十五話 貿易都市
大変お待たせしましたが、非常に短いです。
『街』から馬車に乗ること三日、街と各国への貿易を一手に引き受ける貿易都市アルテナに到着した。
実質アルテナも迷宮主の支配下ではあるのだが、商人は気にせず、お偉方もまた気にしていない。
要はワンクッション置いている、と言う事が大切な訳だ。
さて、俺が貿易都市アルテナに来た理由だが、俺が以前所属していた傭兵団の拠点の一つであり、装備品の一部を預けていた拠点でもある。
対人なら大概の相手は無手でも何とか出来るが、魔物相手の場合だと無手ではどうしようも無い相手が居る。
例えば竜種、実物を見た事は無いが、話に聞くだけでも、最低体長5メートルを越え竜種特有の分厚い鱗に守られ、牙や爪以外に炎や氷、あるいは酸等のブレス、更には魔術を攻撃手段として持つ。
それ以外にも、スライム等は素手では触れられる相手では無いし、人型でもオーガ等になれば与えるダメージを再生能力が上回るだろう。
迷宮で戦った相手で言えば、ゴブリンロードはもとより、ミノタウロスにも手が出なさそうだ。
町中で馬車を降りた俺は辺りを見回す。
街とは違う活気に満ちた町並み。
町中で働く魔物の姿も見えないが、冒険者らしき姿や人間以外の姿は幾らか見える。
街では『まだ使えない』冒険者を受け入れるのが、此処なので大半は見習いや所謂初級あるいは中級と呼ばれる冒険者だ。
ふと、誰かに見られている気配を感じ、辺りを再び見渡す。
しかし見えるのは、日常を過ごす街の住民や、何かの依頼中だと思われる荷物を担いだ冒険者らしき姿ばかり。
こちらを注目する人物は居ない。
「……気のせい、か?」
短く呟くと目的地へ向け足を進めた。
俺が所属していた――正確にはまだ所属しているのだが――傭兵団の名は『アモン傭兵団』、その名の通りアモンと言う名の男が団長を勤める傭兵団であり、団員数もさる事ながら一部の団員の強さから最強の傭兵団と呼ばれる事もある。
アモン自体は昼行灯を気取り滅多に実力を見せないが、神により公爵、正確には神公爵の爵位を受けている。
神の与える爵位は人が与える爵位よりも上位となる、が与えられる基準は今一つ判っていない。
昼過ぎた頃、アモン傭兵団の拠点の一つ――ソロモンズギルドと呼ばれる傭兵ギルドへと――辿り着いたのだった。
傭兵ギルドとは、基本こそ冒険者ギルドと同じ様な存在であるが、利用者が傭兵である事と、素材の買い取り等はやっていない事から、冒険者ギルドよりも多少荒っぽい。
――ソロモンズギルドに関してはまた後日。