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十三話 銀の腕

ヒビキ一人称ではあるけれど。

「――成る程、久々だが中々に面倒な(とき)に場ではある」

 響の肉体の損傷により、叩き起こされた私は『銀の腕』(アガートラーム)が顕現した左手で、目の前に居るゴブリンロード等と呼ばれる小鬼の剣を止めて呟く。

 私の記憶は未だ響には伝わらぬが、響の記憶は私に伝わっている。

 コレの相手はともかく、外の広間の小鬼共の数はあやつらには辛いだろう。

 もう少し使い物になる魔術師ならば良かったのだが……まあ、私に彼の仲間を決める権利等あるまい、出てきたからには少しばかり手伝ってやるだけだ。

「Ghoooaaaah!」

 小鬼の王が吼える、撫でる様な威圧が肌に触れる――ふむ。

「まずは身体を治してやらねばな、代償はコレで良いか」

 吹き飛ばない私に焦ったのか離れようとする小鬼、そうそう逃がす訳にはいくまい。

『癒せ――再生――生命回帰――命留の大釜――』

 掴んだ小鬼の剣を代償として、銀の腕より放たれる力に変換する、剣は力となり銀光に消える――そして私は世界の理を無視した『魔法』を謳う。

『――治釜ダグデの大釜』

 力は銀の光となり、響の肉体を癒す、防具まで直らないのは致し方あるまい。

 鍛冶の宝具、あるいは秘宝など、私には無いのだから。

「無手では効率が悪いか――」

 圧倒的な力の差に、逃げ出そうとしている小鬼を一先ずは無視し、足元に転がる剣の残骸を拾い、力に変換――砕けていようと、彼の力となり続けた刃は、十二分に銀の腕を満たす。

『貫け――神速――腕を伸ばせ――光撃の槍――』

 謳う詠唱と共に、銀の腕が纏う力が輝く斧槍の姿になっていく。

 小鬼が隔てていた鉄格子を開け、脱兎の如く逃げ出している――が、逃がす気は無い。

『――穿槍ブリューナク』

 左手の中に生まれた輝く斧槍を放つ。


 一陣の光が疾る。

 小鬼の王を貫き、小鬼の軍団の中心に突き刺さったその一撃は、肉、鎧、骨、武器、石畳、迷宮――一切の区別無く破壊する。

「惰弱、流石にこの程度か」

 歩き広間へと出る。

 彼の仲間が居る場所を見れば、三人とも健在。

 但し魔術師の小娘は気を失っているらしく、横になっている。

 恐らくは魔力の枯渇だろう、暫しの休息で治る程度か。

 錬金術師も執事も満身創痍、片付けて戻るが得策か。

 とは言え、先の一撃で小鬼の大半は死に、生き残りも戦意無く、逃げ出している。

 ならば問題あるまい――魔素変換と言ったか、私とは理が違うが変換自体は問題無い――無駄の多い術式故、少し弄り小鬼共を纏めて変換する。

「ヒビキじゃない……誰?」

 錬金術師が警戒しながら問い掛けて来る。

「響に間借りしてる者だ、彼はまだ知らない――まだ知られてもいけないがね」

「理由がおありですか」

 私の答えに執事が質問を重ねて来たので頷き、答えとする。

 まだヒビキには知られる訳にはいくまい、今回は場も余りよろしく無いからな。

「――身体を此で響に返す故、脱出は二人……いや三人で頑張っていただこう、身体としては血を失い過ぎたからな――あぁ、命には別状が無いから、慌てる必要は無い」

 そこまで伝えると、私は目を閉じ再び意識を彼の身体の奥底へと沈めた。

 銀の腕も再び元に戻るだろう――なるべくならば、目的の刻まで出番が無い方が良いのだが――

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