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戦国史に想う  連載エッセイ  作者: 酒井 知徳
織田信長の人物像・性格・人柄についての見解
20/22

第六天魔王信長・論争に終止符を! 2

 

 私の注目ポイントを、まとめます。

 

「(信長が)自ら手紙に第六天魔王と記した」(信長ウィキペディア)

「信長は返書に「第六天魔王」と署名した」(信長ウィキペディア注釈3)

「信長はこれに対してドイロク・テンノマオウ・ノブナガ(第六天魔王信長)、と応酬せり」(信玄ウィキペディア)

 これらの事がフロイスの書簡に書かれている。

 と、ウィキペディアで紹介されているという事です。


 私は、冒頭にてウィキペディアの改正、一般常識の改正を試みると書きました。

 それは、フロイスの一節の解釈に、大きな盲点がある事に気が付いたためです。

 その盲点とは、何か?

 それは、何処にも、書かれて無いのです。

 

 何が書かれて無いのかと申しますと、

「(信長が)自ら手紙に第六天魔王と記した」(信長ウィキペディア)

「信長は返書に「第六天魔王」と署名した」(信長ウィキペディア注釈3)

「信長はこれに対してドイロク・テンノマオウ・ノブナガ(第六天魔王信長)、と応酬せり」(信玄ウィキペディア)

 以上の事が書かれていないのです。

 ★信長が第六天魔王と自称したとウィキペディアでは紹介されていますが、原文には何処にも一言も書かれていないと言うのが私の見解です。

 

 要点だけを簡略しますと、

「自ら手紙に記した」(信長ウィキペディア)

「返書に署名した」(信長ウィキペディア注釈3)

「と応酬せり」(信玄ウィキペディア)


 これらの事が、フロイスの書簡に書かれていると、ウィキペディアでは紹介されていますが、一言も書かれていません。

「え?………一言も書いてない?マジか?!」

 と、思われた方の為に、原文を今一度、記載しますので確認をしてみてください。



「私の見解。何処にも書かれていないについて」 

「原文」

 即ち信長に一書を贈りし時其名を揚げんとの慢心より封筒の上に次の如く認めたり。

 テンダイノザス・シャモン・シンゲン其、意(其の意味)は、天台宗の教の最高の家及び教師信玄といふことなり。

 信長はこれタイしてドイロクテンノ・マウォ・ノブナガ、其意(其の意味)は悪魔の王にして諸宗の敵なる信長といふことにしてダイバが釈迦に對し其宗旨その・ソウ・むね(その、本家の教えの、そのものの主とする、大事な点)の弘布を妨げしが如く、信長は今日まで日本の諸々の偶像の尊敬及び崇拝を妨害せるが故なり。 

 

 いかがでしょうか、何処にも書かれていません。

 しかし、少し分かりづらいかなと思いますので、内容を整理して、書かれていないという事を証明したいと思います。

 

 「内容の整理」

 信玄は、信長に手紙を書いた時、次のように名乗りました。

 天台座主沙門信玄。(その意味)

 信長は、これに対して

 第六天魔王信長。(その意味)

 

 書かれている内容はこれだけです。


「自ら手紙に記した」(信長ウィキペディア)

「返書に署名した」(信長ウィキペディア注釈3)

「と応酬せり」(信玄ウィキペディア)

 と、何処にも書いてありません。

 

 ★私がここで言いたいのは、ウィキペディアでは、フロイスの書簡に書かれているとされている以上の記載は、実際は書かれておらず、解釈による憶測でしかないという事です

 ★書かれていると、世間では常識的に認知されていることが、書かれていないという衝撃的な事実なのです。



「解釈による憶測である証明」

 ウィキペディアでは、「信長は、これに対して」を、「信長は、信玄の書状に対して」と、解釈している物です。

 しかし、書状に対してだから書状で返信だろ、と憶測しているにすぎません。

 

「一節の内容」

 信玄は、信長に手紙を書いた時、次のように名乗りました。

 天台座主沙門信玄。(その意味)

 信長は、これに対して(★信玄の書状に対して)

 第六天魔王信長。(その意味)

 

「信長は、これに対して」を「信玄の書状に対して」と読み解くのは、解釈です。

 しかし、「自ら手紙に記した」「返書に署名した」「と応酬せり」と書くのは、解釈では無く憶測なのです。

 要するに、「信長は、第六天魔王と自ら返書に署名して応酬せり」というのは完全な憶測なのです。

この様な、憶測であれば、他の事も言えます。

 憶測のバリエーションを紹介します。


 信長は、信玄の書状に対して………

「第六天魔王信長と、自ら返書に署名して応酬した」

「第六天魔王信長と、側近に言い返書に署名させ応酬した」

「第六天魔王信長と、側近の日記に書かせた」

「第六天魔王信長と、側近に愚痴った」

「第六天魔王信長と、信長は高らかに笑った」

「第六天魔王信長と、自らつぶやきながら植木に水をくれた」

「第六天魔王信長と、自ら叫んで走り出した」

 

 原文には、「信玄の書状に対して」、第六天魔王信長と、どうしたのか一言も書かれていないのです。

 ウィキペディアの記事は、「これに対し」を信玄の「書状に対し」と解釈しています。その上で、第六天魔王と、「自ら手紙に記した」「返書に署名した」「と応酬せり」と、書かれていますが、これは、数ある憶測の中の一つの憶測であるという事です。

 

 そして、現状はウィキペディアにて、「自ら手紙に記した」「返書に署名した」「と応酬せり」とフロイスの書簡に書いてある、と紹介されています。

 しかし、解釈の上の憶測である以上、書いてあると書くのは適切ではないと考えます。(書いてあると書くのは間違いなのです。穴が開くほど見ても何処にも書いてないのですから。)

 


「余談です」

  ウィキペディアの記事は憶測であると見解を書かせて頂きました。

 憶測をウィキペディアに事実として記載して良いのか?ここでは考えるのをよします。

 仮に、ウィキペディアに、憶測ではあるが、信長は、第六天魔王と「自ら手紙に記した」「返書に署名した」「と応酬せり」と考えられる、という憶測の記載をするとします。

 しかし、私は、この憶測が正しいのかという事についても疑問を感じます

 

 甲陽軍鑑の記述に、信長は、第六天魔王を自称したと憶測するには、不自然だと考える事が出来る記載がありますので紹介します。

 それは、信玄が将軍に宛てた、信長・家康の断罪への反論として、信長が将軍に宛てた書状にあります。

「とくに比叡山、伝教大師の、桓武かんむ天皇国家護持の霊場において、衆徒が近年つまらぬ行動をおこし潔戒ケツカイ(禁制)をやぶり、牛馬の糞尿で伽藍仏前をけがし、魚鳥を食べている。だから天道からの神罰が下って、山上山下、ことごとく燃え尽きたのだ。これは、信長が断行したのではない。自業自得の結果なのだ」

 信長は、ここで、比叡山は国家護持の霊場であると書いています。比叡山は神聖な場所であると書いているのです。

 比叡山が燃えたのは、衆徒の行いが穢れていたからであると書いています。

 そして、信長が断行したのではなく、神罰が下ったのだ。と書いています。

 

 私は、ここにウィキペディアで憶測されているような、「第六天魔王信長と、自ら返書に署名して応酬せり」という信長像は、浮かびません。

 むしろ信長は、神仏の立場に立って神聖な場所を穢した、神罰が下ったと書いています。

 ウィキペディアで憶測される、信長像が本当だと考えたなら、「比叡山は、神仏に代わりこの信長が、神罰を下したのだ」と傲慢な書き方をしていてもおかしくなさそうですが、「信長が断行したのではない」と、書かれています。

 重要なことは、正当性を主張し、言い訳をしている点です。決して開き直っていないのです。

 ここから、憶測して信長像を考えると、ウィキペディアで憶測されている、第六天魔王と名乗り、信玄の手紙に、応酬(やり返している)信長像ではありません。

 

 

 ウィキペディアの憶測は、信長なら、自ら名乗ってやり返すだろうという安易な信長像が元になっている憶測なのです。

 もしこれが、家康だったらどうでしょう?

 第六天魔王家康と、自ら返書に署名してやり返したと、憶測されるでしょうか?

 信長の名前を他の人物に置き換えて想像してみてください。また別の憶測が生まれたかもしれません。

 信長だから、第六天魔王と自ら返書に署名してやり返したという憶測に疑問を感じない所も、盲点であると考えます。

 

 余談として、ウィキペディアに憶測として記載するとしても現在の憶測では不適切であると、私の考えを書かせて頂きました。

 

 

 次話について。

 ここまで、ウィキペディアの記載は、解釈の上の憶測であるという見解を書かせていただきました。

 そして、ここからが、本題です。

 それでは、いったいフロイスの一節には何が書かれているのでしょうか?

 次にて、私の見解を書かせて頂きます。





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