凍ったままの俺の身の丈程あるマグロだとか、投げるとロケットの様に飛び回る薩摩芋だとか、自動で足の小指に当たりに行く防御無視効果の付いた辞書サイズの本だとか、使えない訳じゃ無いが外見は非常にネタに満ち溢れた武器を、彼女はこよなく愛しているのだ。

「……ソイツはどう言った得物なんだ?」

「ロイヤルメイスって言って聖属性に火属性、水属性の三種類の属性を保有した上に不壊の魔術が掛けられた逸品です」

 属性武器、それは通常の武器威力に加え、属性ダメージを追加で与える非常に優秀な武器だ。

 三属性付きで更には不壊魔術付きと言うならば、まともな武器ならずとも国宝級の逸品だと言える。

「相当値が張りそうだな……」

「問題があってねー、使用条件に女性で騎士職、何れかの上級神術ってのが最低条件で、完璧に扱うなら侍女あるいは執事の技術も必要なんだよ」

 どんな奴が作り出したのか非常に気になる条件である。

 侍女あるいは執事の女性神聖騎士、いわゆる姫騎士と言う奴なら使えない事も無いかも知れない。

 執事でもありと言う事は男装の麗人もありと言う事だろうか。

「執事か侍女持ってないと、振った時に中身が溢れるんだよねぇ」

「外見からは理解できるが、武器としては理解出来ない」

「ロイヤルミルクティーが常に満タンで入ってるんだ」

「……成る程、わからん」

 俺は早々に理解する事を諦めた。


「んじゃあヒビキが持っていくのはコレと、あの(・・)短剣で良いんだよね?」

 武器棚に立て掛けてある鈍色の斧槍(ハルバード)をコココがぺちぺちと叩く。

 長さは2.4メートル、重量は不明。

 魔力自体をを阻害する特性を持つ真鋼を素材とした逸品だ。

 切れ味も鋭く、耐久性もかなり高い、更には鋼と言いつつも十全に威力はある癖に、非常に軽い。

 ただし、俺の持つ『格闘ゲーム機動』程では無いにしろ、魔力自体を阻害する為に魔術を操るこの世界の住人達には、使い勝手があまり良くない。

 稀に剣だけで身を立てようとする者が剣を作るのに使う、その程度の素材だ。

 だが、元より魔術の効果が無い俺からすれば真鋼製の装備は一切問題無く使える。

 問題は整備が非常に面倒なのと、取り扱う鍛冶師がほぼ居ないと言う事だ。


 もしかしたら来た当初に諦めた刀も真鋼なら、と思い付く。

 まぁ、若気の至りと言うか、この世界には刀が存在する。

 長剣にある程度慣れた後、一時期刀を扱っていた時期があるのだが、太刀筋を誤り曲げたり、骨を叩き切ってしまい欠けさせたり、重い攻撃を受け止め折ったりと散々だったので、使うのを諦めた。

 剣の扱いを身に付けた今、耐久性の非常に高いこの素材を使ってなら、と考えたが、また曲げたり折ったりした時にショックを受けそうなので止める事にする。


「ヒビキ、後これでしょ?」

 コココが持って来てくれたのは黒色――真鋼以上に魔力を阻害する無魔鋼製である――のアタッシュケース。

「あぁ、確認用に開けるぞ」

 開くと俺の目にも判る程、濃密な魔力が溢れ出す。

 中に入っているのは、符術により封じられている筈の拳銃(リボルバー)

 元の持ち主は狂わされた(・・・・・)殺人鬼、傭兵時代の成果の一つ。

 数々の魔改造が施され、銃剣付き(バイヨネット)の拳銃である。

 更には魔力により自動で銃弾を装填する機能を持つが、拳銃自体が尋常ならざる魔力を持ち、持ち手を侵食する呪いとなっている。

 濃密過ぎる魔力は本人だけでなく、周囲にも影響を及ぼす。

 故に封じられている訳だ。

「さて……今なら言う事聞いてくれるかなっと!」

 左手の小手にも期待――『銀の腕(アガートラーム)』なんて名乗り、俺を救うのなら――して、左手で銃を手に取る。

 魔力が俺の左腕を這い上がり、包み込まれる。

 俺に効果が無いのはあくまで、『魔術』、形式化した魔術で無く、魔力自体は俺には無力化されない。


 左腕に沸き上がるのは破壊、殺戮、失望、絶望。

 ――だが、それだけ。

 その程度は元から持っている、壊れ乞われたおReN――



「……キ……ヒビ……ヒビキ!」

 意識が飛んでいたらしい、呼び掛けていたコココを見る。

「あぁ、すまん……もう問題無い」

「でもその左腕……」

 コココの言葉に、自分の左腕を見る。

「中二か」

 左腕が呪いの影響か、黒く染まっている上に、赤く蔦が這い上がるような紋様が描かれていた。

 だが、いたって問題は無く、これ以上侵食する事も無さそうだ。

「大丈夫なら、良いんだけど……」

 心配そうに俺を見るコココの頭をぽんぽんと撫で、問題無いと伝える。


 一度アタッシュケースに戻すが、左腕は戻らない事に軽くため息を吐く。

 背に斧槍を背負い、左手にアタッシュケースを持つ。

「あぁ、そうだ……出る前にアモン団長からお前にだと」

 懐に入れたままだった封筒をコココに渡す。

「わかった……なんだろ?」

 受け取りいきなり中を確認しだす。

 その表情は更に困惑を深める。

「団長は何だって?」

「渡して見送ったら、マアナ……さっきの子連れて来いって」

「良くわからんな、まぁ良い副長帰って来るらしいからさっさと……」

 武器庫の扉を開ける。


「――私が帰って来るから、何ですか? ヒビキさん?」

 目の前にその副長が立っていたのだった。

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