朝起きて、ワーグナー
文才無いけど小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:ワーグナー
朝起きて、古いレコードでワーグナーの曲をかける。
今日は雨か。
雨音も交響楽団の一員として、一つのワーグナーを奏でる。
うん、いい曲だ。
強い風の日は風の音が、夏晴れの日は虫の音が、曇りの日にはその湿度が、曲と一体となりにくる。
同じ様に聴こえるが、同じ曲はひとつもない。
ワーグナーはもういない。だがその曲だけは今も生き続ける。
日々、新たな曲を生み出しながら。
部屋から出てキッチンに。遠くに聞こえて今にもかすれそうな曲もやはりワーグナー。
響きが生み出すイメージは違えども、この染み入る想いに違いはない。
キッチンでコーヒーを入れながらふと思う。
そういえば、今日は彼女の来る日だったか。
彼女が来た日は、それだけでまた曲の響きが違って聴こえる。
同じワーグナーとは思えないくらいに。
それもまた一興。
彼女が来るまでの間、しばし今まで通りのワーグナーに酔いしれよう。
インターフォンの音がする。
ああ、うたた寝していたのか。
レコードの針は外縁部を空しく空回りしたまま、なにも響かせていない。
俺はワーグナーを聞く為に、また針をレコード盤の中ほどに置いた。
再び鳴らされるインターフォンに、僕はああわかったわかったと誰ともなく返事をしながらドアに向かう。
ドアの前には彼女が立っていた。
いらっしゃいと迎えるが早いか、彼女がその綺麗な眉を少しゆがめて「私が悪かったわ。だからもうやめましょう」と言った。
なにがだい? と僕が聞くと、彼女は「……またワーグナーとか言ってるの?」と言った。
当たり前じゃないか、君が薦めてくれたんだろ。そう言いながら部屋に招く。
ちょうど楽章が変わったところだ。
「ちょうどいいかもね……」と彼女は呟くと、レコードの針を持ち上げた。
どうしたんだい? と僕が聞くと、彼女は「今はこれの気分じゃないのよ」と、針をゆっくりずらしながら答えた。
なんだって。という僕の驚きも意に介さずに、彼女は針をのけると、レコード盤をレコードから取り外した。
「いつもいつも同じのばかりで、たまには違うのを聞いたりしなさいよ!」
そんないつも同じだなんて! むしろいつも違う曲を堪能しているというのに。
「じゃあ、朝起きた時は?」
ワーグナーかけたよ。
「ぼーっとしてからは?」
ワーグナーかかってたよ。
「あくびして?」
ワーグナー聞いてたよ。
「ゴンタのお気楽な一日か!」
いや、ワーグナーだよ?
「じゃあ骨っ子か!」
ワーグナーだって。
ぶっちゃけ、ワーグナーである必然性があるのかというと……ない。
でも、タイトルが浮かんでしまった。だから書いちゃいました。
むしろ、骨っ子の勢いが弱かったのが自分の中で不服でした。
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198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/31(水) 12:28:28.82 ID:fFc2qoEZ0
たくさんお題ください
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/31(水) 16:44:07.72 ID:NhKQhjbao
>>198
ワーグナー
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/31(水) 19:42:28.31 ID:fFc2qoEZ0
>>199-200
ありがたく頂戴いたします




