妹の言いわけ
「ずっと、
「俺の妹にならない?」
そう言ったのはあたしが10歳のとき。母さんが死んで独りきりになって。差し伸べられた手の持ち主は、そのとき21歳。親子になるには微妙な年。
11歳差の恋なんて、今どきありふれてるのかな?
「夕食何?」
「何だと思う?お兄ちゃん、何が食べたい?」
「そうだな……雪が作ったものなら何でもいいよ」
なんて。
職場では鬼って呼ばれてるのに、あたしにだけは優しくって。
学校ではドSって罵られてるのに、お兄ちゃんにだけは懐いてて。
これって、あたしのこと大好きだから?あたしがブラコンだから?普通の兄弟ってこんなもの?それとも――あたしたちってどうせ、本当の兄弟には成り切れない?
あたしのこと、妹としてすら見て無いのかな。
「愛してる」
とか。
絶対に言えるわけないよ。あの手をとったときから、あたしは妹でお兄ちゃんは兄。そういう約束。この契約を破るわけにはいかないの。この契約はあたしを縛ると同時に、守ってもくれるんだから。
お兄ちゃんがホテルに消えるところを、何度か見たことがある。その度ごとに違う女の人で。でもみんな美人で。あたしもお願いしたら抱いてくれるだろうか、なんて馬鹿なこと考えたときもある。
それでもお兄ちゃんは、ちゃんとあたしの夕食を食べて寝る。
たくさんの女の人と付き合って、別れて、それをあたしは側で見ていくんだろう。お兄ちゃんが結婚しても。
あたしのこの体が穢れることはあるのかな?
せめてこれだけは言わせてください。
「お兄ちゃん、ずっと一緒にいてね」
契約内容を更新しますか?
「ああ」
Yes.
読んでくださりありがとうございます。
もう1話、明日の21時に投稿されます。