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戦国史に想う  連載エッセイ  作者: 酒井 知徳
織田信長の人物像・性格・人柄についての見解
12/22

信行謀殺について

 信行謀殺のついて

 

 

 信長が、弟を騙し討ちにした件についてです。

 一般的に、この事件は、「逆らう者には容赦なし」という信長の苛烈な人格。残虐性を代表する事件として紹介されることが多いと思います。

 しかし私は、魔王信長というイメージからこの事件を捕らえた、信長像であると考えます。


 やはり、ここでも魔王というイメージで、この事件を捕らえると、苛烈な人格、残虐な信長という結論に至ると思うのです。

 本来は、事件から、人物の人間性を考えるべきですが、その逆転が起こっていると思うのです。

 魔王信長という人間像は、私的には過去の解釈が生んだ空気的事実であると考えているのですが、そのイメージから歴史を見ているのではないかという事です

 これでは、本来の歴史の姿が見えないと考えます。



「この事件だけを取り上げて、信長の人物像を考えてみたいと思います。」


 簡単に全容の説明をさせて頂きます。

 弟の信行は、家老の林、柴田、に担がれ信長に敵対します。

 そして、稲生の戦いで敗れ、一度は許されます。

 その一年後、再び敵対しようとすることが、柴田の密告で、信長に知れます。

 信長は、病を装い見舞いに来た信行を騙し討ちにするのです。

 

 

「一般に言われる信長の人間像について」


 病だと弟を騙して、見舞いに来た、その善意に付け込んで殺した。

 信長は、腹黒い奴だ。

 血を分けた兄弟といえども、裏切りは許さない非情な奴。

 騙し討ちとは卑怯この上ない。

 卑怯な手段もいとわない、利益主義。


 そして、一般的に魔王信長というイメージが存在するので、そのイメージと照らし合わせると、やはり信長は、残忍で、非道、怖い人、である!

 明智光秀は、信長に付いていけなくて謀反に及んだが、光秀が謀反しなくても、他の者に謀反されたであろう、信長の出来上がりです。

 一件落着。矛盾はないな。

 信長ってどんな人?と、聞かれたら、

「弟を平気で騙して殺す、残忍で非道で怖い人だよ」

「厳しくて怖い人だから、戦国乱世で日本統一まで後一歩までいけたのかもしれないな」

 これが、現在の信長像であると思うのです。


 

「この事件について、あえて良い解釈をしてみたいと思います。」

 

 一度は、許されたのに、更に敵対しようとした、信行の方が悪い。

 だまし討ちとはいえ、事が大きくなって戦になると、沢山死人がでる。信行一人を討って事を収めたのは賢明である。

 

 

 注目するべき点は、

 稲生の戦いで、一度敵対した信行を許している所です。

 信長に許すメリットは、有りません。

 信行を殺して、軍勢を吸収した方が得です。

 当主に逆らったのだから、大義も立ちます。

 それを、信行、首謀者の林、共々許しています。

 これについては、信行と林が、林の弟、美作守みまさかのかみのせいにして、言い訳した可能性は、有りますが、それでも許しています。

 信長は、弟や、家老の林を殺したく無かったと思うのです。

 殺す気が有ったのであれば、絶好のチャンスなのですから。


 私は信長の人物像を、家臣を物の様に使う人間性では無く、仲間想いの信長というイメージです。

 弟を殺したくない。

 殺したくないが、戦いになれば、仲間が死にます。

 卑怯な行いとして、自分が非難されても、仲間が無駄に死なずに済むなら致し方ない。

 と、考える信長像も在り得ると考えます。

 むしろ、

「御屋形は、甘すぎる。あれだけ公然と敵対したのに許すとは。だから、言わんこっちゃない。今度は許せませんぞ」

 と、家臣に言われていても不思議では無いと思うのです。


 要約しますと、

 自分に敵対したにもかかわらず、許す優しさ。

 自分が悪く言われたとしても仲間の命を思いやる大将。

 といった感じです。



「まとめ」

 悪い信長像。良い信長像。これは、解釈の違いです。

 現在は、魔王信長というイメージに引っ張られて、悪い解釈が主流ですが、この事件だけを取り上げたなら、良い信長像も十分あり得るのではないかと考えます。


 私の考える信長像は、騙し討ちにする、残忍な信長では無く、戦いを避けるために仕方なく殺したと言う解釈です。

 やはり、一度許している事を考えますと、信長の人格に優しさを感じます。

 残忍な信長なら、この時点で殺していても不思議ではないのですから。



「余談」

 余談として、勝手な憶測を書かせて頂きます。

 私としては、騙して殺すと言うのも、異質に感じます。

 それは、信長の人格は、正義感の強い人と考えているからです。

 私の推測ですが、信長は、とても怒っていたのでは?と思うからです。

 魔王なんだから、弟殺しなど当たり前だ!

 ではなく、弟を騙し討ちにするほど怒っていたと思うのです。

 それは、自分に逆らったから怒っていたのではなく、稲生の戦いでの仲間の死、信時の死、もっと言うと、信光の死によってではないかと思うのです。


 信時は、信長の腹違いの弟です。

 信時は、信長と二人で出かける間柄です。

 信長は、信時を守山の城主にします。

 しかし信行謀反に呼応したと思われる家老の謀反にあい、腹を切らされています。

 信行謀反の一連のなかで、寄ってたかって殺された弟です。

 信長には、弟信時の無念の想いが有ったのではないかと思うのです。



 叔父の信光の死については、諸説あります。

 信光を切ったとされる、坂井孫八郎の動機については、

 衝動的であった。

 林美作守みまさかのかみの刺客であった。

 どちらも、50%の可能性と考えます。

 信光という人物は、信長を織田家の当主として至らしめていた人物であると考えます。

 信長の最大の恩人です。

 もし、林の刺客により殺されていたと信長が怪しむ状況があったので有れば、信長が弟信行を騙し討ちにするほど怒っていても不思議ではないと考えます。



 信光については、確証は有りませんが、信時への想い、死んだ仲間への想いは、有ったのではないかと考えています。

 その想いが有ればこそ、「またしても謀反に及ぶとは許せん!」

 これが、私の考えるこの事件の姿であり、信長の人物像です。



 信行謀殺事件については、信長の非道、残虐性、苛烈な性格、を補足する解釈がほとんどだなと思いまして、今回書かせて頂きました。

 説明が解りずらい点申し訳ありませんでした。

 お付き合い頂きまして、ありがとうございました。




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