十一話 ギルドカード
本日二話更新、二話目。
ギルドカードのバージョンアップ、その内容は職業の表記と、今まで隠されていた能力補正の開示、ギルド以外での控え技術の一部表示、更には技術の詳細の表示機能と言う今までを考えると、大盤振る舞いなバージョンアップであった。
代わりに終わるまで4日と言う時間がかかった訳だが。
名前:ヒビキ 種族:人数/来訪者 職業:剣闘士
ギルドランク:B
能力
筋力:58[10]/C 耐久:36[5]/D− 敏捷:85[12]/A−
魔力:0[×0]/F− 精神:46[5]/D 信仰:29[−10]/E+
器用:74[12]/B 感覚:74[8]/B 幸運:37[−10]/D−
技術
【格闘ゲーム機動】【魔術無効】【上級剣術:6】【複数投擲:1】【軽業:6】【格闘:4】【回避:2】
控え技術
【料理:4】【鑑定:6】【盾術:3】【上級重斧槍:4】
新しい表記[]の内に書かれているのが能力補正らしい。
職業毎に補正が変わるらしく、ギルドもその情報収集で忙しくしている。
また一部の技術の名前が変更され、効果も変わったらしい。
技術が変更されているのは、正式にパーティーを組む事にしたので調整した結果だ。
神の力による影響もあり、セットされている技術は能力値では無い部分に影響を及ぼす。
魔術技術を持たない者は魔術を扱うのに、持つ者の数倍の労力を払う、あるいは武器技術を持つ者は持たない者よりも数段強いと言った具合に。
入れ換えたのとは別に、全体的に熟練も上がり、上級技術に上がった物もある。
複数投擲は、投擲が進化した技術であり、一度に複数、現状では3つ同時に投擲出来る。
俺の持つ先天技術も名称が変更されていた。
早速追加された機能で、詳細を見てみる。
【格闘ゲーム機動】:異世界に於いて娯楽とされるゲームの動きを再現する。
全ての攻撃にダメージ補正を加え、最大7ゲージの必殺技ゲージを持つ。
代償として魔力が0となり、自身の魔力による魔術を扱えなくなる。
【魔術無効】:あらゆる魔術を無効化する。
一部の神の力以外、魔力関連の影響を受けない。
実は異世界に来てから既に五年程の時間が経っているが、魔術を扱えない理由が魔術無効では無く、格闘ゲーム機動にあるとは思わなかった。
魔術を扱えなくなると書いてあるが、格闘ゲームの炎を出したり雷を放つ様なキャラ、あるいはそもそも魔法使いキャラの場合はどうなるのだろうか。
俺がそんなタイプじゃないので不明だが。
そしてさりげなく名称が変化した魔術無効だが、一部の神の力以外は全て無効化すると言う、所謂壊れ性能である。
物理的な飛び道具以外効かない格ゲーキャラ、遠距離戦が無効なだけで、相当強キャラでは無かろうか。
そこまで格闘ゲームについて詳しい訳では無いが。
「ヒビキ、確認」
アリーシャがギルドカードを渡してくる。
信頼されていると言うより、口頭で説明するのが面倒なのではと疑ってしまう。
だがまあ、許可が出ているならと確認する。
名前:アリーシャ 種族:獣人/狐 職業:錬金術師
ギルドランク:C
能力
筋力:8[0]/F 耐久:16[2]/F+ 敏捷:32[−5]/E+
魔力:60[13]/B− 精神:46[2]/D 信仰:39[0]/D
器用:82[10]/A− 感覚:64[8]/B 幸運:48[5]/D+
技術
【錬金術】【薬効強化】【調合強化:5】【治療:4】【真贋:4】【精密投擲:6】【罠:6】
控え技術
【短剣:2】【回避:5】【直感:3】
基本的には変わっていない。
治療が前に見た時より1上がった程度だろうか。
能力値の上下は、修正が入った故だろう。
「ヒビキ様、本来ならばあまり見せるのは得策で無いとわかっておりますが、私たちのもご確認を」
「……良いのか?」
ギルドカードを差し出して来るミシェルを見る。
ミシェルが頷く。
「おそらくはリーダーとして、正しい判断をして頂けると」
期待をかけられている、と言う事か。
なら曲がりなりにもリーダーとして、その期待に応えなくては。
名前:ミシェル 種族:人間 職業:運荷/執事
ギルドランク:D
能力
筋力:31[6]/E+ 耐久:29[8]/E+ 敏捷:31[7]/E+
魔力:21[4]/E− 精神:39[7]/D 信仰:15[4]/F+
器用:44[11]/D+ 感覚:32[5]/E+ 幸運:16[2]/F+
技術
【中級料理:6】【野営:5】【中級短剣:6】【軽業:5】【運荷:4】【下級闇魔術:3】【執事:M】
控え技術
【暗殺術:1】
まずはミシェルのギルドカード。
一般職業と、冒険者としての多重職業持ち。
一般人からみたら遥かに高い能力値。
技術もかなり高い、そして噂でしか聞いた事の無かった、技術レベル『M』の文字。
「執事って確か冒険者系じゃない一般系技術だが、マスターしてるのか」
1から7で表示される技術レベルの更に上、上級技術が存在しない程の技術レベル、Masterの頭文字から取られた最高峰のレベルである。
「趣味と実益を兼ねている内になりましてな」
にこやかに微笑みを浮かべる。
ついでの控えにある暗殺術は、対応に対しても同じレベルが存在するから問題はない。
しかし、そら恐ろしいじいさんだ。
「さあ、ミシェルのは良いでしょう、ワタクシのも見なさい」
命令口調なニケリアのギルドカードを見る。
手の内を明かすのが危ないとは思わんのかね。
名前:ニケリア 種族:人間 職業:魔術師/貴族
ギルドランク:F
能力
筋力:9[0]/F 耐久:9[1]/F 敏捷:6[0]/F
魔力:64[12]/C+ 精神:48[10]/D+ 信仰:42[0]/D
器用:9[3]/F 感覚:15[12]/F+ 幸運:4[0]/F−
技術
【光魔術:2】【水魔術:3】【杖:2】【機先商才】【上級礼儀作法:5】【無魔術:1】
控え技術
ギルドランクが低いのはまあ良い。
能力値の半分以上が、一般人と大差が無いのはどう言う事だろうか。
技術も先天技術と礼儀作法があるが、それ以外は下級すら付かないレベルの技術。
――技術のランクはまず何も付かない所から始まる。
例えば、刀剣類の技術ならば『剣』と言う名前の技術を得る、次に細分化された『長剣』や『短剣』等となる。
更にレベルを上げる事で下級、中級、上級と上がっていくのだが。
能力値にしても一般成人男性が10程度の能力値である。
駆け出しの冒険者でも15程、ミシェルの能力値でベテランのバランス型冒険者と言った所か。
上限100まで――今回のアップデートで変わった可能性もあるが――で表されるこの数値は、神の加護を込みで扱える能力。
まぁ、筋力が60あったとしても常人の6倍の力では無く、ある程度から加速度的に上昇していくのだが。
「後衛だからまだ問題無いが……精神が高いのに魔術があの性能……器用が必要かも知れんな」
まずは表層に行きつつニケリアの魔術の扱いを伸ばすべきだと思案する。
ただ一人で悩んだ所で、どうしようもないと、俺は仲間達にこれからの指針を提案する事にした。




